第三の女 | そういえば、昔は文学少女でした。

そういえば、昔は文学少女でした。

クリスマスと誕生日に一冊ずつねだった、「世界少女名作全集」。図書室の本を全部借りよう、と思ってた中学時代。なのに今では読書時間は減る一方。ブログに書けば、もっと読むかも、私。という気持ちで始めます。洋書から雑誌まで、硬軟とりまぜ読書日記。

【中古】afb 第三の女 光文社文庫/夏樹静子【著】
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70年代頃の音楽や文学って、なんだか今のものよりも大人の香りがしていて、かっこよかった、という記憶があります。それは私がまだお子様だったから、というだけではない気がする。。


夏樹静子さんのこの小説も、70年代に発表された作品。でも全然古びた感じがしない。ワクワクしながら最初から最後まで楽しめました。フランスで賞まで取った本格推理小説。

去年テレビドラマ化もされていたそうで、そのキャスティングにはちょっと「?」な気もするけど、映像化は難しそう、そしてだからこそチャレンジしたくなるのもわかる世界観。


何しろ、主人公が運命の出逢いを経験する冒頭が、闇の中なのです。相手の姿かたちは見えない。荒れ狂う突然の嵐、しかもフランス郊外のとあるホテル。偶然居合わせた謎の女と交換殺人の約束を交わし、一夜のロマンスに身を委ねる大学助教授の大湖。きゃーそんなことありえないでしょ!と騒ぐ野次馬を黙らせてしまう迫力と品格が、文章にあるので、どんどん引き込まれてしまいます。


女は鮫島史子と名乗って殺したいほど憎い女性の名前を大湖に伝え、彼は彼で素性を明かして自らの悩みを打ち明けます。何人もの子供たちがガンで命を落としたり苦しんでいる事象と、大手メーカーの菓子との因果関係を調べる役目を担当した彼は、分析の結果、菓子に強い発ガン性物質が含まれていたことはほぼ間違いない、と確信を得ますが、教授に阻まれ、告発をもみ消されてしまいます。反発することで左遷もほのめかされ、窮地に立たされた大湖。保身と金のために、弱者を平気で切り捨てるような教授をのさばらせてはいけない。義憤に発しているとはいえ、行きずりの史子に勢いで殺意をほのめかしてしまうのです。


やがて日常に戻ったある日、教授は何者かによって毒殺され、大湖は史子が本気だったことを悟ります。lもう一度彼女に会いたい、どうすれば彼女と会えるのか、妄想に支配されながら、しかし彼女の依頼にも応えなければなりません。やがて大湖はターゲットに近づき、その女永原翠を絞殺することに成功します。お互いに約束を果たした。さあ今度こそ史子に会えるだろうか。史子の正体は誰なんだろうか。妄執がやがて彼の意識を蝕んでいき、警察の捜査の手が迫り来る中で、破滅のときが刻刻と近づいているのでした・・・


誰かを探そうにもネットで検索なんてないし、連絡を取りたくても携帯電話なんかない。そんな時代に、固定電話や手紙でメッセージをやり取りしたり、ゲランの香水だけを手がかりに人を探すなんてのが、非常に新鮮です。登場人物たち、特に女性の話し言葉が流麗なのもよかった。

それにしても、男って愚かね~。