くずついたお天気の中
なんとか晴れたみたいで
よかったですね
こうやって運動場に立つと
蘇りますよね
自分の時のこと
ぼくは中学時代
大荒れに荒れてまして…
昼ごろに登校しては
給食だけ食べて帰ってきちゃうような
ろくでもない子どもでしたので
お勉強の思い出は
何ひとつ残ってませんが
体育祭の時だけは
水を得た魚のように
元気いっぱいでした
当時は
午前の部午後の部があり
バチバチの応援合戦や
危険知らずの組体操
取っ組み合いの騎馬戦も健在
熱かったですねい!
三々七拍子よーーい!!!
で始まる
応援合戦
危ないから
崩れちゃダメって
あれほど言われてるのに
みんなでせーので崩壊させた
希望の塔
おでこをバットにあてて
10周回って
平衡感覚を失ってから走る
障害物競争では
わざと斜めに走って
場外の女子の応援席にダイブしたり
兜を取られても
乱闘がとまらなかった
騎馬戦の大将決戦だったり
ムカデ競争は
先頭のぼくが
ふざけてずっこけて
ドミノ倒しになりましたねい!
女子のブルマ、昭和を感じます。
逃げ足のはやさで
鍛えられたぼくは
短距離も爆速でしたが
アンカーだけは
なぜかグランド一周
200mも風をきるので
距離がどーしてももたずに
サッカー部に託して
ぼくはスタートを走ります
ぶっちぎりで
バトンをつなぐのが
気持ちよかったですね
ぼくのクラスには
タカヲという男がいました
ちょっと足もおぼつかない
グレーな彼でしたが
幼稚園の頃から一緒にあがってきた
クラスメイトでした
ウチは
タカヲがいるから
どうせビリ
口に出さずとも
みんなわかってたし
クラスの中に
やっても無駄じゃね?て
空気があったのも
否めない
当のタカヲは
そういうことを感じ取れる
タイプじゃなかったので
ただただ与えられたことを
一生懸命やってる
だけで
みんなそれがわかってるからこそ
あきらめモードだったんだと思います
編成を決める時に
一番のポイントになるのが
タカヲの配置だったけど
タカヲの前後に
速い子たちを
二人ずつくらい寄せて
五人ひとかたまりで
フォローしたらどうかという案を
アンカーのシンが提案し
欠員が出た場合や
数が合わない場合は
アンカー以外の人が二回走っていい
という
謎ルールがあったので
それに従って
ぼくの二回目の出番に
タカヲをくっつけることを
自らが提案し
普段は口もきかないような
優等生たちや
バイ菌扱いされてる
おにゃのこたちとも
この時ばかりは一致団結して
作戦を練りました
何度も何度も相談しては
入れ替えて入れ替えて
順番決めをしました
シンにつなぐ前の
アンカー前に
バレー部のトシユキという
これまた速いやつを置いて
その前にぼくが走り
その前をタカヲが走る
男女男女の交互に編成するという
慣例をくつがえして
シンとトシユキとぼくの
三人でアンカーを担うような
打順で挑みました
ぼくは何度も
タカヲとバトンパスの練習をして
右手を低く構えて
おれは一歩もリードしないから
全力でぶっ飛んでこいって
タカヲは
うん、うんて
力強く頷いてました
位置について
ヨーイ パーン!!
ピストルの合図をうけて
ぼくがスタートを走り
トップで走り抜けてから
タカヲにバトンが回るまでは
二位で来たんだったと思います
タカヲが二回目のぼくにつないだときは
圧倒的にビリになってましたが
大きな大きな声援を背中に受けて
タカヲは必死でした
ありとあらゆる
体液を噴出させながら
鬼の形相で
ぼくが待つレーンに
飛び込んで来ました
胸を打たれるほど
本当に必死でした
ここからは
おれらの仕事
練習の甲斐もあり
タカヲからのバトンを
受け取ったぼくは
そこからだいぶ差を詰めて
トシユキにパス
祈るような気持ちの中
トシユキは前を一人捉えてくれて
シンはトシユキが作った
その僅かな差を
200メートル
守りきってゴール
実力以上の力を出せることがあるなら
それはチーム力でしかない
なんとかビリを免れたウチが
まるでトップでゴールしたかのように
大盛り上がりだったのを
とってもよく覚えてます
あとからお袋が
タカヲくんのお母さん泣いてたよーって
運動会ってのは
その名前からは想像できないほど
たくさんの愛と感動があるもんなんだな
先輩らから
自分らの世代に
そして後ろの世代に
どんどんバトンが回され
脈々と受け継がれて
そんなお袋が
今日は弟の子どもである
自分の孫を応援しに行ってて
なんだか感慨深いですね
違う意味で
何度もお袋を泣かせてきた
こんなぼくを見捨てずに
いつも弁当作ってくれて
ありがとうございました笑
⭐︎手の力を侮るな⭐︎
東京千葉でハンドセラピストをしているpinoと申します。見ての通り将来を危ぶまれてたぼくですが、どうにか人のお役に立つお仕事に就いてございます。タカヲも職業訓練学校を経て、地元のパン工場で長いこと勤めているそうです。大丈夫です。人生はどうにかなるようにできてます。