ジップ
 一昨年、愛犬(ジップ)が、永久(とわ)の眠りについた。


 


 「子供と動物には必ず食われる」と、映画やドラマの世界では、よく言われる。
 バラエティ番組の企画でも、「困ったときは、お子様と生き物をからませろ」とは、よく使う奥の手である。
 幼い子供を主人公にした『初めてのおつかい』や、てんやわんやの子育てを扱った『大家族』は視聴率を稼ぎ出し、ついにシリーズ化した。
 また、CMに登場するペットは、その愛らしさで企業のイメージアップに貢献している。
 ペット産業は、すでに一兆円を超す巨大市場に成長している。
 全国の犬の飼育頭数は一千万頭をとうに越え、これに猫やその他の飼育動物を加えると、とてつもない数字になる。
 SCのペット用品売り場の広さとポジショニング、コンビニにおけるペットフードの扱いの顕著な変化、都市再生機構の「ペット飼育可能な賃貸住宅の建設」などはよくそれを物語っている。
 さらに大手電機メーカーや、生活用品や保険といった「人間」を相手にしていた業種が、「人とペットとの共生」をコンセプトに、新たにこの市場に参入し、マーケットの拡大を狙っている。
 わが国にもアメリカのように、『コンパニオンアニマル(仲間としての動物)』への意識改革が浸透してきているようだ。


 インターネットで「ペット産業」を検索にかけると、「あるわあるわ!」…移動式の全自動ペットクリーニング(?)、犬も堂々と入れる「Dog Cafe」、ペットの健康や美を保つマッサージサロン、中でもペット用ウェアは、工夫を凝らしたサイトが限りなくヒットする。
 既製品の他、素材・色・デザイン・サイズと、至れり尽くせりのオーダー工房は、人間様以上に豊富な犬種に対応している。
 『フリース素材の、リボン付コート』
 『ラメ入りニットと光沢のあるベルベット素材のゴージャスなワンピース』
 『お散歩にぴったりなスタンダードなデザイン』などと、ワンコメントつきで新作を発表。まさに「お犬さまさま」だ。
 ヴェールとネックレス付きのウェディングドレス、ビーズのチョーカー、ヒッコリー生地のオーバーオール、迷彩柄のコート、およそ人が身につけられるものならどんなものでもありといった具合で、しかも売れているという。
 『名犬ラッシー』や『名犬リンチンチン』に登場する犬を見て育った世代は、思わずニンマリとしながらも、こんな風潮に一抹の不安と疑問を感じないでもない…。
 天然の「毛皮をまとった動物」に、そもそもウェアは必要なのか?
 で、調べてみると、室内で飼う犬(座敷犬)は、エアコンの下で生活しているため、季節感がなくなり、温度差に弱くなって、洋服が必需品となっているとか。
 太古の時代、丁度「ヒト」が体毛を失って何かを纏(まと)うようになった(体を覆うようになって、体毛をなくしたのかもしれないが)のと似ているのか?
 つまり、「着飾った愛犬」を皆さんに見てもらい、自らもペア服を装ったりして楽しむという、飼い主のホビーだけの理由ではないらしい。ZIP

      イエローベースの毛並みには、

      人間と同じように「朱赤」のグッズが映える


 近頃は、珍しくもなくなったが、かつて関西にあるペットショップで、6万円もする著名インポートブランドの「首輪」がよく売れると聞いて驚いた。
 ところが昨今は、「お犬さま」用のおしゃれな首輪が、おしゃれな若者たちの「ブレスレット」として飛ぶように売れている。
 人と犬との際は、急速に狭まっている。

 それにしても、14年間、家族全員が愛犬(ジップ)に、どれほど癒されていたことか…医者も判定がつかないほどの超雑種だったが、美形で毛並みが黄金色に輝いていた(飼い主バカか…)。その色に「朱赤色」の首輪やリード、アクセサリーなどがよく似合った。

 「ペット・ロスト」の重さは、「いつもそこにあった生命(いのち)」の意味を、問いかける…。

〔PHOTO:DOMINANT LIMITED〕

《ファッショントークより》
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