先週からの続きです。

 

 

 相手方代理人の弁護士から,電話がありました。

 

「先生の書面を拝見しました。ついては,いったん話合いをしたいのですが。」

「では,大阪弁護士会の13階に,来週火曜のこの時間でいかがでしょうか?」

 

 

こちらの態度は,はっきりしている。

つまり,一円も払う気はないし,事業をやめるつもりはない。

 

 

それなのに交渉の余地があると向こうは考えているのか?

 

 

 

私は早速河豚田氏と打ち合わせをして,相手方の考える手段を検討しました。

 

 

 大阪弁護士会は中之島に面した豪華な自社ビルをもっているのですが(念のため,申し上げますが,自慢しているわけではありません),そこの13階にロビーがあります。

 

相手方の事務所に行くと,何となく相手のペースに合わせてしまう気がするので,ロビーで打合せはよくあることです。

 

 

 

さて,約束の日。相手方の代理人は時間通りに来ました。

 

 早速,私の方から,切り出します。

 

 「先生,ご足労かけて申し訳ございませんが,当方は事業をやめるつもりも,損害賠償に

応じるつもりもありません。仮に,事業を営むについて相応の代償措置があれば,いいので

すが,その提案がなければ,お話をしても無駄と思うのですが。」

 「そうなるでしょうね。・・実は,その代償措置の話というか,当方からの提案なのですが,河豚田氏に山海商事の専属の下請をしていただくというのはどうでしょうか?」

 

 

(なるほど,そう来ましたか。)

 

 

下請をさせると同時に,秘密保持や競業避止の義務をおわせるということですね。

 

独立したての人間にとっては,仕事が来るかどうか不安なので,この話に乗ってくるのではないかという胸算用。

 

 

 

相手方弁護士は,そうなった場合の河豚田氏の待遇や請負代金の決定方法について,説明をなし,下請契約の案を出してきました。

 

 

金額面では,河豚田氏の想定した範囲内でしたが,競業避止義務がかなり厳しい。

 

 

 

私は,「これでは河豚田氏が受けるとは思いません」と,いったん保留し,後日回答することにしました。

 

 

すぐさま相手方の提案を河豚田氏に伝えたところ,当然ですが,「受け入れられない」との返事。

 

 

早速書面にて,「提案をうけることはできない。単なる下請契約にしていただけないか。」と回答するにいたりました。

 

 

 

その後数回のやり取りがありましたが,合意にはいたらず,最終的に「訴訟提起する」話まで出てしまいました。

 

 しかし,河豚田氏から訴状が届いたという連絡もありません。

 

 

 

何の進展もないまま数か月が経ち,再び私の方から相手方弁護士に確認しました。

 

「河豚田氏の件どうするのですか?」

「いやあ,難しいですな。」

「訴訟提起はしないと?」

「結局当面は,そうなりますな。仮に,河豚田氏が新たに当社に迷惑をかけてしまった場合は,別ですが。」

「では,ここでお互い債権債務がない旨の和解書を作成しましょうよ。」

 

 

 

つまり,これにて和解が成立してしまったのです。

 

 

河豚田氏は,1円も山海商事に支払うことはありませんでした。

 

 

 

 

むろん,今もホームページ制作業を続けています。

 

 

 

 

 

 ※この話は,当事者の了解を得て,大幅に改編しています。