Full Dark, No Stars | そういえば、昔は文学少女でした。

そういえば、昔は文学少女でした。

クリスマスと誕生日に一冊ずつねだった、「世界少女名作全集」。図書室の本を全部借りよう、と思ってた中学時代。なのに今では読書時間は減る一方。ブログに書けば、もっと読むかも、私。という気持ちで始めます。洋書から雑誌まで、硬軟とりまぜ読書日記。

Full Dark, No Stars/Stephen King
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怖いこわーい、ぞっとする話が得意なキングの真骨頂。


中編4作からなっていて、すべて、平凡な人生が一瞬にして急変するお話です。星のない漆黒の夜。まさに真っ暗闇。


1作目の「1922」は、土地をめぐって妻と意見が対立した農夫が、10代の息子に手伝わせて彼女を殺して、井戸に投げ捨てるところから始まります。あっさりと済むはずだった犯行が、思うようには進まず、父と息子を次第に追い詰めていきます。傷心の息子は幼い恋愛の果てに相手を妊娠させて、無軌道な青春の暴走は、やがてさらなる悲劇を呼ぶのでした・・・


2作目「Big Driver」の主人公は、人気女流作家。講演の代行を頼まれた帰り、大男に襲われて命からがら逃げ出した彼女は、レイプが偶然ではなく、仕組まれた罠だったことを知ります。復讐の鬼と化す彼女は、犯人と間違えて彼の弟を射殺してしまい、自責の念に苛まれるのですが、実は・・・


3作目「Fair Extension」。冴えない人生を歩んできた中年男は、末期のガンで命すら風前の灯。旧友はといえばハンサムで金持ちで、仕事もうまく行き、主人公の元彼女と幸せな結婚生活を送っている。ある日フェア・エクステンションという奇妙なサービスを売る男と出会います。背が足りない人には身長を、髪が足りない人には毛髪を、顧客に応じて”拡張”してくれる、というのです。半信半疑で彼は、旧友の不幸と引き換えに命の拡張をオーダーします。そしてそこから始まる怒涛の逆転劇の凄まじさ・・・


4作目「A Good Marriage」。

コイン収集家の夫と、何十年も幸せな結婚生活を送ってきた主婦。ある夜自宅のガレージで恐ろしい物を発見してしまい、夫の隠された正体を知ってしまいます。あんなに優しくて穏やかな彼が、連続猟奇殺人の犯人だったのか?もしそれが本当なら、一体自分はどうすればよいのか?何も知らない子供たちはどうなってしまうのか?でも、大勢の犠牲者たちのために黙認することは許されるのか?・・・煩悶の末に彼女が下した決断とは!


どれも非常に怖いのですが、私は3作目が結構好きです。キングの傑作長編「Needful Things」を髣髴とさせる世界。4作中で唯一、直接的な殺人事件は起きないのだけど、人間の欲望や嫉妬って怖いんだなああああ、と実感します。「♪あんなこといいな、できたらいいな」のドラえもんとも通じるかも。