ある同業者の死 | ハンサムブログ
同業者がガンで亡くなったとの報を受け、通夜へ駆け付けてきた。

私と同じく個人事業者で、一回り以上も年上だが、私如き若輩に対しても恐ろしく腰が低く、私とは大違いの誠実さ、人柄の良さで、
仕事となれば、その誠実さそのままを図面の隅々にまで映し込む事が出来る、私など足元にも及ばない優れた設計者だった。

そんな人柄も、至宝とも言うべき知的財産も、この地球上から消えてしまったんだなあ、本当にもったいない事だなあと、読経の間ぼんやりと考えていた。

そして同時に、真っ直ぐに正直に生きてきたからこそ、苦しみ多き人としての生を少し早めに切り上げさせてもらえたのだろうななどと、柄にもないことを考えていたりもした。

最後にかけて来た言葉は、「どうもお疲れ様でした。ゆっくり休んでください」だった。

私は、いつの日かどんな死に様を見せるのだろうかと考えたとき、今のままのだらしなさでは、老醜をさらした末に死んでゆくにちがいないと恥じ入るばかりだ。

私のパソコンの中にはその方が描いた図面が数点入っているが、今はちょっと開く勇気がない。

しかし、迷いが生じたときの道標として、いつか使わせていただく時が来る事は間違いないです。


本当にお疲れ様でした。
もう締切に追われる事もありませんから、ゆっくり、ゆっくりと、休んでください。