鹿島順一劇団は、所謂泣ける人情芝居も多い。その中でも一番だと思えるのは大江戸裏噺、三人芝居やろう。
粗筋はこうや。金のない若者がうどん屋で無銭飲食。番屋に突き出してくれと言うが、老夫婦は目が悪い人の目ではないと、うどんの屋台の片づけをさせ、家まで屋台を運ぶことでうどんの件は無かったことに。屋台を家まで持って来たら、家で休んで行けと言う。言葉に甘えた若者は家に上がり込む。老夫婦は子供がいない。一度でいいからお父っぁんと呼んでくれと金を渡す。喜んで呼んでやる若者。今度が老婆がおっ母さんと呼んでくれと金を渡す。夫婦は親子としてのやりたいことを若者に金を渡して実現していく。最後に羽数十両あった金がすっからかん。喜び勇んで出て行く若者。しかし玄関先で逡巡する。「なぁ、婆さん。いい経験をさせてもらった。また金をためればええ。」意を決して家の中に戻る若者。「この金を渡すから、俺を息子にしてくれ。」
書きながら涙ぐんでもたで。正直最後の愁嘆場だけ何やが、それまでの芝居が振りで効いている。親の知らない若者に、親の温かさを知らしめた行為。それに気づいた若者はお金より大事なものに気付く。赤の他人が親子になった瞬間、涙腺は崩壊する。
正直今の甲斐文太、春日舞子にこの芝居は出来へんやろう。最愛なる一人息子を失ったのだから。下手したら封印される芝居かもしれん。
ほんじゃ