コミュニティ創生プロジェクトの名で、国のお金で駅前wifiを整備するのはおかしい | 半田伸明のブログ

コミュニティ創生プロジェクトの名で、国のお金で駅前wifiを整備するのはおかしい

総務省がITで町おこし、というニュースが流れました。
「ITで町おこし」支援 総務省、観光・農業向け

ニュースをご覧頂ければお分かりの通り、三鷹市も選ばれました。三鷹市のような東京にある自治体で、ITで町おこしと言われても、ピンと来ませんね。

実は、今までに至るまで、以下のような経過があります。長くなりますが、ご紹介します。

まず、2012年12月議会で、三鷹市議会の総務委員会というところで、行政報告がありました。
【2012年12月議会 総務委員会】行政報告。企画部。総務省のICT街づくり推進事業
このツイートの中にある委員会配布資料は、こちらになります。

総務省のICT街づくり推進事業という報告だったわけですが、その時の委員会議事録を見ますと、次のようなことがわかります(三鷹市議会の会議録検索のページから探すことができます)。

・三鷹市コミュニティ創生プロジェクトとして採択された。
・委託金額の上限は約9595万。
・まちづくり三鷹が受け取って、三鷹市はまちづくり三鷹と協働というスタイル。

さらに次の部分を引用しておきましょう(以下引用)
「ICTを活用した街づくりとグローバル展開に関する懇談会、これは総務省が設置をいたしました大臣懇談会でございますが、こちらのメンバーに清原三鷹市長がメンバーとして選ばれております。また、この懇談会での具体的な議論の具体化を図るためにこの懇談会をもとに推進部会という部会が設けられまして、こちらのほうには河村副市長が参加をしておりました。」(引用終了)

この時は、駅前wifi整備の議論がありました。その部分も引用しておきましょう(以下引用)
「三鷹駅南口の広場に、いわゆるWiFi、公衆型の無線LANが使える空間を整備をするということでございます。御案内のとおり3・11の地震の際も携帯電話等が非常につながりにくくなるというような状況が発生をいたしました。この携帯電話、音声系の通信が難しくなった場合にインターネットでの情報のやりとり、こちらのほうは比較的通信がしやすいという特性がございます。こういう災害時にも通信ができる手段を一定確保するというのが重要であるという観点から、この駅前地域の公共空間でのWiFiを利用可能にするような取り組みをしていくというもの」(引用終了)

さらに、3ヶ月後の、2013年3月議会の総務委員会でも行政報告がありました。
【三鷹市議会 2013年3月議会 総務委員会 行政報告 企画部3】ICT街づくり推進事業(総務省)の進捗
このツイートの中にある委員会配布資料は、こちらになります。

この時の議事録から次の部分を引用しておきましょう(以下引用)
「平成23年度に策定をいたしました三鷹市の地域情報化プラン、この中でも、例えば誰もがどこでも通信環境が維持できる、そういう環境の整備ということで政策を位置づけをしている。これがWiFiにつながってくると、そういうところがございます。それぞれ一つ一つここでは述べませんが、このような取り組みは基本的には地域情報化プランの中で位置づけもされ、これを実施をしていきたいということで整理をしたものでございますので、そのように御理解いただきたい。」(引用終了)

さらに、直近では、先月の2013年12月議会の総務委員会における行政報告があります。
三鷹市議会 平成25年第4回定例会 総務委員会 行政報告資料 企画部 ICT街づくり推進事業(総務省)への応募
このツイートの中にある委員会配布資料は、こちらになります。
※この時の委員会議事録はまだアップされておりません。

以上が、過去の流れです。

私は、このような総務省の事業に三鷹市が手を挙げたこと自体、おかしいと考えているのです。以下、いくつかにわけて書いてみましょう。

<代打俺>
まちづくり三鷹とは、要は官が作ったまち会社のようなものです。
実は、まちづくり三鷹の代表取締役会長は、河村副市長なのです。こうなってくると、まちづくり三鷹と三鷹市の協働といっても、実際のところ、市長と副市長がやっているようなもので、ともに権力者であることを考えると、まさに「代打俺」に等しい状況なのです。代打俺状況で協働と言われてもピンと来ませんね。

