清原慶子三鷹市長による、質問内容訂正及び議事録削除要求に対し、半田伸明が思ったことは? | 半田伸明のブログ

清原慶子三鷹市長による、質問内容訂正及び議事録削除要求に対し、半田伸明が思ったことは?

今朝、東京新聞が報じた内容につき、お問い合わせを頂いております。ブログにまとめておきましょう。記事はこちらです。
市長が議事録削除要求 三鷹市議会質問で「お手盛り」発言

三鷹市議会は、平成25年第2回定例会の真っ最中です。先日、各議員による、市政に関する一般質問がありました。
私は、「聖域なき人件費改革を断行すべき時が来ている。トップが率先して人件費についての考え方を再度構築すべきである」という主張である旨、事前に通告して、「人件費削減のあり方について」質問をしました。

具体的には、次の2つの質問でした。
(1)市長、副市長、教育長の退職手当について
(2)部長以下課長補佐までの管理職職員の処遇のあり方について

まず、前者についてです。
今年の3月の定例会で、職員の退職手当の引下げが決まりました。一方、市長・副市長・教育長の引下げはなされていないという状況です。
「下は削るが上は削らないというのは理解し難い。引下げすべきと考える」と述べ、所見を伺いました。
「考えていない」との答弁でした。
残念ですが、三鷹市の場合、下を削るが上は削らないということになるようですね。

次に、後者です。
清原慶子さんが三鷹市長になって10年経過しました。前市長の最終年度は平成14年度ということになります。
なお、直近の決算は、平成23年度ということになります。

14年度と23年度を比較して興味深いことがわかったのです。比較した資料は、決算審査特別委員会の参考資料です。

年に1度、決算審査特別委員会が開かれます。その際には、予算執行実績報告書をはじめ、多くの資料が行政から出されます。その中の1つに、参考資料があるのです。

この参考資料の中に、「三鷹市職層別給与月額調査表」というものがあります。この表は、端的に書きますと、部長職が何人います、課長職が何人いますというもので、さらに、基準内給与という欄に最高でいくら、最低でいくら、平均でいくらという数字が載っています。

まず、前市長の最終年度である平成14年度時点ですが、
部長職…17人。基準内給与平均…732,485円。
課長職…59人。基準内給与平均…685,250円。
となっています。この時期は、期末勤勉手当(要はボーナスですね)が4.65ヶ月で計算されていました。つまり、一年で貰うのは、12ヶ月分+4.65ヶ月分ということで、16.65ヶ月で考えることになりますね。
これで計算しますと、
部長職に支払った金額…基準内給与平均732,485円×16.65ヶ月×17人=2億732万円
課長職に支払った金額…685,250円×16.65ヶ月×59人=6億7315万円

となるわけですが(平均値で算出)、一方、直近の23年度の場合は、どうなるかと言いますと、不思議なことがわかったのです。

23年度ですが、
部長職…21人。基準内給与平均…688,663円。
課長職…73人。基準内給与平均…647,344円。
となっています。23年度は、期末勤勉手当が0.7ヶ月下がって3.95ヶ月になっています。先ほどの16.65のところが15.95となるわけです。
同じように計算しますと、
部長職に支払った金額…基準内給与平均688,663円×15.95ヶ月×21人=2億3066万円
課長職に支払った金額…647,344円×15.95ヶ月×73人=7億5373万円

もうおわかりですね。
給与の平均が下がっている、ボーナス支給の月数も減っているはずなのに、14年度と比べて、部課長職に支払う金額増えている実態があるのです。
14年度と23年度で比較しますと、
部長職…2億3066万円-2億732万円=2334万円の支出増
課長職…7億5373万円-6億7315万円=8058万円の支出増

つまり、部課長職に支払う人件費が、1億円を超える支出増となってしまっているわけです。

この原因は、部課長職の人数増加に起因していることは、はっきりしていますね。
では、その増加分、ポストの数が増えているのでしょうか?

決算審査特別委員会の参考資料には、「三鷹市職員数調査表」というものもあります。ここには、部単位そして課単位の職員定数等が載っています。ここを見ると、部・課の数は実はさほど変化がないことがわかります。市長部局についてみて見ると、部の数は同じだったりします。

つまり、平たく言えば、ポストの数はさほど変化ないのに、部長職が4人、課長職が14人増えてしまっているわけです。この増により、先ほど書いた1億円近い人件費支出増となってしまっていると考えることは十分可能なのです。

私はこのことが不思議でした。常識で考えたら、一部長一課長体制が当たり前ですよね。ところが、三鷹市の行政組織は、1つの部に3人部長がいたりするのです。

なぜ、このような実態になってしまっているのでしょうか?これは、とどのつまり人事のあり方にかかわってくるのです。1つ例を出してみましょう。

保育園の園長についてです。三鷹市立保育園処務規程というのがありまして、そこでは「園長は、係長相当職とし…」となっているのですが、なぜか課長職の園長がいたりするのです。

人事というものは、人事権を有する者がどう考えているかが全てです。そこで、私は一般質問の場で次のように質問しました。

「三鷹市は条例で給与を決めているが、組織の運用において部長・課長を組織数以上に作ることで実際は、給与の底上げを図るお手盛りと言われても仕方がない運用ではないのか?役職加算及び部長・課長の人数を見直すべきだ」

