卒業のシーズン | 日々、折々…

日々、折々…

折々に浮かびくることをとりとめもなくつづってみました 風の音を聴きながら…




 谷川雁さんが作曲家新実徳英の求めに応じて書いた「卒業」

卒業

紙ひこうき 芝生で とばしたら
折りたたむ かなしみが ひらいた
この 白さは いつまで のこるのか
天山北路の すなふる はなみずき
まどがらすに さよなら 書いたゆび

友おくると 靴ひも 直したら 
いしみちに ゆうぐれが あふれた
なぜ けものの わかさは つらいのか
ポッティチェルリ 生まれ日 しらべてた
水たたえる あの目を わすれない

 この詩は新実徳英さんが書いたメロディに谷川さんがことばをのせるというスタイルで書かれた詩だ 一般的にクラシック音楽における作曲は、詩を読み、そこからインスピレーションを得たり、言葉から音楽を掬い取ったりして音楽にしていくのだが、この場合は逆となる 中国唐代に始まり、宋代に栄えた填詞は楽譜に合わせて文字を填めて歌詞としたので、この塡詞的な詩と言えるのかもしれない
 この詩はことばによる連想チェーンのようだ 紙ひこうき(折る)→折りたたむ悲しみ→ひらく、天山北路すなふる→黄砂→はなみずき→早春、ポッティチェルリはルネサンス期の画家 プリマヴェーラ(春)が有名である それでいて、紙ひこうきで遊んだり、泣いたり…青春というものはもろくて、力強くて、純粋で… 輝いている
 新しいステージに向けて開こうとしていて、ともに過ごした日々は閉じていく 
 ただものではない谷川雁さんの「卒業」である