ツナグ | そういえば、昔は文学少女でした。

そういえば、昔は文学少女でした。

クリスマスと誕生日に一冊ずつねだった、「世界少女名作全集」。図書室の本を全部借りよう、と思ってた中学時代。なのに今では読書時間は減る一方。ブログに書けば、もっと読むかも、私。という気持ちで始めます。洋書から雑誌まで、硬軟とりまぜ読書日記。

ツナグ [ 辻村深月 ]
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ヘンテコなタイトルです。ツナグは繋ぐ。それも生きている人と死んだ人を繋ぐ使者のことで、文中ではまさに「使者」にツナグというカナが振られています。

死んでしまった人にもう一度会いたい、と思う願いがかなうなら。

死んでしまったあとで、生きている人にまた会いたい、と祈る気持ちがかなうなら・・・という設定はまさにファンタジーなのですが、そこで描かれる物語はひんやりするほど現実的で、甘いだけではなく、ほろ苦かったり苦しかったりする。それがあまりにリアルなので、読み終えた後、本当にこの地上のどこかに、「ツナグ」の仕事を担う人たちが存在していても何も不思議はない、と思えてくるのです。


・アイドルの心得

・長男の心得

・親友の心得

・待ち人の心得

・使者の心得


物語は、5篇の独立したエピソードからなる連作になっていて、大好きだった人気タレントに会いたい地味なOL、ツナグの存在を疑いつつも、おおらかだった母に会おうとする気難しい中年男、親友でありライバルでもあった級友に殺意を抱いた女子高生、ある日忽然と姿を消した婚約者を待ち続けるサラリーマンたちが、それぞれの理由と事情を抱えて「使者(ツナグ)」にたどり着き、それぞれの再会を果たすのが4章まで。最終章では、彼らのあいだを取り持っていた若い「使者(ツナグ)」=歩美自身の葛藤と両親の死にまつわる秘密が描かれます。


気難しいオッサンや年老いた女性の目線からストーリーを語るというのも、それなりに上手にこなしているなと思ったけど、この作者にはやはり、10代の女性特有のどうしようもない自意識と残酷さ、傷つきやすさを描かせるのが一番しっくりきます。そういう意味で、「親友の心得」が一番グッと来た。


ちょうど今映画も公開中なんですね。キャスティングはなるほど皆さんイメージにぴったり。

あれ?でも1章の「アイドルの心得」は映画では割愛されているらしい。これは、読んでいてどうしても飯島愛ちゃんを思い浮かべずにはいられなかったのですが、「使者(ツナグ)」の力を借りて彼女が特別出演することでもない限り、映像化は難しかったのかな(深読み・・・)。