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 眠れないまま朝を迎えた…瞳に覆い被さる気だるく重い目蓋の先に、時折、浮かび上がる揺らぎのようなものは、彼岸を流れる朝霧なのか…。
 数日前、mailが届いた。
「皆さん、突然のことですが、今朝Z君がすい臓がんの治療のかいもなく亡くなられました。明日の夜、通夜、明後日、告別式とのことです…」
 SからのCcあつかいのものだったけれど、かれこれ35年以上も会っていなければ、近況も、病気のいきさつも知らない旧友が、「亡くなられました…通夜は、告別式は…」というのに、一体、私はどう身を動かせばよいのだろう。
 Zは、同じ文学部で、同じサークル「歩行会(あるこうかい)」の仲間だった。
 サークル創立45周年を記念した「会員名簿」が発行され、彼の名前を確かめたばかりだった。
 一昨年のことだったか、卒業以来、連絡をとろうなどとは努々思ってもみなかった「サークル同窓会」の知らせが舞い込んできた。
 およそ同窓会などと名のつくものに出たためしのない私は、同郷の仲間も上京するというのに半ば加勢されて、その時だけは、抜け落ちた時間の流れをひとっ飛びよろしく顔を出してみたのだ。
 参加したほとんどの仲間は、卒業後も交流が途絶えなかったようで、彼らの交わす話や「会誌」などを読んでみるとそれが分かる。
 しかし、私には、学生時代の数年間しか彼らと共有していた時間がない…しかも、私のその後の縷々と長い半生を知らないはずで(知りたいヤツもいないだろうが…)、私の変わりようは目を覆うばかりのもの(ただし、私自身は最も変わらず若々しいと信じて疑わなかったけれど)だったに違いない。…まッ、若いとき別れた女に、数十年後、バッタリと出くわしてとまどうようなものか。         

 それはともかく、サークル仲間の中で、       Oは賢く清々しく、Zは美男子でおどけたヤツだった
尾瀬 この世を去っていたのは、Oただ一人だけだった。これは、生き残っている者の「奇蹟」に近いものだと、Oにはいささか失礼なことだけれど互いに喜びあっていた矢先の…Z…どういうわけか、彼ら二人と私とは、ちょっと因縁めいたことがある。
 大学二年になったばかりのころだったか、私たち三人は、まだ雪の残る燧ガ岳から尾瀬を抜け至仏山に登る、なんともステキな山行をしたことがあったのだ。 
 至仏山頂にて、Zはこのままの姿で生きている…   尾瀬   

 書きたいことはとめどない。ZにしてもOにしても、私とは、そんな三人だけの時間があり、長い間の抜け落ちた時間がある分、私の中では、あの時の姿のままで今なお生き続けている。…もっとも、私がこうして生きている限りだけれど…。
 それにしても、Zという男…なぜか知らぬが、フッと私の前によく現れてきていた。
 光が丘から豊島園を車で通り抜けるとき、彼が住んでいた一軒家の縁側に、パンツ一丁で座り込み、なんとものどかな表情で鼻毛を抜いている姿を見せて、私をクスリと笑わせてくれたり…ある時は、千駄ヶ谷のプロダクションで仕事をこなして出てきた並木道で、知らんぷりですれ違い、しばらく歩いてアッと気づいて同じタイミングでふりかえり、互いにニコリと笑いあってみたりという風に…。
 Zよ、気が向いたら、また会おう!
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