なぜ議会改革は進まないのか? | 半田伸明のブログ

なぜ議会改革は進まないのか?

昨年11月に国会改革の話題がありました。いくつかニュースも出ましたね。各党言い分はあるでしょうが、ぜひ続けて頂きたい取り組みです。

国会改革については、次の文献をどうぞ。
国会改革の軌跡ー平成元年以降ー

さて、地方議会の世界では、議会改革は主要なテーマにようやくなってきたという感じです。会津若松市議会は、私がいる業界では誰もが知っている、議会改革の先頭集団の1つですね。

私は、議会改革について考える、とある会議体の運営委員をやっていますが、様々な先進例を目にして刺激を受けつつ、一方で、進まないところはなぜ進まないのだろう?ということを、ここ数年ずっと考えてきました。

議会改革(以下は国会改革も含むものとして進めます)は、議会そのものに関わる事項ですから、多数決で決めてしまうやり方はよろしくないですね。かならず少数派のしこりが残ってしまいます。ですので、私は全会派一致が原則だろうと考えています。

ところが、この全会派一致というのも、実に面倒で、なかなか思うように行きません。1つでも反対の意思表示をしたら、もう進みませんもんね。

私は以前は、なぜこんなことも改革できないんだ?というように、反対の意思表示をしたところを見るようにしていました。まぁ、議会改革に熱心だからこそ、納得してくれない議会・議員に否定的な視線を送ってしまうのは無理もなかったなぁと、今思っています。

しかし、ここ1~2年の私は、同じ現象が起きても、あぁそっすか、はい終了、と冷めた目で見るようにしています。三鷹がというよりは、全国の様々な事例を見て思う事ですね。怒りもなければ喜びもない…。

というのは、改革が進んでいる事例に共通項があると考え始めているからです。

そもそも、全会派一致で進める改革というのは、それをしたくない人がいる限り、進まないわけですから、そのことを改めて考えてみますと、現状のままでよしという場合は、そりゃぁ進まないわな、という至極当たり前の事に気付いたのです。

このパターンは、例えば(政党問わず)与党と言われる首長を支える組織が大多数で、その大多数が首長と組んでいるケースですね。確かに、自分の身を置き換えて空想しても、このパターンは改革しにくいでしょうね。だって、かえる必要性がないんですもん。

逆に、いわゆる少数与党のケースは、どちらかというと、多数派説得の材料としての議会改革という側面があるようですね。これはこれで興味深い現象です。

では、改革が進む時はどういうケースが多いのか?
これもずっと、悩んでいたのですが、あるとき「人はお尻に火がつかないと動かない」というのをたまたま目にして、思わず「あっ」と思ったのです。

議会改革が進むのは、まさにこのパターンではないでしょうか。
いくつかケースが考えられます。

<ケース1…権力者交代>
選挙で権力者たる首長が交代したら、今までの安定が崩れるわけですから、野党扱いに転落した会派が主導権を握るべく、議会改革を武器に、真に二元代表制を確立する、という変化の中で進むというパターンです。

<ケース2…財政難>
議会費といってもいろいろありますが、ぱっと思い浮かぶのは、委員会の視察費、そして政務活動費(前の政務調査費)でしょう。
特に後者は、いわゆる渡しきりのケースが多く、必要性があり決裁を取って事後振込というのはほとんどないでしょうから、これを削られると痛いでしょうね。だからでしょう、政務活動費が第二のお財布という批判が出てくるのも。まぁ、致し方ないかなと。
行政側が削りに削っているのに、議会は何も協力してくれない、もうお金がないから削減となったら、これは議会は黙っちゃいないケースはあり得るでしょう。

<ケース3…逐一新聞で知らされる>
ある自治体議会で、議員定数削減についての請願を出したところ、その議会がさくっと否決した事が、とある地方紙で記事になり、その地域の各自治会の怒りに火をつけ、いわば「つるしあげ」をくらい、一気に改革が進んだ例があります(自治体名は伏せておきます)。

この3つのケースの事例は、ある程度目にしてきました。新たな事例を目にするたびに、だんだんと自分の中でイメージができて行って、最終的には上記3つのパターンが多いなと感じているところです。

この3つのパターンに共通するところは何か?
それが先ほど書いた、「人はお尻に火がつかないと動かない」ということなのです。

居心地が良い状況なのに、無理してかえる必要はない。
居心地が悪くなれば、変えるしかない。

結局、議会改革って、ここに行き着くんですよね。

国会であろうが、地方議会であろうが、なかなか改革が進まないのなら、反対派を無理して説得して、納得させて進めようという次元を脱して、あぁうちは改革できないところなんだなと開き直るしかないんですよ。

もちろん、改革が進まない責任を問う必要はありますね。特に議長が、議長就任挨拶の際に、議会改革をやると表現しているケースはまさにそうでしょう。

答えは簡単で、反対派の議員というより、まとめきれない議長に責任があるのです。ましてや、反対している会派から議長を出しているケースはなおさらですね。「おいおい、自分のところもまとめられないのか」となりかねないわけですから。

なぜ議会改革が進まないのか?
議会改革に熱心な議員の間で、もう何度となく繰り返し論じてきたテーマです。

簡単な話なのですよ。

「人はお尻に火がつかないと動かない」のなら、どうやってお尻に火をつけるかを考えるしかないのです。

ここで改めて、先ほどのケースをご覧下さい。
いかがでしょうか?

実は問われているのは、政治の枠組みそのものと言っても、過言ではないのです。
議会に支えられている首長が議会費削減をする、権力者が交代する…政治が正面から問われる場面ですね。

このように考えると、実は議会改革とは、政治そのものの場面と言って差し支えない問題であり、そうそう簡単に進むものではないという結論になります。

残念な結論と言われればそれまでですが…。近時の私はこの境地に辿り着いてしまったのです。