鞄のあれこれ
 「鞄(かばん)」ですぐさま脳裏をよぎったのが、昨年の今頃だったか、小池前環境大臣がやけに力を入れた例の「もったいないふろしき」キャンペーン…。霞ヶ関あたりで、風呂敷包みを抱えた紳士が増えてきた気がするのはその効果か。
 最近は、女子大生やOLが、結び方をいろいろ考案しながら「和のバッグ」として様々に楽しんでいるようだが、クローズアップされる前から風呂敷の“隠れファン”は沢山いる。
 知人の大学教授などは、何十年も前の学生時代から今も愛用者で、本や資料をすっぽりと包んだ大判の風呂敷を小脇に抱える姿が彼のトレードマークになっている。
 ところで「鞄」だが…けだし男のおしゃれを、それなしには語ることはできまい。


 

究極の「アクセントツール」が見えてくる

おしゃれなバッグや小物雑貨類


 超のつくレア物「かばん」


 学生だったころ、パンツやジャケットのポケットをふくらませることはヤボだと、かたくなに信じこんでいた。ヒッピー文化に曲がりなりに浴していたので、手縫いの後も生々しいオリジナルのショルダーバッグを持ち歩いていたのだ。
 当時、アメリカでは、管理職のステイタス・シンボルとして、ブリーフケースやアタッシェケースが、不可欠な小道具になっていた。私が愛用したそれは、ステータスの「ス」の字にもならなかったが、大切な必需品だった。
 ところが、テレビの端っこで食べるようになってから、「見た目」が仕事のポイントになることがあると気づくなどして、「かばん」も「使い勝手」だけでなく「人の目」をチェックしながらいろいろと試してみるようになった。
 中でも、クリスチャンディオールの学生鞄に似たバッグは、なぜか性にあって長く使いこんだ。手提げ部分がしっかりとできていて底敷きがない。入れるものが少ないと不細工になるが、数泊の取材ぐらいには、仕事道具とともに必需品をかなり詰め込めて重宝した。
 とりわけ、B4のテレ原(パソコンなんてのは当然なく、ざら紙に印刷されたテレビ用原稿用紙に2Bの鉛筆で書いていた)が二つ折りにすることなくすーっと入ったのがありがたく気に入っていた。
 当時すでにそれなりのブランド力を発揮していたが、新品然とした革の部分の日焼けを待ってから使ったヴィトンのブリーフケースをはじめ、バーバリ、ランバン、ダンヒル…と、「かばん」行脚はつづいた。
 ブランドが目立ちすぎるのもちょっと持ち心地が悪い。
 十年ほど前になるだろうか、某百貨店で「ヤマモトカンサイ」プロデュースのビジネスバッグ(布地と皮革のコンビ)に巡り会い、その収納力、機能性、軽い持ち心地にすっかり惚れ込んだ。さすが、原稿はノートパソコンで書くようになっていたから、その持ち運びにずいぶんと重宝した。が、二年ほどして同じものを買っておこうと足を運んだら、案の定、新デザインに替わってお気に入りは「幻の定番」になっていた。


 「かばん」にまつわるあれこれ


 あらためて「鞄・かばん」の字面を見て発音してみると、ちょっと奇妙な響きに感じたりするが、そのルーツは、オランダ語「kabas(カバス)」が転じたものとか、中国語の「文挟み(ふみばさみ)」という意味の「夾板(キャバン)」を日本語読みにしたとかの諸説がある。
 「かばん」に当てられた「鞄(ほう)」は、「なめし皮を作る職人」の意味合いを持つらしい。現代の「かばん」につながるものは、明治になって、外国人が修理に持ち込んだものを職人が真似たのがはじまりとか。明治20年代には、早くも「かばん専門店」が看板を上げている。
 かつて、あるTV番組で、「貴女のバッグの中身を見せて!」という企画が大受けしたことがあった。
 「女性のバッグの中」は、考えてみれば「秘密の花園」のようだから、神聖にして犯すべからざる領域だ。「見たいが見てはいけない」と、男たちには暗黙の了解があるから、ヒットもうなづける。
 夫婦でも恋人同士であっても、「かばんの中身」を積極的に見せたいなどと思う人は少ないはず。…別に秘密はないとしても、なんだか心の中を探られるような感じがするのは私だけではないだろう。

 「かばん」は物語る


 銀幕のスターたちが持つ「かばん」は、単なる小道具ではなく、登場人物の趣味や嗜好から社会的地位、さらには、その時々の心理状態や背負っている人生遍歴までも如実に物語ってしまう。
 かの寅さんの定番「箱形鞄」は、旅の必需品と、商売道具一式がぎっしりと詰まっていることをあれこれと想像させ、観客をすっかり「フーテン」モードに巻き込んでいくから不思議だ。
 007シリーズのジェームズ・ボンドが持つアタッシェケースが「最新兵器の宝庫」であることは、あまりにも有名だ。
 映画『インディージョーンズ・魔宮の伝説』で、ハリソン・フォードは旅立ちに大型のトランクを用意する。それには古びたステッカーが乱雑に何枚も貼ってあり、冒険旅行が一度や二度ではないことを一目瞭然に物語る。
 また、『パトリオット・ゲーム』で彼は、「ダレスバッグ」(50年代、当時のアメリカ国務長官ダレスが愛用していた「口金式かばん」)いわゆる、「ドクターバッグ」を持って、諜報員役にドンピシャはまる。
 TVリメーク版で再び話題になっている『私の頭の中の消しゴム』だが、元祖韓国映画では、ヒロインの令嬢役を演じたソン・イェジンの装いに、いつも著名ラグジュアリーブランドのバッグがトッピングされ、彼女の心と境遇の変化を自然に覚らせるていた。

 どうも「かばん」は、選んで持つ者についてのあれこれを、実に正直な何かしらのメッセージにして語ってくれるようではないか…。
〔PHOTO:DOMINANT LIMITED〕
《ファッショントークより》
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