どれくらいの愛情 | そういえば、昔は文学少女でした。

そういえば、昔は文学少女でした。

クリスマスと誕生日に一冊ずつねだった、「世界少女名作全集」。図書室の本を全部借りよう、と思ってた中学時代。なのに今では読書時間は減る一方。ブログに書けば、もっと読むかも、私。という気持ちで始めます。洋書から雑誌まで、硬軟とりまぜ読書日記。

どれくらいの愛情 (文春文庫)/白石 一文
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なんか変なタイトルだなと思いつつ、以前に買って放置してあった文庫です。気づけばこの8月、仕事と家事と雑事に追われて、ほとんど読書らしい読書をしてない!子供の頃は一番本を読む季節だったのにね!


というわけで、本棚から発見してかばんに入れて、キンドルの代わりに持ち歩いていましたが、なかなか進まないのだこれが。短編3つと中編3つで構成されているのですが、表題作の「どれくらいの愛情」にたどり着くまでが非常に長かった。もう、途中で放り出そうかなという気にもなりました。


■20年後の私へ


39歳のヒロイン、岬が、離婚した夫と再会して不愉快になったり、将来に不安を感じつつも忙しく仕事をこなし、同僚の年下男性から思わぬアプローチを受けたりする話。短大生の頃に自分が書いた、未来の自分あての作文を読んで、忘れていた感情に元気づけられる。何とも思ってなかった年下君を部屋に誘って深い関係になった後で、彼がずっと自分に思いを寄せていたことを知り、そういえば顔が好みだわと思ったりするあたり、なんかちょっと安っぽいなあ。


■たとえ真実を知っても彼は


父のように慕い、敬愛する作家里見が急死して、呆然とする担当編集者の私。でも実は彼は、里見夫人ヘレンと密かに通じてもいた。そして一方、私の妻緋沙子と里見の間にも秘密が・・・乱暴にいうとW不倫のお話。さて私は、どういう結論を出すのでしょうか。


■ダーウィンの法則


OLの知佳は、スナックでバイトしていて、客の英一と長らく不倫関係にある。40代で死んだ父親も、病気が見つかる直前に愛人が発覚し、当時中学生だった知佳は相手の家を訪ねた経験がありますが、今度は自分が、英一の娘からの思わぬ攻撃を受けることになって・・・


なんだか全体に、主人公が自分を正当化して、都合よく解釈して生きてる感じがあんまり好きじゃない。


■どれくらいの愛情


4作はすべて九州を舞台にしているけど、この「どれくらいの愛情」だけが博多弁、あとは標準語で書かれています。台詞が博多弁になるだけで、急に小説が生き生きしてくるから不思議。同じ作者の「永遠のとなり」も、男ふたりの素朴な博多弁でのやりとりが、とてもよかったように、これもそこが好きです。この話になってからやっと読み進む気になった。


家業のぜんざい屋を継いで真面目に働く青年正平が、ホステスの晶と恋をして、結婚する寸前で裏切られ、失意のままに事業で成功していく、という導入。別れたとはいえ、街のあちこちで、何度もすれ違い、顔を合わせてきた2人が、5年の歳月を経て本格的に再会して、物語が動き出す。彼女が彼の元を去った本当の理由、正平の母の、息子を思うあまりの逸脱した行動、不思議な能力で「お告げ」を知らせる木津先生・・・


随分強引な展開だね、と思うところもままありますが、前3作の人々よりは、登場人物に好感がもてる。

この作者は主人公を女性にしないほうがいいんじゃないかな。