人気blogランキングは? TV企画「鄧小平の全てを撮った写真家」と新井信介氏に関して、2008年11月(つまり10年一昔前)このblogに、次のように書いていた。中国の片鱗が覗えておもしろい…。

 初めて中国の地を踏んだのは、1992年5月…鄧小平の「南巡講話(改革・開放へ邁進すべき)」(92年1~2月)後、「社会主義市場経済」路線に舵をきって数ヶ月しか経っていなかった。
 JALで北京国際空港から入った私は、VISAはとれていたものの、更新の迫っていたパスポートにあふれそうになっていた「中華民国(台湾)」の入境スタンプになにか一悶着ありそうで、審査に時間のかかることを予想していた。
 が、案に相違して、意外とスンナリと通され、拍子抜けした格好で、しばらくベンチにすわりこんで、預けたサムソナイトが出てくるのを待った。
 当時、「鄧小平の素顔」といったテーマの番組企画を某TV局で進めていた私は、中国通として様々なルートを持つことで知られていた新井信介氏(当時、中国駐在の商社マンから転身して92年夏の参議院選挙出馬をめざし様々な活動を展開していた。現在、ユニークな文明評論家として知られる)から、「公私にわたって鄧小平を追い続けている写真家がいる」という願ってもない情報を得て、なんとか“わたり”をつけようと、先乗りしてくれていた彼を、心強いコーディネーターとして取材を始めたのだった。
王府井 初めて訪れる北京は、これから変わっていこうとする未来に向けて、人々が本腰を入れた眼差しを向け始めているある種の兆しがあちこちに感じられたが、目で見るかぎりでは、まだまだ自転車の群れが行き来し、王府井(ワンフーチン)の歩道には、個人不動産屋がにわか露店を並べ、一人っ子政策(79年に始められた人口抑制政策で、訪れた92年には、ついに1.84にまで低下していた)の宣伝ビラがベタベタ貼られ、“百貨店”で売られている商品の種類も量も絶対的に少なく、最も大きな書店では、ほとんどの本がGケースに並べられ、求めた件の企画関連の本は、日本円でもかなり値の張るものだった。
王府井 なにしろ、上海の浦東(プートン)に林立する超高層ビルも、まだまだ槌音高くまばらに工事が始まったばかりという具合…。
 当時、主だった経済評論家をはじめとして多くが、「これからは、中国」と囃したて始めてはいたが、今日の姿を描ききった者は、そんなに多くはなかった…。
 この取材で、身をもって学んだのは、「どこまでも人治国家」のお国柄であること…北京オリンピック開催に準備万端整いつつある中国の変貌は、ご存知のとおり、…しかも、まだまだ計り知れない。
 ところで、冒頭のTV番組だけれど、当時書いた企画書はこんな風に始まっている。


  国家主席の息子が見た中国裏面史『写真家・楊紹明 焼き付けられた証言』

 中国ロイヤルファミリーの一員であることを一つの武器として、中国要人の公私にわたる生活を追い続けて来た写真家がいる。
 楊紹明(52才・中国当代撮影学会主席、中国撮影家協会副主席、世界華人写真家協会会長)…1941年、楊尚昆前国家主席の次男として陳西省延安に生まれた彼は、今日、現代中国で最も有名な写真家の一人に数え上げられている。
 中でも、その立場と父・尚昆の強力なバックアップを最大限に活用して成し得た、中国最高実力者鄧小平の内外の幅広い交友関係とその人間像をテーマに追った一連のドキュメントは、知られざる指導者の素顔をとらえて注目に値するものである。
 例えば、彼は、リゾート地・秦皇島北戴河の別荘でファミリーと過ごす鄧小平に同行、数多くのスナップをものにすると同時に、普段は聞けない本音の話も引き出したと言う。
 彼がロイヤルファミリーとして生き、そして、とらえて来た一枚一枚の写真は、中国の激動する歴史を、言わば、内側から焼き付けた証言そのものである。それは、まさに彼のポジションでしか可能とならなかったであろうものに違いない。
 今日、世界にその活動の場を広げつつある彼は、マンハッタンの雑踏にたたずむホームレスの姿にカメラを向ける真摯な目を持つ国際派の写真家であり、日中の写真家交流にも意欲を燃やし、将来、日本で個展を開くことが夢と言う親日派でもある。
 この番組企画では、楊紹明の数々の写真(今日まで公にしなかったものも含む)と証言、及び、貴重な映像資料により、1960年代から今日までの鄧小平の歩んで来た道を縦軸に、中国の激動の裏面史を描き上げるとともに、楊紹明の現在の写真家としての活動を通して、中国の今をドキュメントする。

 閑話休題…1997年2月、鄧小平は逝き、この企画も再びクローズアップされた。

 その後の楊紹明だが、検索をかけてみると、2003年9月宋慶齢基金会の副主席として、「中国中学生訪日交流団」につきそい来日していることが知れる。彼も、もうすぐ70に近い年齢を迎える…。


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