〈第3章 他人の気持ち〉
2節～目的の無い目標～
人は本来、何事にも目的があり、
目標を位置づける事で行動をするものです。
しかし近年では
目的のハッキリしていない行動が
増えている様な気がします。
今回のタイトルとなっております
“目的が無い目標”です。
例えば有名人の行いに対し、
ネットのコメント等で
異常とも言える誹謗中傷を行う。
この行動(コメント、書き込み等)を
すると決めた際の目標は何でしょう。
自分の気持ちや知識、
あるいは人間性を多くの人の目が届く場所に
書き綴る事が目標なのでしょうか。
ではそうした結果…どうなりたいのか。
こう考えると答えが出ません。
つまり目的が無いのです。
有名人の違法な行為が発覚したとしても、
本来であればその罪は法が裁くものです。
司法国家ですので当然です。
法で罰金刑なのか禁固刑なのか、
そこに執行猶予が与えられるのかを決めるのです。
そして当人はその罪の償いを行う事になるのです。
しかし現在の世の中では、
その法で裁かれ
罪を償う事は変わりが無いのにも関わらず、
見ず知らずに人間による誹謗中傷が存在します。
昔ならせいぜいご近所の人がひそひそ話をしている程度でした。
それでも気になり心が病んでしまうという事もあります。
何故なら、これまでの"章"でお伝えした通り、
人は他人から認められる事が
心の満足に繋がる訳であり、
自分に対して批判的な目線や文字、
ひそひそ話が大きければ
心の逃げ場が無くなってしまうからです。
本人は決まった判決に向き合って
罪を償ったとしても、
例え直接の被害者が許したとしても、
当人の周りの環境は悪化し、
人生が壊れるくらいまで追い込まれてしまいます。
『そりゃ、あんな悪い事をしたのだから当たり前だよ！』と
仰る方もいますが、
だから法律があるのです。
大勢で1人に対して総攻撃の様なコメントをし、
それを擁護する者は、
さらにバッシングを受ける事になる。
この行動に目的があるなら
『コイツを潰してやろう』
くらいではないでしょうか。
目的があるならです。
この“コイツを潰してやろう”が
目的ならそれで良いのですが、
何故その相手の人生を
潰してしまわなくてはいけないのでしょうか。
良く考えなくてはなりません。
自らが被害者の場合、
判決(罪の大きさ)に不服に感じて
直接手をくだしてやりたい！
と思うことは理解出来ます。
何故なら目的が分かるからです。
でも全く関係ない他人がそう思うという事は
一見、善の心の様に思いますが、
行う行動は悪ですよね。
もちろん悲惨な大事件にはそう感じる場合もあります。
そんな時のコメントなどは
『こんな軽い罪じゃダメだ！』と
法に向けたようなコメントも多いと感じます。
これは理解出来ます。
法に問題があれば法を改正しなくてはなりません。
それには国民の声も必要なのです。
それ(法)以外の問題に関しては、
個人を批判するだけの内容になってしまいます。
違法な行為をした者に対しては
法が判断します。
それ以外に“刑”を与えるのであれば、
それなりの目的と責任がいるでしょう。
その目的と責任は皆無と言っても良いのです。
では、何故行うのか。
コメントや書き込みが出来る…
つまり匿名で自分の意見を言える場所が
近くのコンビニよりも家族よりも
身近に存在する事が1つでしょう。
スマホで即、意見を申せる訳です。
そして正論であれば
何を言っても良いという風潮が
世の中に満栄しており、
大勢が行う書き込みという行為を
『皆しているから自分も』と
回りの空気に合わせるという
風潮もまた満栄していることが原因だと言えるでしょう。
つまり目的の無い目標には
世の中に流されるという
漠然とした目的が、
見えない程度に薄く、
でも強く存在しているという事です。
その目的を誉める事が出来ない理由は、
その目的を達成したとしても、
人は成長しないからです。
この場合の“目的を達成”とは
コメントや書き込みを行い、
問題の本人達がそれを見て
傷付く事と自分の文章や価値観などを
大勢に見せつけた事になります。
これは人に対しての優しさという部分では皆無であり、
書いた本人も
問題を起こした当人も、
それを読んだ人も誰もが
成長する事はなく、
虚しい時間にしかならないという事です。
その虚しい時間に価値は無く、
自らの成長を止め、
相手の成長をも止めてしまいます。
現在の世の中に相手を傷付けるコメントや書き込みが当たり前の様にあるのは、
目的が間違っていることが原因であり、
その目的の間違いを
世の中の多くが気付いた時に
システムは変わるでしょう。
自らの行動が
“目的の無い目標”だと気が付けば
その時点で良く考えてみると良いでしょう。
せっかく匿名で
書き込みが出来るのであれば
優しさを提供出来る場所が溢れている事にもなります。
『ちゃんと罪を償い、改める事が出来たら、また復帰して頑張ってください！』
『人には過ちはあるものです。私だってそうです。だから過ちは正してファンの為にまた頑張ってくださいね！』
等々、いくらでも立場が変われば
言って欲しい言葉はあるのです。
人を罰する目的には、
罪を償わせる事と同時に、
人間的に更生させる目的もあるのです。
何故、更生させる目的があるかと言えば、
その者の成長を
他者で促してあげるべきだからです。
有名人ではなくても
会社の中で発覚してしまった自分のミスや不祥事、
セクハラにパワハラ、
暴かれた過去の過ちを
社内全員、取引先、ご近所に責められ続けたら苦しいはずです。
人間には必ず過ちはあります。
問題はそれを如何に成長に繋げるかなのです。
……3節へ続きます