- The Lost Symbol/Dan Brown
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すっかりメジャー作家になったダン・ブラウン最新作。これも映画化されるのかねえ?
前半はすいすい読めてまあ面白かったんだけど、半分を過ぎたくらい(そう、まさにキンドルで50%の表示を過ぎたあたりから)だんだん「あーまたか」「もういいよー」「今度はどこに逃げるのよー」というウンザリモードになってしまい、飽きちゃいました。
毎度とりあげるテーマが壮大すぎて、最初は「すごーい」と圧倒されているものの、そのうち、大ホラ吹きにつきあわされてる気が勝ってきちゃうんですね。ちょっとあざといかなあ。
今度の舞台はヨーロッパではなく、アメリカの首都ワシントンDC。そして今度のテーマはフリーメイソン。
えーフリーメイソンって何か怪しげな組織なんだよね、という程度の知識しか持ち合わせていなかったけど、おそらく大半の読者がそうなのでしょう。だって、「実はそうじゃないんだよ」っていう解説が綿々と繰り広げられていくわけですから。フリーメイソンのプロモーション小説なのか?と思った瞬間もあり。
フリーメイソンの最高地位にいるピーター・ソロモンは、ラングドンにとって古い友人。ある種父のような存在でもある人です。そんな彼から、ある朝突然、代理で講演をしてくれないか、と連絡が。しかもその日の夜7時からの講演だって。無茶言うよなあ、とは思いつつ、のこのこDCに出かけていったラングドンを待っていたのは、だけどピーターじゃなくって、彼の切断された手首。全身に刺青を施した狂気の男が、ピーターのアシスタントになりすましてラングドンをおびきよせたのでした。彼の目的は、代々メイソンに伝わる謎を、ラングドンに解き明かしさせること。このキチガイ犯人と、おっそろしいCIAのばあさん捜査官(しかも日本人、井上サト)両方から追い詰められるラングドン。そしてピーターの妹キャサリンにも魔の手が迫り、さあ大変。
主人公のラングドン教授は、40代半ばの学者ながら、水泳で鍛えた完璧な体型に端正な顔立ち、ちょっとレトロなファッションセンスと穏やかな性格、独身だから当然女性にモテモテっていう設定なのですけど、どうしたって脳裏をよぎるラングドン像は「トム・ハンクス」なわけで、これが映画化の罪なのですよね。一度「トム・ハンクス」になってしまったラングドン先生は、もう正統派ハンサム(私は「イケメンって言葉がどうも苦手で・・・)には戻れないのです。かといって「ブラッド・ピット」とか「ジョニー・デップ」に出てこられても困るか。うーむ。イメージって大切。読書の喜びは、映像に縛られない、読者それぞれの想像力に負うところが大きいですね。
今回の相手役キャサリンも、美しくて優秀な科学者ですが、年齢は彼より上でほぼ50歳。さーてハリウッド、彼女のキャスティングどうするんだろう。一気に設定を10年以上若返らせる作戦に出そうな気もします・・・
っていうか井上サトの役は中国人女優がやるのかしら。咽頭癌の手術で声がしわがれてるけどタバコをやめない、目が細くてドスの利いた小さなおばあさん。
・・・話が脱線しました。
科学、歴史、宗教、わからないことだらけの私ってバカなんだなあ-ということは、つくづくよくわかった作品でした。キャサリンの研究しているNoetic Scienceっていうのも、最後まで意味がわからないままでした。あとで調べたら日本語でもノエティック・サイエンスっていうんですね。人間の意思が、物質に働きかける、と。なるほど。
でも、そういう要素を取っ払うと、金属探知機担当の警備員とか、警察内部のPCに侵入しようとするハッカーとか、簡単にキチガイにだまされるCIAとか、ラングドンとか、キャサリンとか皆・・・肝心なところ、本質的なところで頭悪すぎないか?と思うことがいっぱい。コメディータッチを取り入れたということなんでしょうか。いやそれは、「トム・ハンクス」のバイアスを受けてるだけ?ますます混迷。