「で、3時限目は何の講義?」
「国文学史」
「ってことは明治大正の小説家とか出てくんの?」
「出てくるけど面白い講義じゃない」
「ま、いい。また隣座らせてくれよな」
「いいけど邪魔しないでね」
「おぅ、邪魔はしない。ただ翔子の講義中の顔撮らせてもらう」
「止めてよ、スマホのシャッター音出したらバレるじゃない」
「大丈夫、スピーカーはきちんと指で押さえるから音は出ない。お前の真面目なとこおばさんとかも見たいだろうしな。今度のおでんのときに紹介するわ」そのまま教室に入った。学生も結構いる。私は真ん中あたりの空席に腰を下ろした。
「いい感じじゃん」
「タク、私見世物じゃないんだけど」
「いいじゃん、お前見るのって俺位しかいないんだから。あと、悪いけど横山さんには見せない」
「裕美さんとはこれから口きかないの?」
「今んとこは話したくねぇな。彼女は俺のライバルだしな。お前が彼女のことシカトしてくれたら考えてもいい」
「またバカなこと言う。そりゃ裕美さんと今後喧嘩することもあると思う。でも、シカトなんてことは絶対しないよ。あ、先生来た。もう黙っててね」
「あぁ、わかった。教科書見せて」と言ってきたので教科書渡す。「わ、薄い教科書!」
「黙って」
「はい」そうして講義始まった。
・・・長い講義だった。疲れる講義だった。当時の作家の作品を話さないといけないのにこの先生はいつも変なこと言って話を逸らす。それぞれの作家の生い立ちとか家族構成とか世間の評価とか。純粋に作品だけ話してくれたらいいのになって思う。まぁでも終わった。拓実君見ると真面目に教科書見てる。でもその教科書だってそれぞれの作家の簡単な紹介しか書いてないのに。
「終わったね」
「あぁ、長い講義だったな」
「で、これからどうする?」
「うん、そうだな、そのまま学童行くか」
「わかった。今日の講義はこれでおしまい。あぁ疲れた」拓実君はずっとスマホ見てる。
「どうしたの?」
「え、いや、翔子も綺麗に撮れたなと思ってな」
「見せて」