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突然の内線で呼び出された僕は慌てて


最も信頼を寄せる池田さんの待つレジへ向かった。


もちろん店内は走ってはいけないので


裏で猛ダッシュをし客席では平静を装って歩くという


傍から見たら滑稽な姿であっただろう。


ただ、その時の僕はそんなことを考える余裕はなく


ただただ「なぜ!?なんで!?どうしてこんなことが!?」


頭の中をめぐりめぐってパニックになっていた。



レジが見えるなり僕はイキナリ


「何があったんだ!?」と叫んでいた。


今にも壊れそうなくらい思い詰めた佐藤くんの顔。


初めてみる池田さんの申し訳なさそうな神妙な面持ち。


僕はその空気を読むこともなく駆け寄った。


2人は初めてみる僕の表情に圧倒されていた。



「すみませんでしたー!僕のせいなんです!」と


佐藤くんの顔が崩れた。


うなだれる佐藤くんの肩を両手でしっかりと支えながら


レジ担当の池田さんがそっと私の目をみてこう切り出した。



「店長。すみません。


泥棒に入られたみたいなんです。」


内線で聞いていた言葉が再び告げられた。



「な。なんで!?


だってみんないたんでしょ!?


レジを空けてないんでしょ!?」


強い口調にも関わらず震えた声の僕に


池田さんはゆっくりと答えた。



「私がマカナイ(飲食店スタッフの食事)に行った時は


佐藤くんにレジを頼んで行ったのでレジにはずっと誰かがいました。


私がマカナイ(飲食店スタッフが食べる食事)から戻って


レジのお金を数えたら30万円近く足りなかったので


佐藤くんに聞いてみたんです。


でも、その20分位の間にお会計はなかったのですが、


その時に外国人が来て両替を頼まれたそうで


どうもそこで盗まれたみたいなんです。」



レジ付近は荒らされた形跡もなく、


両替で盗まれるということが僕には全く理解できない話だった。


「佐藤くんそうなの?」と言う僕の問いに言葉につまる佐藤くんの姿は


まるで記憶がないのか360度霧に囲まれてしまい何もできないでいる様だった。


「佐藤くん。もういいよ。じゃあ、その時の再現をしてみて。」と


佐藤くんにレジに立ってもらいその時のやりとりをそのままやってもらった。


記憶をたどるように佐藤くんはやってくれた。



お食事をされない外国人2人が突然やってきて


1人は防犯カメラとレジをさえぎるように立ち


もう一人は佐藤くんにしきりに外国語で話しかけて両替を迫ったのです。


外国人は1万円を佐藤くんに差し出し佐藤くんは1000円札10枚を渡す。


いたって普通のやりとりがココからとんでもない事態になっていった。



そのやりとりはこう。


外国人がお札にケチをつけシワのないピン札が欲しいと切り出す。


親切な佐藤くんは新札をレジの中から探し始めピン札を渡す。


それでも外国人は「ここの部分にシワがあるからこれはダメ!他のを見せて?」


と切り出し佐藤くんはレジから札束を手に取り


外国人と一緒に探し始めたのです。


そうなったらこの外国人はしめたもので「他のも見せて?」と


ああでもないこうでもないとケチをつける外国人に圧倒された


佐藤くんはそのまま札束を渡してしまったのだ。



からくりはこう。


目の前で佐藤くんと一緒にお札を探すフリをしている外国人は、


佐藤くんに「他にレジにお金ないの?」とレジに気を取らせ


一緒に見ていた札束から佐藤くんが目を離した隙に


その札束からお金を少しずつ盗むというもの。


それを何度か繰り返し


しまいにはやっぱり両替はいいからさっきの1万円返してと言い。


その札束も「コレじゃないんだ。さっきのお札はピン札だっただろう?」と


同じことを繰り返し1000円札の束と1万円札の束からお金を袖もとに抜かれ


見事に30万円弱奪われたのでした。


佐藤くんには「あったよこの1万円札だ。サンキュー!」と言い


残りの札束を返して立ち去ったのでした。


だからポケットの裾に少しずつお札を入れている事に気がついていない


佐藤くんは全て返してもらったと思い


窃盗に気づくのが遅れたのであった。



半ば放心状態の佐藤くんに先を急ぐ勢いで聞く僕を


そおっと押さえながらゆっくりと話を引き出す


池田さんの姿にようやく気づいた僕は少しずつ我に返り、


一年の営業が終わりはしゃいでいる他のスタッフみんなに声をかけた。



「お疲れ様。本当によく頑張ってくれたね。ありがとう!良いお年を!」と


このことは伏せて忘年会の会場である「カラカラ」へ先に行ってもらった。


みんなが必死になって稼いでくれたお金を奪われてしまい、


「本当に申し訳ない!」という意味も込めて。



つづく



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