議長が有する権限の範囲で、どこまで議事録を削除できるのか? | 半田伸明のブログ

議長が有する権限の範囲で、どこまで議事録を削除できるのか?

6月の三鷹市議会における一般質問で、私の質問に対し、清原慶子三鷹市長が「質問内容を訂正し、議事録から削除して頂きたい」と発言しました。一連のやり取りは前回のブログ記事をご覧下さい。新聞記事にもなりました。当該記事のURLも前回のブログ記事に載せています。

清原慶子三鷹市長による、質問内容訂正及び議事録削除要求に対し、半田伸明が思ったことは?

これをご覧になられた方は、事態の推移につき把握して頂けたと思います。

議会の最終日の25日に、会議を閉じた後、各会派代表者会議が開かれました。この件については、最終的な判断含め幹事長一任としましたので、私は幹事長が戻るのを待っていました。幹事長が戻られた後に、どうなったか結果を聞きました。

結果を書く前に、半田の質問の動画の紹介をしておきましょう。こちらになります。

この動画の33分32秒から34分15秒までをご覧下さい。次の様なやり取りになっています。

(清原慶子三鷹市長発言)
私は今の質問のお手盛りなどというのは、質問の内容をこの場でしかるべく訂正していただき議事録から削除していただきたいと考えております。

(半田発言)
質問に答える立場の方がですね議事録を削除してくださいって、それはないんじゃないですか。皆さんどうですか。私はちょっとびっくりしましたね、今の答弁に。お手盛りかどうかという質問をしているんです。お手盛りじゃなければお手盛りじゃないと答えればいいだけの話。それは意味があると思いますよ、その答弁は。お手盛りだと答えるんであれば、それは話はまた別になりますけども。議事録削除云々ではなく…

結果としては、これらが全削除となってしまいました。

もともと、直後の議長室でのやり取りは、お手盛りという言葉を削除云々というやり取りでしたので、お手盛りという言葉は残ったという意味では、議長は態度を変えてきたことになりますね。

ところが、実は、この件で市長から発言取り消しの話はなかったということでした。議事録削除云々の部分を取り消したいと言われたならまだわかるのですが、そうではないというのですから、いわば、一連のやり取りを、後刻議長が「削除すべきと思ったところを削除」するという結果になるわけですね。

発言の取り消しや訂正は、実は結構よくあるのです。例えば、数字の言い間違えだったり、事実誤認だったり、まぁ本会議場というのは、いろいろとおこります。後刻精査するのはわかります。

しかし、それらはあくまで、「間違い」であることが前提だと半田は考えているのです。ここで改めて、上記のやり取りをご覧下さい。

間違いと思われる様な単語はありますか?ないですよね?

つまり、単純な間違いか否かではなく、「相応しいか否か」で判断されてしまったと指摘されても致し方ないというわけです。

私は、全て議事録で残るか、もしくは削除されるとしても議長室で言われたように、お手盛りという質問そのものが完全に消されるか、どちらかになるだろうと思っていたので、こういう結論になるとは思いませんでした。事前にそうなるかもという話は何となく聞こえていたのですが、まさか本当にそうなるとは…。

まぁ、議長や議長を支える議会事務局の方達の気持ちもわからなくもありません。お手数をかけてしまったことは事実ですので、最終的に幹事長の報告を「そうですか」と聞いて受け止めました。ですので、この措置に異議を唱える気はありません。唱えようがないですよね。議長の権限を行使されてしまうわけですから。このような形が一番良いだろうとお考えになられた上での結論を出されたのでしょう。ご努力頂いたことには感謝申し上げたいと思います。

しかし、今回の件は、新たに大きな問題を発生させたのではないか?と考えています。
考え方としては、2つあるのかな?と思いました。

<1つ目>
市長の発言は議会への侮辱であり、頭にきた議長が権限を行使して削除するという構成。

<2つ目>
市長から取り消したい旨の申し入れがないのに、議長が権限行使で勝手に削除するのはおかしい。

我らが幹事長は、後者の考えで代表者会議にて主張したが、結果として議長権限行使となったというわけです。

議長は、1つ目の考え方だったんでしょうかね?もし、そうなら直後の議長室で、お手盛り云々のやり取りを削除と話はしなかったでしょうね。1つ目の考え方なら、議事録削除云々の部分を削除とおっしゃるでしょうから。というわけで、1つ目の考え方であると断定するのはできないなぁと考えます。

となると、2つ目の考え方になるのかな?とぼんやりと考えているところです。

確かに、議事録の整理については、最終的には議長に権限があるのですから、今回の決定は、不当な処理とは言えないでしょうね。

しかし、大きな問題を残してしまったのではないでしょうか?

と言いますのは、2つ目の考え方を押し進めると、実は「実質的には市長発言の救済」と考えられなくもないのです。いや、勘違いしないで下さいよ。そうだろ!と決めつけているわけではないですから。とはいえ、「第三者にそのように受け取られてしまうのではないか?」という問題提起は、やはり否定できないなぁ…と考えるのです。
この観点からは、今回の議長の決定は、不適切であるという結論になるでしょうね。このように、いくつか構成が考えられるわけです。

皆さんは、どのように思われますか?
ただの「間違い」ではなく、「相応しいか否か」で議事録から削除する決定を下したと思われても仕方がない今回の結論に関して、「議長の有する議事録の整理権とは、形式的な修正でとどまるべきか?」それとも「内容にまで踏み込んでいくべきか?」については、今後大きな議論を呼ぶのではないか…そんな予感がするのです。

私は、今回の議長の決定を受け入れるつもりです。正確に言えば、受け入れるしかないわけです。権限の行使ですからねぇ…。

しかし、内容の適否にまで踏み込んで削除の可否を決定するというのは、一歩間違えれば、実は検閲に限りなく近い事態を招きかねないわけで、ここを真剣に心配しています。三鷹市議会の今回の件を、きっかけに、各地方議会で同様の例が続発しないことを真に望みます。

なお、先ほど紹介した動画のURLは、一定期間が過ぎたら削除されます。動画は公式な記録とはされていないからです。
公式な記録としては、議事録となりますね。
議事録には、削除された「後」のものしか残らないわけです。そして、動画は消え去っていく…。

怖い時代になったなぁ…との感を拭えません。

最後に、今回の件でお手数を取らせた議長、議会事務局に感謝の意を表すとともに、ご心配下さった方へ、心から感謝申し上げたいと思います。