- 葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)/歌野 晶午
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なんとなく純愛小説みたいなタイトルにまず騙されます。そしたら冒頭がいきなり「射精」ですからびっくり。
主人公の「俺」は、テレクラやナンパを駆使しては、毎日女をとっかえひっかえする肉欲の日々。でも心の中では、心と心でつながるプラトニックな恋愛にあこがれています。せっせと白金台のフィットネスクラブに通って肉体美を磨き、長髪にサングラス、仕事はガードマン。両親亡き後、こちらも自由気ままに生きる妹の綾乃と、ふたりで暮らしています。
彼はある日、同じ高校の7つ下のキヨシ(彼は現役の高校生)の片思いの相手=聖心のお嬢様、愛子から、とんでもない依頼を受けてしまいます。車の事故で亡くなった彼女のおじいさんが、実は保険金をかけて殺されたのではないか、それには謎の会社「蓬莱倶楽部」が絡んでいるのではないか、その真相を極秘に探って欲しいというもの。かつて探偵稼業に片足突っ込んだこともある俺は、蓬莱倶楽部の闇を辿っていきます。
そして一方では、ついに、運命の女、麻宮さくらと、衝撃の出逢いを果たすのですが・・・
いやー、まんまと騙された。これはかなりとんでもなくトリッキーな小説なのだった。
昔読んだ筒井康隆の「ロートレック荘の殺人」を思い出しました。
先日読んだ「ラットマン」ともつながるなあ。人間って目の前にあることを正しく見ているつもりでも、思い込みで実は視界にフィルターがかかっている。見えているはずのものが認識できない。見えてないものを勝手に見てしまう。
明かされてみれば、そうだったそうだった、何かヘンだとは思ったんだよ、って言えるんだけど。
日帰り出張の大阪行き「のぞみ」で読んで、帰りの「のぞみ」で思わず最初から読み直してしまいました。
騙されたいという方は、ぜひ。