メンズの潜在需要をもっと刺激できる
「今春、若者たちの間にビビッドカラーが広がっている」と、いくつかのメディアで取り沙汰されてきた。しかし、そういった情報を、私は鵜呑みにしてはいない。
銀座、青山、六本木…そして新宿、渋谷、原宿や表参道界隈の「渋滞時イライラ緩和策」も兼ねて、車の中からのウォッチングではあるけれど、道行く人々(若者はもちろん、老若男女を問わず…)の装いに、しばしばチェックを入れる。
やはりと言おうか、おおよそがブラック&ホワイト、グレーでかためたり、それらにベージュがほとんどで、時折、赤や黄、グリーンが差し色として使われているのが目に付く程度…。
JAFCAによる「07年春夏メンズウェアカラー」のカラーグループには、「静謐なイメージのホワイト、ライトグレー、ベージュという明るいニュートラルカラー(色みが淡いか、色みがほとんど無い色の総称)」が謳われ、よりシックなグレー系が新鮮になるとして、「Silent Neutral…サイレント・ニュートラル」が打ち出されている。
よって、国内中が、「みんなで渡ればこわくない」よろしく、店頭の品揃えは忠実にそれをなぞり、売り場に行っても個性的な色のバリエーションがないから、買う側もそんな中からピックアップするはめになるわけなのだろうか…。
他に、「Le Grand Blue…ル・グラン・ブルー~大いなる青」とか、「Nostalgic Brights…ノスタルジック・ブライツ~郷愁のブライト」として「少し郷愁を感じさせるような色褪せ感」がとりあげられているが、もう、人々のおしゃれカラーを“マス”でくくるなんて時代じゃないような気がするが、果たしてどうだろう…。
メンズ市場に見られる「色の枯渇現象」は、あたかも、発信サイドや企業戦略が「モノ作り」の全てを支配しているからではないかとさえ思えてくる…?
「ボク」の心情を語る色
近頃、東京の名所で風物詩とも言える「東京タワー」が、なぜか小説や映画にしばしば登場してくるようになった。
私には、遠い「思い出」の一つになっていたようだったが、ファッションとしての“昭和レトロ”しか知らない今どきの世代をも呼び込んでいるという映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』を、封切り日に観に行った。
ちなみに、東京タワーの完成は1958年、昭和33年12月23日。…私が修学旅行でその展望台に上ったのは、東京オリンピック開催や東海道新幹線開通(昭和39年)の少しばかり後のことだった。
詳しい中身を縷々述べるのはさておき、この映画の語り手である主人公の「ボク」を演じきった、オダギリジョーの「着こなしと色」には印象深いものが多かった。
「ボク」は、80年代のいささかアウトサイダー的な美大生から、母親のガン発病をきっかけに一念発起し、90年代、イラストレーター兼コラムニストとして食えるようになっていく。
そんな主人公のファッションは、まるで昭和から平成への時代を象徴し、「ボク」の心情や、置かれた環境までも物語っているようだった。
仕事が認められ、生き方にも自信がつくにつれて、ピンクや紫、赤などの「色づかい」の服をまとわせる演出は秀逸だった。
とりわけ、東京駅へ「オカン」を迎えに走った「ボク」の装いは、淡いピンク色のスウェターに同系色のパンツ、細身のジャケットはグレイ…それが、新幹線のホワイト&ブルーに実に映えていた。一方の「オカン」は、新幹線の色のようなシックなカラーで、ホームのベンチで待っていた。
観る者が、涙と共に心地良く映画の行間に入っていけた。…同時代史の追体験とでも言うのだろうか。
洗脳されやすいのか?日本の男
かつて(70年代~80年代)のジーンズ一つを思い出してみても、選ぶのに事欠かないほど、ブルー以外に様々な色の「カラージーンズ」が市場に展開されていた。
Tシャツやサファリジャケットはもちろん、ミリタリールックの上衣までもオレンジやえんじ色と揃っていた。
当時は、多品種大量生産がまかり通っていたから、選択肢もおもしろいほどあった。
ところが知らず知らずのうちに、メンズ市場から色のバリエーションが少なくなっていった。
著名なインポートブランドのいくつかが、「無彩色」を根付かせたり、企業側が在庫リスクを恐れて「色の展開」を絞り込み出したことなどが、今日の色数の少ない市場展開をもたらしたのではと、私的には考えているが…。
また、近頃の「メンズ誌」の傾向は、中間層を抜きにして、正反対の「極み」があぶり出されている感がする。
例えば今どきのカラフルな「いでたち」といえば、「ストリート系ファッション」に見られる、定番色に「いちご」のようなレッドかレモン、それにアップルグリーンの組合せ…彼らは、古着に破れたジーンズ、左右ちぐはぐ、突飛な色合わせにノンセックス、並外れの機能性 etc.と、一歩間違えば、「橋下の住人」とスレスレのところで己を主張しているようにさえ思える。
それらの対極にあるのが、懲りもせずに異国ブランド満艦飾の男たちの「どうだまいったか」の苦み走った表情を、これでもかと見せつけてくれる提案だ。
某雑誌などは、日本語文がなければ、別世界のエスタブリッシュメントたちの出来事だと遙かな目をしてしまいそうだ…。
色に恵まれていた時代の洗礼を受けてきた団塊世代とそのジュニアの「おしゃれの感性」は、さらにハイセンスになり、かつ個性化してきている。
当然のことながら、「色の好み」も千差万別なはずが、売り場には、色の選択肢が少なすぎまいか?
TPOや時々の気分にマッチすれば、男も好きな色でおしゃれをしたいし、「色づかいの達人」にもなりたい。
いよいよトレンドカラーなどどこ吹く風の、「色づかい」を楽しむ「男たち」の市場への出番となるのか…?
〔PHOTO:DOMINANT LIMITED〕
《ファッショントークより》
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