タイトルが長すぎて書ききれないので省略。
ご存知「ミレニアム」シリーズのスティーグ・ラーソンと、30年以上にわたって公私ともにパートナーで有り続けた女性、エヴァの凄まじい回顧録です。
彗星のごとく現れて、自身の成功を見ることなく急逝した伝説の作家、ラーソンの孤独な生い立ち、政治活動、そしてネオナチを始めとする極右勢力との戦い。心優しいフェミニストであったスティーグの分身でもあった女性だけに、彼の人物像がよく浮かび上がってきます。
そして、彼を単なるエンターテインメント作家としてカテゴライズしないでほしい、という彼女の痛切な思いも伝わってきます。
愛する人をある日突然失くす、それだけでも想像を絶する悲しみだと思うのに、彼女を待っていたのはそれだけではなかった。事実婚で子供のないエヴァには、正式な遺産継承者の権利がなかったのです。
先進と思われるスウェーデンで無情な法に阻まれる中、彼の残した雑誌「EXPO」を守り、彼の父や弟との遺産をめぐる争いに悩み苦しみ、「ミレニアム」に群がるコマーシャリズムに辟易しながら、彼女はどうやって失意の日々を抜け出し、もう一度生きる力を蓄えていったのか。
こんな背景があの傑作に隠されていたとは夢にも思わなかったけれど、苦い読後感に、知らなければよかった、という気持ちも一瞬よぎりました。
多分、エヴァが心の底から憎み、呪うほどの「敵」たちにも、彼らなりの反駁の理由があるに違いなく、スティーグ亡き今、どう進むのが一番正しいのか、よくわからなくなる。
というわけで、PCに保存されているという「第4巻」を読みたい、と単純に騒げなくなってしまった1ファンなのでした。