慣れるとは恐ろしいことだ。
 昨夜も、「しゃれこうべ(髑髏=どくろ)」の夢にうなされた。
 ヤング層の間には「どくろ」が蔓延し、ファッションの人気モチーフの一つとしてもてはやされているそうだ。
 今この時も、地球上に戦いの悲劇が起こり、自然災害で失われる命があることを思うと、そんな現実をより身近に感じたことのある我が世代には、よほどのことがない限り、「どくろ」なんて、足を踏み入れてはならないタブーと言ってよい「図柄」だ。
 もちろん、ここ数年来続く、ビンテージ物(または、ビンテージ風)の人気の流れを見れば、「サバイバル・ファッション」のテイストとして、それは、はずせないモチーフではある…。
 洗いこんだ穴だらけのジーンズと「どくろと骨」のワンポイントマークがついたランニング(タンクトップ)に、太めのベルト(ヒップボーンより低い位置に)を締め、ビーチサンダルというラフな格好で、週刊誌のグラビアで人気アイドルが笑っている。

旬な男のアクセサリー            奇をてらったブレスレットのVP(ロンドン)

 都会の海賊たち


 先日、せがれが帰ってきた。
 団塊二世の彼も、ご多分にもれずダークトーン(少しこぎたなく見える)の、確かどこかで見たファッションだった。
 そう言えば、昨夏は、「カリブの海賊たち」が、銀幕を飛び出して、街中で大暴れした感があった。
 映画本来のアクション・アドベンチャーの醍醐味を思う存分に味わせてくれた『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(第79回アカデミー賞視覚効果賞)のジョニー・デップ演じる「ジャック・スパロウ船長」には、私もすっかりはまってしまった。
 どこかコミカルな役作りもすごいが、もっと強烈だったのは彼の衣裳・メイクだった。野性的なロングヘアーに、チャラチャラと色とりどりの髪飾りをつけ、目の下を黒く隈取りし、眉毛の近くまで幅広く巻いたバンダナ。
 スパロウ船長と、海賊船の不気味な異形の者たちの姿は、今どきの若者たちが推しすすめてきたファッションを狙い当てているような気さえする。

 渋谷あたりにたむろする若者たちのおしゃれを「ノスタルジックなワイルド系セクシー」服と、きれいめな「フラッシュバック」服に大別してみると、前者タイプは、この映画のファッションにストレートに刺激されたはずだ!
 象徴的に使われている「どくろ」にしても、「カワイーイッ!」なんてギャルたちの嬌声が聞こえてきそうだ。
 「ピース&ラブ」のヒッピー文化の洗礼を憧れと共に受けたオヤジたち「70年安保世代」にとってみれば、畏れ多くも「どくろ」マークは、「ドラッグ」や「反逆」のシンボルだった。Tシャツやアクセサリーに使うのには、それなりの理屈やかなりの覚悟がいったものだ。
 わが国に「平和ボケ」がはびこっている証左なのか?
 ただ、未だ理解しがたいのは、「着物」関連の業界でも、「どくろ」柄を染めこんだものが登場し、そこそこに売れているらしいこと。粋筋の好事家が、羽織の裏地に染めぬいたのを知ってはいるが…。

旬な男のアクセサリー  エレガンスからカジュアルテイストまでを
 揃えたアクセサリー店(ローマ)


 装飾品に関するあれこれ

 ところで、バブル期に3兆円を超えていた宝飾品(指輪・ネックレス・イヤリング・ピアス・ブレスレットなど)の市場規模は、バブル崩壊後13年間は縮小し続けた。が、ここにきてようやく歯止めがかかり、およそ1兆3千万円(05年)台となった。
 それを支えているのが、30才代の女性キャリアをはじめ、いわゆるセレブたちと、「ちょいモテ」オヤジの自家需要だ。また、ミニ株バブルで儲けた「ニューリッチ層」も多くいた
 男によっては「キザでいやだ」と敬遠されてしまう「小物雑貨やアクセサリー」でも、イミテーションならともかく、貴石・半貴石といった本物を使った宝飾品を、いやだという人は少ないだろう。
 今では、男が「ゆかた」に、ペンダントやブレスレットをしても自然でおしゃれだと見られる。…慣れてしまったということか?
 そもそも宝飾品(宝石)の目的は、「装飾・鑑賞・財産・お守り」の4つに分けられるとか。
 流浪の民や華僑は、全財産の一部を信頼できる宝石に変えて持ち歩いた。また、西欧では、その輝きに神秘的なパワーが秘められていて、「身体に良い」とかたくなに信じる者がいると言う。
 翻って私たち日本人は、一財産を身につけて流浪する必要性もないし、お守りなら、布袋に入れた神社の護符で十分事足りた。
 したがって、装飾品としての価値をもっとも重視してきたようだが、中でも売り上げのおよそ6割を占めているのが指輪。
 指輪のルーツは、紀元前2千年以上をさかのぼった古代エジプトにある。
 当時の人々は、糞玉を転がすフンコロガシ(=スカラベ)の姿を、日輪の回転を司る神の化身としてあがめ、「創造・復活・不死」のお守りとした。
 やがて、そのスカラベを摸した腹の平たい部分に、名前や身分を彫って印鑑のような役割を持たせるようになる。印鑑なら、首にぶら下げるより指にはめていたほうが、さらに便利で安全だと指輪が誕生したのだ。
 一方日本では、「万葉集」に登場する約50首に及ぶ「紐(ひも)の歌」に興味をそそられる。男女の契りを詠んだものだが、それらは現代の婚約指輪のイメージに重なる。
 紐の結び目は、指輪の「宝石の部分」そのものではないか?

             フォーマル服のクラヴァットに光る、旬な男のアクセサリー
                         上品なタイピン

    ☆        ☆        ☆


 いずれにせよ、アクセサリー市場も、男と女の境界線がなくなった。
 かといって、「どくろ」モチーフが、我ら世代へ、どんな形で浸透していくのか予測もつかない!
 何事もTPOをわきまえたおしゃれが大切だ。「アクセサリー・アドベンチャー」も、まずはプライベートタイムからチャレンジするのが良いのだろう。
 先のジョニー・デップは、来日時、両腕にアンティックなブレスレットをし、太めのベルトにジャラジャラとアクセサリー(スパロウ船長の髪飾り!)をぶら下げていた。
 記者会見では、シックなボーダー柄のポロニットに、小粋なグレーの帽子(チロリアンとソフトをミックスしたような形)をかぶっていた。
 味付けの違うパーツパーツも、彼の二枚目と三枚目をあわせ持つキャラクターや、ダークトーンの色合いと綯(な)い交ぜになって、さりげなく決まっていた…。
〔PHOTO:DOMINANT LIMITED〕

《ファッショントークより》
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