光待つ場所へ (講談社文庫)/講談社
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年末に読んだ短編集。辻村さんはかなり気に入っているので、文庫はほぼ読んでいます。それぞれの作品が互いにリンクしあい、登場人物たちの過去や未来が錯綜するのが辻村ワールドの特徴のひとつ。ある長編での主人公が、別の作品でチョイ役として顔を出したり、気になっていた人々の後日談が思わぬ形で現れたり。
この短編集も、「しあわせのこみち」が「冷たい校舎の時は止まる」、「チハラトーコの物語」が「スロウハイツの神様」、「樹氷の街」に至っては、「ぼくのメジャースプーン」から「子供たちは夜と遊ぶ」「名前探しの放課後」「凍りのくじら」・・・と、たくさんの物語とつながっています。
とはいえ独立したものとして読んでも別に支障はないです。
読後感としては、やや期待外れかなあ。この作家はすごく実力のある方だと思うので、それにしては気楽に書いちゃった感がして、読んでて歯を食いしばるいつもの状態になれなかった。
自分だけが特別、世界がバカに見える、さびしくて仕方ないのに虚勢を張ってカッコつけて。青春期特有の恥ずかしくて痛い心の叫びを文章化するのが彼女の真骨頂ですが、今回の皆さんは、そこまで感情移入できなかった。こっちがすでに老成してしまったということでしょうかね。虚言癖がある美形にしてオタクのB級アイドル、チハラトーコの話はちょっと面白かったな。
「樹氷の街」は合唱コンクールに向かう中学生たちの日常。ピアノ伴奏をめぐる一連の騒ぎにリアリティがなかったのが残念。辻村さんはあんまりピアノ弾かないんだな、と思いました。