地方自治レベルで政権交代は事実上不可能に近い | 半田伸明のブログ

地方自治レベルで政権交代は事実上不可能に近い

昨日書いたように、人はお尻に火がつかないと動きません。言い換えれば、お尻に火がつくまで動く必要がありません。

では、お尻に火がついて投票に行かざるを得ないほどの重要な争点とは、どんなことが考えられるでしょうか。いわば、政権交代に匹敵するほどの争点があるでしょうか。

まず思いつくのは負担増ですね。上下水道の料金が上がるとか、ごみ回収につき有料の袋を使わされるとか(いわゆる家庭ごみ有料化)、地域によっては公営の交通機関の料金値上げなどが考えられます。

しかし、これらは負担増といっても、せいぜい数百円のレベルです。我慢できる範囲ですね。政権を倒そうというレベルには至りません。私は、三鷹市における家庭ごみ有料化の際に、この現状を思い知らされました。

一時期、多選批判が持てはやされた時期がありました。同じ首長のままで良いのか?という怒りです。

しかし、これもよくよく考えますと、個々人レベルではどうでも良い話なのです。誰が首長だろうが、会社の転勤命令が出たら引っ越すのです。持ち家はあるが、転勤で家を貸しているなんて例ざらにありますね。自分の生活の範囲で全てが完結する場合、すんでいるまちのエライさんが誰であろうがどうでも良いのです。ひょっとしたら、首長の名前を知らないケースもあるかもですね。そりゃそうですね、覚える必要なんてないですもんね。

多選批判というものは、長く権力者の座にいたものを引き摺り下ろすという、いわば権力をめぐる御家騒動レベルに過ぎないのです。ここでいう御家とは、与党とか野党とかそういう概念ではなく、権力に接している次元が個々の住民より近いと言う意味です。

「あいつは長く権力者でいすぎなんだよ。少しは俺たちの方にもやらせろよ。でないと権力腐るだろ?」…もっともですが、まぁ個々の住民の皆さんには関係ないですよね。勝手にやれば?で終わりです。前回の埼玉県知事選では、自ら多選に一線を画したはずの方が、再度返り咲くというのに低投票率のままなのです。まぁ、多選批判なんてこんなもんです。

財政の悪化はどうでしょうか。「こんなに借金が増えた!」は確かに論点になりそうです。
しかし、財政の悪化も、個々人レベルから考えるとどうでも良いことです。いつ引っ越すかもわからない、別にどうでもいいじゃん、というわけです。地方の場合、引っ越す云々は確かになさそうですが、借金が増えたおかげでこれだけ生活が不自由になったというのは、ちょっと考えにくいですよね。先ほど料金の値上げを書きましたが、数百円レベルなら大して見向きもしないでしょう。

医療や介護の条件がよりきつくなる場合は、どうでしょうか。これはインパクトありそうですね。なんといっても自分自身の「今」に降りかかることでもあります。

しかし、これは自治体レベルではどうにもならないことが意外に多く、不利であろう現職側がきちんと国庫負担の説明などをきちんとすれば、さほど争点にならないでしょう。

いかがでしょうか?
政治に関心があり、普段から選挙に行くから「こそ」多くの論点が見えてきて、「これは問題だ!」と沸騰しやすくなり、その沸騰状況を大多数の住民が横目に見ながら、もしくは気づくことすらなく、自治体レベルの権力者は決まってしまう現実は、やはり否定できないのです。

このように見てくると、権力者が権力の座を降りざるを得ない場合は、極端に言えばなんらかのスキャンダル以外考えにくいということになります。しかも、この手のスキャンダルは通常ではまずありません。なぜなら、ある場合はすぐにマスコミが報道するでしょうし、だからこそ住民の目に止まりやすくなり、権力の座を追われやすくなるからです。「どこから」情報が入ってくるのかというのも、大きな要素になってきますね。

このように、自治体レベルでは、政権交代はまず発生しないと見て良いでしょう。国政と異なり、自民・公明・民主の大連立状態の自治体議会は、それこそ数多くありますし、こういうところならなおさら政権交代はないですね。

こうなると、権力の座はどのように移るのかについては、答えは簡単ですね。

「禅譲」しか考えられないのです。多くの自治体の首長選挙で、権力者が次を後継指名することがよくありますよね。まさにあれです。

自治体レベルでは、権力者の地位は、特定勢力により固定化され、脈々と続いていくというわけです。しかも、このことにより、多くの住民には特段問題がありません。そもそも「たまたま」その時期に住んでいただけなのかもしれません。

自治体レベルで、権力者側は「税を取り使う側」です。一方、納税者は「税を支払う側」です。

つまり、国政と異なり、自治体レベルでは、権力者と納税者は、それぞれ別世界を形成しており、いわば2つの社会を形成しているわけです。国政選挙と異なり、自治体レベルの選挙の投票率が軒並み低いのも理解できますね。

改めて思いますね。
地方自治は民主主義の学校なわけないですって。