<総務省の懇談会に参加したら選ばれるのか?>
上記引用にある通り、総務省の懇談会に三鷹市からは市長と副市長が参加していたわけです。懇談会に参加したら、1億円近いお金が三鷹市に入るのか?と思われても仕方がないですね。総務省の要請で懇談会に参加させられたと仮定しても、いわば利害関係者として、手を挙げるのを遠慮するのが筋ではないでしょうか。

<なぜ国のお金で三鷹駅前wifiを整備するのか?>
総務委員会では、帰宅困難者の議論もあったようです。なるほど、帰宅困難者は確かに東日本大震災当日に大変なことになりました。
しかし、三鷹駅周辺よりも、例えば新宿など、都心の方がもっと大変だったのではないでしょうか。
三鷹市コミュニティ創生プロジェクトとして出したとしても、実態は駅前wifiを国のお金で整備したかったのではないか?と思われても仕方がないかなとさえ思います。
本来、駅前にしろ、どこにしろ、wifi化するなら、そのことにより利益を得るであろう方々が整備をすべきであり、いくらコミュニティ創生とお題目が良くても、駅前wifiを国のお金で整備するというのは、やはりおかしいと思いますね。民間資金でやるのが筋でしょう。
地域情報化プランというのは言い分としてはわかりますが、「三鷹市の」プランである以上、国のお金を使うのはやはりちょっとなぁ…という思いがしますね。「ITで町おこし」とは名ばかりで、実態は一自治体の地域情報化プランの手助けにしかなっていないという評価すら可能でしょう。

<気がついたら既得権益化?>
平成25年度 ICT街づくり推進事業 実施要領

提案主体の部分を見ると、24年度に実績を有するとのことなので、要は入口部分で掴んだら、既得権益化しかねないですね。

入口部分で、総務省の会議メンバーになるなど明らかにアドバンテージを有していた三鷹市が、委託先として選ばれ、しかもそれが継続するってなんかおかしくありませんか?
総務省との距離がどれだけ近いかで、結果として市の財源が潤うか否かが決まるというのは、私はおかしいと思いますよ。

以上、いくつかに分けて疑問点をまとめてみました。
別エントリーで書きましたが、私は2025年あたりまで景気下降サイクルが続くという見方です。
また、行き過ぎた行政国家現象を考えると、脱官僚というのは無理だという考えです。真に求められるのは、何に対し税を使うべきか?のメルクマールであり、それを示すことこそ政治がやらなければならないことだと思うのです。

ITで町おこしというのは、「民の生きるを守る」に直結するほどの必要なことでしょうか?そうは思えませんね。なければないでいいのです。先ほど紹介した委員会配布資料を見ると、高齢者のこととかもっともらしいことが書かれていますが、そもそもITが完備されなければ見守りができないという方がおかしいのです。

行き過ぎた行政国家現象、そして「歳出圧力」という言葉すらあるように、税を使う側の論理で政治家が考えている限り、ムダ削減はできないでしょう。結果として、様々な委託金ないし補助金が霞ヶ関から設定されるわけです。

景気下降サイクル内にあることを考えると、真にこの国を生き残らせる為には、「不要なものは不要」と、地方の側から国にもの申すことが必要なのです。国や都道府県の補助金に目を光らせ、取れるものは取るという発想は、所詮は自分の住む自治体のことしか考えていないレベルが低い考えであり、国全体のことを考えると、全く逆の発想で考えることが必要な時期だと思うのです。

この記事の冒頭に紹介した日経の記事は、あまり話題になっていないようですが、三鷹市議会で働く者として、この委託事業に手を挙げたこと自体、自己満足レベルに過ぎず、真に国の将来を考えているとは思えないという考えをまとめたいと思い、今回の記事にしました。なお、私はこれら3回の総務委員会においては、厚生委員会、そして後に文教委員会と変わっており、総務委員会には所属していなかったことを付け加えておきます。

国政レベルで歳出圧力が高まり、地方は地方で国から取れるものは取るという発想が蔓延すると、ひょっとしたら我が国の財政破綻はもっと早くにやってくるのかもしれませんね。