「後刻どう見られるか?」の発想がない権力者で大丈夫なのか? | 半田伸明のブログ

「後刻どう見られるか?」の発想がない権力者で大丈夫なのか?

広島の豪雨災害は死者が出てしまう事態となりました。犠牲になられてしまった方に、ご冥福を祈るばかりです。

未明からのニュース配信を眺めていましたら、興味深い時間の流れである事がわかりました。いくつか紹介しましょう。

<6時25分配信>
広島市 子ども1人心肺停止で発見(NHK)

<6時28分配信>
土砂崩れで3人死亡=2歳男児ら、生き埋め十数人―大雨、複数箇所で・広島(時事通信)

<8時13分配信>
首相動静(8月20日)(時事通信)
安倍さんは7時半前にゴルフ場に到着し、9時過ぎまでいらっしゃったことがわかりますね。

<9時29分配信>
安倍首相、ゴルフ中断し災害対応=静養先から官邸直行(時事通信)

最後に紹介した記事から一部引用しましょう。

(以下引用)
夏休み中の首相は同日午前7時30分ごろにゴルフ場入りし、森喜朗元首相、茂木敏充経済産業相らとプレーを開始。被害拡大を受け、約2時間後に途中で打ち切り、いったん近くの別荘に戻った後、官邸に向かった。 

こういう経過だったようです。

※13時時点でなぜかこの記事が削除されていますね。
こちらに変わったようです。
ゴルフ中断し災害対応=静養先から官邸直行-安倍首相

つまり、6時半の時点で、土砂崩れで死亡者が発生したニュースが流れた「後に」、7時半あたりからゴルフを始め、被害拡大でゴルフを中断という流れのようですね。

捉えようによっては、6時半の時点で死亡が確認された時点では、さほどの被害でもないと判断したからゴルフだったのか?と批判される余地を残している事になります。

人が亡くなっているのにゴルフかよ、と避難するのは簡単だし、一方で連絡体制がしっかりしているならゴルフしても良いじゃんという考えもあるでしょう。事実、報道によると、被害拡大を受けゴルフ中断とあるのだから、後者の考えも成り立つといえば成り立ちますね。

しかし、紹介したような時間の流れを見ると、6時半の時点での死亡者確認はたいした被害と思っていなかったとの批判は、やはり回避できないでしょうね。

ここで考えておきたいのは、ゴルフの是非という話ではなく、「政治家自身の自己を守る危機管理」という話です。

考えられる選択肢を並べてみましょうか。

1)6時半の時点での報道が、安倍さん本人が見ていなかったか又は側近からの連絡が入らなかった。
2)6時半の報道の時点で事実を掌握していたが、ゴルフをしてもかまわないと安倍さんやもしくは側近が判断した。

このどちらかになるでしょうね。

まず、1)のケースなら、これは大変な問題です。情報が上に回らない体制である事を明らかにしているようなものであり、これは安倍さんは裸の王様ではないかと批判されても仕方がありません。

では、2)の場合はどうでしょうか?これはこれで問題でしょうね。6時半の時点での報道では、たいした被害ではないと考えましたと説明せざるを得ないからです。

1)か2)か、これは真実は当事者でないとわからないですね。もっとも、後刻一定の説明をせざるを得ない事態は発生するわけです。

このように見てみると、安倍さんや周囲の方は、後刻どうとられるかの発想があまりにも足りなかったと言えるのではないでしょうか?

私はここが不思議で仕方がないのです。普通なら、6時半の報道時点で、様々な今後のストーリーを頭に思い浮かべることでしょう。当然ゴルフは中止とするでしょうね。そして、いち早く動いている様子をあえて「見せる」かもしれませんね。これは取りも直さず後刻攻められずに済むようにという発想です。

つまり、安倍さん自身の「どう見られる事になるか?」という「自身の」危機管理対策が余りにもなっていないのです。脇が甘いというレベルなら以後気をつけるで済むかもしれませんが、情報伝達システムの瑕疵なら取り返しがつかないですね。そう思われても仕方がないというところに、頭が働かないなら、もはや権力者として失格ではないでしょうか。

今まで書いてきたのは、ゴルフの是非の問題ではないのです。「自分の行動が第三者にどう映るか?」の発想から来る「安倍さん自身の」危機管理対策があまりにもなっていないことに、疑問を感じ、不安を覚えるという話なのです。

もっとも、官邸の記者会見によると、指示は出していたようですね。

とはいえ、Twitterを始めとして、記者会見「前に」ゴルフ批判はお約束のように出てくるわけです。

ここで考えたいのは、後刻弁解コストという発想です。

6時半の時点で中止したと見せる姿勢と、後刻の記者会見で弁明するのと、どちらがコストをかけずに済むでしょうか?どちらが権力者として相応しいと国民が思ってくれるでしょうか?

私が言う、安倍さん自身の危機管理とはこういうことなのです。

後刻発生するであろうストーリーを事前に想定し、かつ展開を考慮し、どの選択肢が「政治家として見られるのに適切で、かつ後刻弁解コストを発生させずに済むか?」の発想がない権力者で大丈夫なのか?という疑問を感じたのは、私だけでしょうか?