チンギス・ハーンを描いた映画『蒼き狼』をごらんになっただろうか?
自らを彼の生まれ変わりと言う角川春樹製作のこの映画を、色で象徴するなら、もちろん「蒼」であろう。「蒼」は草の色で深い青色…モンゴルの空と大平原にふさわしい色だ。また、老いて白髪になりかけたさまを「蒼蒼」と言ったりするから、これも史上最大の帝國を築き上げたチンギス・ハーンをイメージさせる。
ちなみに「蒼」でも「青」の方は、「青春」のように使われるので、未だ熟さぬ初々しい色を喚起させるからおもしろい。
それにしても、モンゴル軍兵士5,000名がエキストラで参加したという戦闘シーンは、空の「蒼」と衣裳の「青」が「青い草原」の「緑」や「大地の色」に映えて、荒々しくも神々しい「空」を演出せしめていた。
「スペクタクルは自分しか撮れない」と豪語するだけあって、さすが角川春樹の独壇場である…。
と言うわけで、蒼・青・ブルー…にまつわるあれこれを、しばし…。
地球は青い!
「地球は青かった」という、ガガーリン少佐(61年、ボストーク1号で地球を1周)の言葉は、あまりにも有名だ。
人の目に映る青は、この地球を包む色であり、青に好感をいだくのは、人間のごく自然な情動に違いない。
青色から受けるイメージは、「宇宙、無限、幸福、希望、誠実、フレッシュ、静寂」などが一般的で、心理的なセラピー効果としては、血圧低下作用や、空想力を高めてくれるといわれている。
慣れ親しみすぎて忘れかけていた「青・ブルー」にまつわる「エピソードやいわれ」「物語や蘊蓄(うんちく)」の一例を取り上げただけでも、その多さに今更ながら驚いてしまう。
「幸福の青い鳥」を探したチルチルとミチルのファンタジー。
「ブルーカナリア」「青鞜」「青の時代」…
かの有名なジャンヌ・ランバンは、こよなくラビアンブルーを愛し、その独自の「青」は、企業の「CIカラー=メッセージカラー」として浸透している。
日産の「ブルーバード」も、何十年にわたる人気の定番車として乗り継いでいる人が多いとか。
好む色味を活かす
武蔵野美術大学造形学部の千々岩英彰教授が10年ほど前に、中国、アメリカ、ブラジル、イタリアなど20の国と地域で、美術デザイン系の大学生約5千5百人に、金、銀を含む47色を見せて「好み・記憶・イメージ・意味・配色」についてアンケートした興味深いデータがある。
ファッションのボーダレス化を反映してか、原色好きは万国共通という傾向があることがわかり、「もっとも好きな色」としてあげられたのは、トップが「青」で、以下「赤・黒・青緑・黄」の順だったという。
今どきの若者たちの「好きな色」については、専門家にまかせるとして、これらの結果は今もそう極端に変化してないだろうと思う。
ところで、同じ青や赤でも、地域ごとに人々が好む「色味」が違ったり、その土地土地に映える色があると言われているが、そういった傾向を戦略に活かしている企業がある。
例えば「ベネトン」がその代表例だ。
独自に「色のデータベース」を構築し、商品を売っていきたい国が、昔から育んできた色を研究し、ニット地に反映させながら物作りをしていると聞く。
「ベネトン」でいうところのイタリアの「青」は、トスカーナ地方フィレンチェあたりの青い空の色で、日本のマーケットにあわせると、さしずめ「藍色」なのだろうか?
同じ青空に対しても、我が国では「空色」と親しみやすく一つの呼び方をしてすましているが、欧州では、貴族の血筋をブルーブラッドと呼ぶように、「青」に抱くのは気高く崇高なイメージだとか。
彼らの神話の舞台である天界の「青」を、セレスティアルブルー(神々の住む天界の青)とかアザーブルー(澄みきった蒼穹の青空色)、ムーンライト(月光の淡い蒼色)などと、私たち以上に微妙に色分けして呼ぶことからもうなづける。
青の引き立て役
ところで、どんな色にも言えることだが、「青」は、それだけでも上品で美しい。が、そこに対比の色(暖色系…黄・橙・ピンク・赤・レンガ)の存在があると、一段と際立つ。
例えば風土で言うなら、フィレンツェの建造物のテラカッタ色(イタリア語で土を焼いて作った顔料の色)の屋根とか、沖縄の首里城(琉球王朝の文化遺産)の摩訶不思議な赤とのコンビで空の色の「神秘や神々しさ」は冴えわたる。
「藍染めの着物に赤い帯締め」、「ロイヤルコペンハーゲンのお皿に赤いイチゴを盛る」、「紺のブレザーやジャケットに、レモンイエローや淡いピンクのボタンダウンシャツ」…etc.
青味だけの同系色は、上品だが「明度や彩度」、「ウォーム感やクール感」を視野に入れないと、限りなく「ブルーな気分」になったり、「青二才」といったネガティブな表現もされかねない。
青の持つ「神秘性」に、何色を「差し色」もしくは「アクセント」や「トッピング」に使うかで、スタイリング展開に雲泥の差が出る…というのが、私の持論であるけれど…。
〔PHOTO:DOMINANT LIMITED〕
《ファッショントークより》
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