概要

消防設備士は消防法に基づく国家資格。

スプリンクラーや火災報知器などの消防設備の工事や点検をする際に必要な資格です。

 

消防設備士の資格には、消防設備の点検・整備のみ行える乙種と、点検・整備に加えて設置工事も行える甲種の種別があります。

また種別の他に類別があり、類ごとに扱える消防設備が以下の通り定められています。

 

特類 - 特殊消防用設備等

1類 - 屋内・屋外消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備
2類 - 泡消火設備
3類 - 不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備
4類 - 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備
5類 - 金属製避難はしご、救助袋、緩降機
6類 - 消火器
7類 - 漏電火災警報器

(特類は甲種のみ。6類と7類は乙種のみ。)

 

今回私が受けるのは甲種特類。

甲特の受験資格は「①甲1~甲3のいずれか1つ、②甲4、③甲5」の3つの資格を保有していること。

私は甲特以外は全て取得済みのため要件はバッチリです。

 

甲特を取れば「特殊消防用設備等」の設置工事や点検ができるようになるのですが、そもそも特殊消防用設備とは何でしょうか?

消防庁の資料によれば、通常用いる消防用設備と同等以上の性能を有すると登録検定機関によって評価され、総務大臣の認定を受けた設備等については、特殊消防用設備として設置することができる…とあります。

 

現行の消防法令で予想しない特殊な技術による消防防災システム等で、技術基準が定められていないものについては、総務大臣の認定を受ければ、通常用いる消防設備の代わりに設置できるということですね。

 

2019年3月時点で、総務大臣が特殊消防用設備として認定した件数は68件。

特殊消防用設備の認定制度が始まったのが2004年なので、毎年5,6件のペースで認定されている模様。

(出典:消防白書)

 

消火器やスプリンクラーが設置されている物件はいくらでもありますが、特殊消防用設備が設置されている物件は全国で68件しかないということで、いかに甲特の需要が無いかが分かります…

それでも、あと一歩で消防設備士コンプリートというところなので、頑張って取りたいと思います。

 

参考書

市販されている甲特の参考書はオーム社の「甲種特類消防設備士特選問題集」1冊のみ。

たった176ページで2,700円と価格は高めですが、これ以外に参考書は無いので仕方ありません。

これに加え、1類~5類の受験で使用したテキストを使用します。

 

試験対策

甲特は学科試験のみで、実技試験はありません。

試験は①法令、②構造・機能、③火災・防火の3分野で構成され、それぞれ4択で15問、計45問出題されます。

各分野4割以上かつ合計で6割取れていれば合格です。

これは他類の学科試験と同じですね。

 

①法令について

15問中7,8問は他類と同じ共通問題が出ます。

「防火管理者の行う業務で正しいものはどれか」とか「消防設備士免状の更新は何年ごとか」といった、おなじみの問題です。

次に、2,3問は自主表示制度や認定制度など、特類特有の問題が出ます。

残りの5問は1~5類の法令分野から1問ずつ出題されます。

 

②構造・機能について

1~5類の構造・機能から、それぞれ約3問ずつ出題されます。

 

③火災・防火について

特類オリジナルの問題です。

火災については、炎や煙の性質(火災プルーム、フラッシュオーバー、中性帯など)、火災発生時の人間の心理などが出題されます。

防火については、主に建築基準法関連法規から出題されます。(消防活動拠点、避難区画、防火区画など)

 

①法令については8割は既習事項ですし、②も範囲は広いものの全て既習事項からの出題なので問題なさそう。

一方、③は全て特類特有の分野で、出題範囲も広いので対策しづらく感じました。ただ、あまり手を広げても非効率。

 

そこで合格戦略として、①法令で8割、②構造・機能で6割、③火災・防火で4割を目標にしました。

これなら合格ラインの6割ジャストです。

 

①法令、②構造・機能は1~5類の参考書を、③火災・防火は上述の特選問題集をそれぞれ3周ほど読みました。

法令は心配はしていないのですが、構造・機能は範囲が広すぎて全く頭に入らない…

既習事項とはいえ試験が終わったら忘れちゃいますから、ダメですね。

そんなこんなで試験日を迎えることに。

 

受験(2020.08.30)

会場は日本大学実籾キャンパス。

いつもは幡ヶ谷の中央試験センターで受けるのですが、今回は日程の都合上千葉で受験することに。

コロナ禍での受験のため、1階入り口で検温の後、手をアルコール消毒し、マスクを着用するよう促されました。

 

9:30になり試験開始。

法令→構造・機能→火災・防火の順に解いていきます。

いつもなら不安な実技から解き始めるんですが、甲特は筆記しかないため調子が狂います…

 

法令はオーソドックスな問題ばかりでしたが、1~5類の法令問題は全然ダメでした。

構造・機能もうろ覚えの知識を総動員させましたが、自信を持って解答できたのは5,6問程度。

懸念していた火災・防火も初見の問題が多く、特選問題集だけでは歯が立ちませんでした。

 

せっかくなので出題された問題を一部紹介します。(赤字部分は穴埋めで問われた問題)

・動力消防ポンプの規格放水量が0.4m³/min未満の時、警戒範囲は25m以下

・防火対象物の各部分から一つの非常コンセントまでの歩行距離は50m以下

・建物の火災から避難する際、減光係数が減少すると見通しが悪くなる→×(見通しは良くなる)

・建物の火災から避難する際、周囲の刺激臭が一定以上の強さになると避難者の足取りは遅くなる→×(速くなる)

 

1~5類範囲については、側壁型スプリンクラーヘッドの設置基準、ポンププロポーショナー方式の構造、二酸化炭素消火設備の遅延期間、緩降機の降下速度試験などが出題されました。万遍無く知識を問われた印象です。

 

さて、1時間半ほどで全て解き終わりました。

サッと見直しても分からないものは分からないので、マークミスが無いことだけ確認して途中退室。

あとは1か月後の合否発表まで大人しく待ちます。

感触はボロボロだったのであまり期待はしません…

 

合否発表

消防試験センターからハガキが届きました。

開けてみると…

なんと、合格でした!

期待していなかっただけに喜びも大きかったです。

筆記全体で正答率64%ということは、合格ライン+2問正解だったということですね。

 

さて、偉そうにアドバイスできる点数ではないのですが…

甲特を受験して実感したのは、問題の半分以上は1~5類の内容ということです。

そのため、1~5類の復習を重点的に行えば法令と構造・機能で8割を稼ぐことも可能です。

火災・防火は対策が立てづらく範囲も広いため、最小限の学習に留めて6割得点を目指し、万が一6割を下回っても法令・構造でカバーする、というのが王道のような気がします。

私は1~5類の復習に時間が取れなかったため超ギリギリの合格になってしまいました。(反省)

 

免状到着(2020.10.24追記)

申請していた免状が届きました。

 

さて、これで消防設備士はコンプリート。

何とか一発合格で有終の美を飾れました。

学生時代に乙6を受けてから始まった消防設備士受験。

当時は乙6にも落ちる体たらくでしたが、まさかコンプできる日が来るとは…感慨深いものがあります。

危険物取扱者は甲種まで取ってしまったし、足繁く通った幡ヶ谷の中央試験センターにも行くことがないのかと思うと何だか寂しいです。

 

これで消防設備士編は完結です。

長い間お付き合い頂きありがとうございました。