Live By Night | そういえば、昔は文学少女でした。

そういえば、昔は文学少女でした。

クリスマスと誕生日に一冊ずつねだった、「世界少女名作全集」。図書室の本を全部借りよう、と思ってた中学時代。なのに今では読書時間は減る一方。ブログに書けば、もっと読むかも、私。という気持ちで始めます。洋書から雑誌まで、硬軟とりまぜ読書日記。

Live by Night: A Novel-【電子ブック版】

¥905
楽天

Live By Night

うわあ、読み応えがあった。デニス・ルヘインは「ミスティック・リバー」が最高傑作だと思ってきましたが、それを上回る傑作かも知れない。

読み終えたばかりで興奮さめやらぬ状態です。

1920年代のボストン。警察官の息子として生まれながら、仲間と悪事を繰り返す少年ジョーが主人公です。冒頭は、10数年後、セメントで両足を固められたジョーが海に放りこまれようとする場面。結局あの女に出会ったことが運の尽きだったんだな、みたいな回想で始まるのでした。手に汗握るドキドキの連続。
決して粗暴な性格ではなく、むしろ頭脳明晰で冷静な彼が、なぜギャングの手下のような真似を始めたのか。生まれた時代と場所が違ったら、もっと日の当たる道を正々堂々と歩いただろうに、ジョーはどこまでも夜を生きようとするのです。
それでも無意味な暴力や殺人とは距離を置きながら、うまく立ち回っていたはずの彼の前に、突然現れた運命の女エマ。あっという間に恋に落ちて彼女に夢中になるジョーですが、彼女は、泣く子も黙る大ギャングの愛人でもあったのです。まんまと敵の裏をかいて、エマと逃げおおせると思ったら大間違い。何者かの裏切りで彼は半殺しの目に遭い、刑務所に放り込まれてしまいます。

このまま放置していては息子が殺されると判断した父親が、敢えて彼をリンチさせ、強盗罪で投獄することで救おうとしたのです。まあ実際強盗はあちこちやってたわけだしね。このパパ、警官としての立派な評判の影では賄賂もらって癒着して、の悪い奴。三男坊のジョーと、どうもうまくコミュニケーションが取れないんだけど、実は親子の愛がお互い深いことは、作中を通じてひしひしと感じられます。

さてジョー君。エマは連れ去られた車ごと事故で死んだ、と伝えられても、どうしても彼女の裏切りと死を受け入れることができません。生きる目標も失って虚ろに過ごすんだけど、刑務所の中は危険がいっぱい。頻繁に起こる暴力沙汰や殺し合いの中で、次第に逞しく生き抜く術を身につけて行きます。
服役中にパパを心臓発作で失ったジョーは、彼の形見の高級腕時計を腕に、刑期を終えてフロリダへ。未知の都市タンパでやがてどんどんビジネスの腕を振るい、実力者に成り上がって行くのでした。ラテン系の彼女もできてお金も地位も権力も得て、さあどこまで行くのかジョー!?

彼に忠誠を誓う友人や恋人や側近、彼を疎ましく思うライバルギャングたち、そしてかつて手痛い目に合わせた大物に新興勢力KKK・・・敵か味方か、裏切りか隷属か、信念か金か・・・血で血を洗う洗う凄まじい抗争の中で、ジョーはやがて平穏な暮らしを夢見るようになるのですが果たして_?

ジョーは一体セメントで固められて死んでしまうのでしょうか?それともいつか、昼を生きる日がやってくるのでしょうか?運命の女エマは本当にあのとき死んだのでしょうか?ラストは何かあるだろうとは思ってたけど、ちょっと想像外の幕切れでした。その伏線がそう来たか!

残虐シーンが多すぎますが、ハリウッド映画になりそうです。もう少し若ければ、レオ様がジョーにはまり役だったでしょう。パパがマイケル・ダグラスで、エマはスカーレット・ヨハンソン、新しい恋人にペネロペとかね。