- 山崎 豊子
- 華麗なる一族〈上〉
とうとうドラマ放映が始まってしまいました。とっくに読み終わっている予定だったのが、下巻終盤で時間切れ。
でもやっぱり、小説とドラマとは別物ですね。
ドラマではいきなり丹波篠山の吹雪の場面から始まるという演出に驚きました。ええー、回想という形をとるわけですか。
しかも鉄平と妻・早苗や、芙佐子とのロマンスはドラマ上のサービス?
木村拓哉演じる鉄平は、原作では体が大きく、目がぎょろっとした、男くさい熱い人間として描かれていて、私のイメージだと、
もう少し若い頃の佐藤浩市。亡き祖父に生き写し、ってことで、三国氏にも登場願う、という感じなんですが、ドラマでは「木村君そっくりのおじいさんの肖像画(というか、似顔絵)」が2枚も出てきて、スマスマのコント?と思ってしまいました。音楽やナレーションやセットなどなど、かなり力が入っていることはわかりましたが・・・
それはさておき原作のほうですね。冒頭の「妻妾同衾ばなし」が生々しくてあんまりペースが進まなかったのですが、銀行再編にまつわる息詰まる駆け引きの描写、どんどん追い込まれていく鉄平と阪神特殊製鋼、ってあたりは、さすが緻密な取材を重ねると評判の筆者らしい迫力で、読ませます。上巻を乗り切れば、あとはペースが上がります。(といっても下巻を読了していないけど・・・)
大臣にしても官僚にしても銀行幹部にしても、私利私欲の塊みたいな人ばかりゴロゴロでてきて、こんな人たちに牽引されて戦後日本は栄えてきたのかと思うと、なんとも暗澹たる気持ちにさせられます。
かといって、高邁な理想に燃える鉄平がいいかと言われても、「鉄、鉄、鉄」ひとすじで、技術者としては優秀かも知れないが、経営者としての才覚に欠けすぎやしないか?と冷ややかな私。つまり、作中人物の誰にも共感できないのが痛い。
40年前のお金持ちは、雉だの猪だのを撃ったり、カクテルドレスを着てパーティに出たり、年代物のブランデーを何かにつけて飲んでいたのねえ、と思うと、さすがに隔世の感があります。