人気blogランキングは?

 このところ、めっきり“おしゃれ”をしなくなった。
 めいっぱい“着ながし”たダブルのスーツにパンツの裾は頑なにダブル仕立て、ネック回りはネクタイよりも絹のマフラーをラフに垂らすのが好きで、ポケットチーフはさりげなくスリーピーク、原稿の詰まったお気に入りのバッグを小粋な角度で小脇に抱え、ちょっとヒールの高いブーツを高鳴らせ、都内に点在していたテレビ局をかけもちし、勝手に「洒落男」と自認していた、この私がである。
 まッ、キザと言えばキザを絵に描いていたわけで、見ようによっては避けたいスジの人にも見えた。
 確かに、あのころは、カミさんのいた業界のおかげで、好きなブランドものが手に入る恵まれた境遇でもあったし、仕事柄、はったりをきかす必要もあった。
寿 利 屋 JULIYA-(C) JULIYA  しかしである、ある私的事件をきっかけに、トレードマークだったサングラスは、老眼化する視界を危うくするだけで、ウォッチもブレスレットも、ひたすら邪魔くさい。
 おまけに、ちょいとした手術で、我が腹かっさばき、腹部サポーター、つまり「寅さん腹巻き」を、簡単に手離せなくなっている。
 かくして、「男ってのは、おしゃれなんかより体が勝負」などと粋がってみても、その体の“筋骨細々”としているったらありゃしない。
 もっぱらジーンズにTシャツ、デッキシューズが定番の、まったく洒落にもならない日常に、「いや見た目より、心地よさを求めて唯我独尊、これはまぎれもなく、おしゃれの行き着く悟りの境地」などと思いめぐらせても、「それはきっと、衣食足りて、色気を失ったせい」と、みもふたもない声が、どこからか聞こえてくる。
 繁殖期をすぎた男ってのは、リビドーなくしておしゃれをしないってことか。
 私に見向きもしないカミさんは至極当然あきらめるとして、ここはホラ、とっぷりと鏡を前にナルシストに浸るか、色っぽい話でも自前で演出してみる道しかないのだろうか。
Copyright(C) JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.
【無断転載使用不可】