この時点で残り時間は後わずかでした。私は「お手盛りではない」と答弁するものと信じきっていました。そりゃそうでしょう。自分でお手盛りというわけがないし、また理由があってこういう措置をしているのでしょうから。

「お手盛りではない」と答弁が来たら、「とはいえ支出増であり、行財政改革の観点から管理職手当のより一層の削減を望みます」と述べて、終わりにするつもりでした。

ところが、ここで事態が急に動きました。清原慶子三鷹市長が、お手盛りという半田の質問内容の訂正を求める、そして議事録から削除するよう、答弁したのです。

正直に白状しますと、この瞬間私の頭は真っ白になってしまいました。先ほど書いた締めくくりの言葉が言えない事態となってしまったのです。

そこで、「質問に答える立場の方が議事録削除というのはどうなのか?」という苦言を呈しました。これらのやり取りは、この動画をご覧下さい。30分20秒あたりからです。

一般質問が終わった議長が休憩を宣言しました。私は議長室に呼ばれました。そこで、お手盛りというのは不適切という話があり、議長の権限で議事録から削除という話の通告を受けました。

市長が議事録からの削除を求め、議長は議事録からの削除を通告する…私はびっくりして、ついついTwitterで愚痴ってしまったんですよね。そして、その愚痴をtogetterでまとめておいたのです。

Twitterで相互フォローして下さっている方が紹介して下さったこともあり、このtogetterは、作成後あっという間に4桁を超える方が見て下さり、このブログ記事をまとめている時点で、7800人を超える方にご覧頂きました。

首長が「質問内容訂正しろ」「議事録から削除しろ」という答弁をする事態って、二元代表制から見るとどうなんすかね?
http://togetter.com/li/514491

二元代表制については、こちらをどうぞ。図解もあってわかりやすいですね。
首長と議会が、相互抑制と均衡の関係であることが最大のポイントですね。

先ほどのtogetterはいろんな方に見て頂けました。そして、東京新聞さんから取材のお申し出を頂きました。そして、今朝、多摩版ではありますが、記事になっていました。それが冒頭に紹介した記事です。

ある答弁が、ここまで大きな流れを巻き起こすことは、私にとっては初めての経験です。まぁ、それだけ地方議会というところは、あまりにも注目されてこなかったといえるかもしれませんね。

記事を見ると、議長のニュアンスが変わっていることに気付きました。「本件は調査中で、調査結果に基づき適切に対応してまいりたい」となっていますね。
先ほどのtogetterの時点と、こりゃまた随分と変わったものだな…と思います。結果として、議長権限で、お手盛りという発言が削除されるのか否か…今後どうなるでしょうか。

国政と異なり、地方議会のことは(特に都心部では)あまりニュースにはなりません。今回はこういうセンセーショナルな展開となったので、多くの方に知れ渡ることになりましたが、本来は、マスコミの方にはもっと地方議会を取材して頂ければなぁ…という思いがあります。
また、皆さん、ぜひお住まいの自治体の地方議会に足を運んでみて下さい。生の質問のやり取りをぜひご覧頂ければと思います。

長くなりましたが、最後に私の思いを書いておきましょう。
私は、清原慶子三鷹市長から、全く想定していない答弁が来て、びっくりしてしまったわけですが、別にこのこと自体を怒る気持ちは実はありません。こういう発言をする方なんだなというので終わりですし、また普段はああいう答弁はほとんどないこともお知らせしておきたいと思います。そのことは、各議員の一般質問の動画を見たら、すぐにわかることです。

政治の世界では、何かあるたびに、得点を稼いだとか、相手をやり込めたとか、そんな感じになりがちですが、私はそういうのは苦手なんですよね。良い議論をしたいんですよ。ただそれだけです。今回の件で、市長をやり込めたとかそういう気持ちは、はっきり申し上げてないですね。無理もありません。そもそも残り時間が少なかったですから。

勝ち負けということではないのです。先ほども書いたように、お手盛りではないという答弁がくるであろうことを想定して、管理職手当のこと等を述べておしまいにするつもりでしたから。その意味で、今回の質問が良いやり取りとは言えなかったという意味では、実は敗者は私かもしれません。

しかし、勝者だの敗者だの、そういうのではなく、どうやったら人件費を削減できるんだろうか?という大きな議論を、ぜひもう一度市長と議論をしてみたいですね。議会とは議論をする場であり、そしてその議論の内実を市政に反映させることこそが、私達議員の最大の責務なのですから。三鷹市議会における議論は、全て三鷹市民の為なんですよね。ここがポイントだろうなぁ…と思うんです。

今回の一連の流れを通じて、私は、議会とは何か?議員の責務とは何か?を今一度再確認するいいきっかけになったと思います。そして、自分の質問の動画を見ながら、「あぁ、俺はまだまだだなぁ…」と実感したんですよ。質問の仕方が変だったかなぁ?とか、不器用だったかなぁ?とか、そりゃもういろいろと思うところはあります。

でもね、思ったんです。まだまだだなぁ…と率直に思った自分の感覚を大事にしたいな…と。質問の場というのは実に奥が深いですね。

随分と長くなりました。ここまでお読みくださったことに感謝します。