Invisible | そういえば、昔は文学少女でした。

そういえば、昔は文学少女でした。

クリスマスと誕生日に一冊ずつねだった、「世界少女名作全集」。図書室の本を全部借りよう、と思ってた中学時代。なのに今では読書時間は減る一方。ブログに書けば、もっと読むかも、私。という気持ちで始めます。洋書から雑誌まで、硬軟とりまぜ読書日記。

Invisible/Paul Auster
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なんだなんだ、気づけば1ヶ月以上更新が止まってた。

あの地震があって、中国へ仕事に行って、これは向こうで読んだうちの一冊だったんだけど、なんだかどうにもブログどころじゃない、という気持ちになってしまっていたんですね。

帰ってきてから最初は少し勢いが残っていたんだけど。


でもこれがつまらなかったかと問われれば、むしろその逆。

現地での仕事の進まなさ加減と、ホテルの部屋で呆然と眺めていた日本のニュース映像。くじけそうになる私を、唯一別次元へと誘ってくれたのがこの小説だったと言い切っていい。


物語の力ってすごいんだな、眼に見えなくても、心を動かすものってほんとうにあるんだな、って再確認しました。タイトルが奇しくも「Invisible(不可視の)」というのも象徴的だった。


それだけに、その「救われた経験」を言語化することがすぐにはできなかったのかもしれない。


はじまりは1967年、ニューヨーク。詩人をめざすシャイな青年、アダムが、とあるパーティでフランス人の教授と出会うところから。教授ルドルフと、彼の恋人の放つ華やかなオーラに魅せられながら、その闇にも引き込まれていくアダム。あっという間に殺人事件まで起こり、あれあれ、どうなっちゃうの?と思っていると、舞台は一転して現代へ。第1章は、すでにこの世を去ろうとしている病床のアダムが、友人に託した回想記だった、ということが、読者に明かされます。


時間と空間と、語り手を変えながら、淀みなく美しく描かれていく、これぞオースター!の独特の世界。

読後はほろ苦かったのだけれど、ひととき酔わせていただきました。


もう二度と3月以前の自分に戻ることはできないけど、ちょっとずつまた、本を読んでいこう。