楽隊のうさぎ | そういえば、昔は文学少女でした。

そういえば、昔は文学少女でした。

クリスマスと誕生日に一冊ずつねだった、「世界少女名作全集」。図書室の本を全部借りよう、と思ってた中学時代。なのに今では読書時間は減る一方。ブログに書けば、もっと読むかも、私。という気持ちで始めます。洋書から雑誌まで、硬軟とりまぜ読書日記。

楽隊のうさぎ (新潮文庫)/中沢 けい
¥540
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「船に乗れ!」「オケ老人!」と続いた、『Cフィル課題図書』の新刊。いや、ただ単に、『オーケストラあるある』『アンサンブルあるある』というノリで、回し読みしているのですが、これはビオラのT君が貸してくれました。

全国大会の常連になっている中学校の吹奏楽部が舞台。主人公の克久は、小学校時代の経験から、なるべく心を開かないように、なるべく学校にいる時間を短くするように、とすることで、ひっそりと中学生生活をスタートさせようとするのですが、なぜか吹奏楽部に勧誘されて、打楽器を担当することになります。早朝誰よりも早く学校へ行き、夜はどんな運動部よりも遅くまで練習や会議に余念のない吹奏楽部。

音楽のことなど何もわからなかった孤独な少年が、一心に打楽器を練習するうちに何かを手にし、大人への第一歩を進んでいく・・・と言ってしまえばそれだけのお話ですが、なかなか読ませます。

ひとつには、青春小説にありがちな一人称でなく、神の視点で語られていることが大きい。レビューを見ていると賛否両論あるようですが、克久だけでなく、上級生や同級生や、母や先生や、くるくると色々な人の立場が交錯するので、わかりにくいところも確かにあるものの、それによってどこか突き放したクールなバランスが生まれます。克久がなぜ孤独なのか、彼を執拗にいじめる同級生にどんな事情があるのか、克久の両親には何かぎくしゃくした問題があるのか、吹奏楽部の顧問の森先生がめざしている音楽とは何か・・・いろいろな背景がはっきり種明かしされることはなく、何となく感じるけれども解決することなく過ぎていく。そういう描写が妙にリアルで、私は面白いと思いました。

吹奏楽なんで弦楽器はコントラバスしか登場しませんが、初心者が1年、2年で素晴らしい音色を紡ぎだすようになるなんて、バイオリンではありえないだろう!って思うとちょっと羨ましい。

さてさて現実に戻って今夜も弦分奏。そろそろ支度してきます。