「前回のお話はこちらから 」
「登場人物のご紹介 」
泣きわめく子供の声に
騒然となった店内。
その席に駆け寄ると
お母さんが必死になって
こどもの腕をおしぼりで拭いている。
テーブルには湯呑が転がり
お茶がこぼれている。
慌ててその子の服を脱がすと
真っ赤になった細い腕が見えた。
「くそー！火傷してるー！」
心の中で叫んだ僕は
その子を抱き抱えパントリーへ走った。
「どけどけ！どけーー！！」
厨房の武田料理長も駆け寄ってきた。
「どうした！やけどか！？」
バシャバシャとはじき出す水道に
腕を突っ込まれ
泣きじゃくる子供を僕は抱えたまま
「お茶がかかったみたいです！」
と武田料理長に答えると
すかさず武田料理長は
ボールいっぱいに氷を持って
「氷だ！氷だ！！」
と子供を僕から取り上げ
「ちょっとだけ我慢だよ。」
「これで大丈夫だからね。」と
やさしくその子に声をかけ
そっと氷のボールの中に腕を浸した。
突然
「ウルトラマンは好き？」
「ウルトラマンはねえ。氷もへっちゃたなの知ってた？」
「これを我慢できたらウルトラマンになれるかもよぅ。」
なんて火傷と氷の冷たさで
痛くてたまらない筈のその子に
やさしく語りかける武田料理長。
見向きもできないその子に
ずっとやさしくゆっくりと声をかけ続ける武田料理長の声に
しばらくすると涙が止まり
深呼吸をしたような空気が流れていた。
少ししてハッとした僕は
応急手当を武田料理長に任せ
パントリーの外で
ご両親と話をすることにした。
つづく
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