やがて、先祖の“墓守”をする身にとって、この時間短縮はうれしい限りだが、短くなればなるほど、私の“生理的時間”も“心的時間”も、うまく東京から広島へと切り替わってくれない。
で今回は、東名、山陽と車を運転しながら、えっちら…おっちらと広島に戻ってきた。
まッ、長ければ長いで、芋づるのように舞い込んでくる様々な思いに悩まなければならないのだけれど…。
そんなときいつも思い出すのが、ベラスコに「百年の知己」のごとく信頼され、ジグソーパズルのような錯綜する事実と、飛び交う時間軸をユニークな視座で再構築してみせるノンフィクションライターの高橋五郎氏(『スパイ“ベラスコ”が見た広島原爆の正体』学習研究社刊・『ミカドの国を愛した超スパイベラスコ]徳間書店刊など)が、かつて私に言ったことだ。
「いままで、納得させてくれる“時間論”に出会ったことないんだよね…だから、“時間論”がものにできたらと思う…」
何年も顔を見なかったそんな高橋氏に、東京駅でばったり出くわしたことがある。
互いに流れてきた時間などない、そこにポッカリと存在する空間の中に飛び石をひょいとつたわって立ち止まったような具合に、二言三言、言葉を交わした。
その時も、「今、“水”をやっているんだ」と謎めいたセンテンスを私の耳に響かせて、宙に瞳を泳がすようにニヤリと笑って、彼は去っていった。
東京駅などと言えば、下世話で「いかにもありなん」の場所であるが、いつもこんな風に出会うのだ。
早稲田出版の白井勝己氏が、まだ早稲田鶴巻町で会社を立ち上げたばかりの頃だったろうか、私は、当時、シナリオライター集団“五人の会”(林秀彦・窪田篤人・高橋玄洋各氏ほか)を中心にした「1,000$パーティ」という「シナリオ・オークション」をプロデュースしていた事務局(立ち上げた社長はすでに身を引いて、とある製作会社に身売りしていたから、実際は私一人で運営していた)にいて、メディアに精通した白井氏からも様々な指南を受けていた。
そんな中で、在京TV各局に、自ら「わたりをつけた独占取材権」をもって「海外取材番組企画」を売り込んでいる「フリー・プロデューサー」として高橋氏を紹介されたのだ。
TV局や製作プロダクションなどに所属しない、一匹狼のプロデューサーの珍しかった時代である。
「1,000$ドルパーティ」は、「原作やシナリオを、できるだけ忠実に映像化したい」という思いを持った作家や脚本家が、プロデューサーを集めて「買いませんか?」と開くオークションであったが、一方で、“市場”を活性化するためにフリー・プロデューサーを育てるという意図があるものだった。
丁度、その頃、高橋氏は、本邦初公開の「アルタミラ洞窟(Cueva de Altamira)」の壁画を独占取材したスペシャル番組のプロデュースで注目されていた。
高橋氏と私の“飛び石”の一つに「大韓航空007便~乗客・乗員269名は生きていた!」という企画がある。ほぼゴーサインがでていたが、視聴率のとれる一連のオウム事件にこの企画は先送りになり、未だ実現されていない。
ところで件の“時間論”だけれど、私の中を浮遊している「考える私」には、それが内包する時間をしか認識し得ない。とすると、私は時間を自由にできるのだ。
Copyright(C)2000~2007 JULIYA MASAHIRO All Right Reserved.
【無断転載使用不可】