日経のランキングは信用できるか?市長定例記者会見配布資料を巡る攻防 | 半田伸明のブログ

日経のランキングは信用できるか?市長定例記者会見配布資料を巡る攻防

皆さんは、新聞の地方版を目にすることが多いかと思います。たまに、自治体首長の記者会見の様子が記事になっていることがありますよね。

首長の記者会見は、新聞紙上でないと情報が入らないのでしょうか?
そんなことはありません。佐賀市の事例を紹介しましょう。佐賀市の市長の部屋のページの中には、記者会見というページがあります。

さらに、直近のを見てみましょう。
平成23年11月定例市議会の議案について(市長記者会見)

記者会見の様子を録画放送で見ることができますね。記者会見の際の配布資料もPDFできちんとアップされていますね。

市民の知る権利にきちんと応える素晴らしい姿勢だと評価できます。そもそも、こういう情報は市民のものであるわけで、記者会見に参加した記者固有のものではないですよね。記者会見配布資料がきちんとホームページ上にアップされているのは、当たり前のことだと言えましょう。

なぜなら、記者会見で知り得た情報全てを、記者さんが新聞記事にするわけではないからです。

自治体の首長がどれだけ情報公開に積極的か?このメルクマールは、記者会見内容をきちんと公表しているかどうかで考えるべきではないでしょうか。情報公開請求されるまで公開しないというスタイルならば、積極的とは言えないでしょう。逆に、佐賀市のようにきっちりと配布資料も「能動的に」公開しているならば、積極的であると言えるでしょう。

市民の知る権利を実効あらしめることは、市民参加の前提条件です。いくら表面的に、市民参加だの協働だの言っても、実態が伴わないと話になりません。こういう参加の側面は、何かと表面的なニュースだけが先走ってしまい、実態はニュースとかなり異なるということがあるのです。

誰もがメディアという言葉があるようですが、役所自身がメディアになるという発想もあり得ることであり、これからは、請求されて公開する情報公開の概念から、能動的に自身が発信基地局となる、いわば「情報開放」の時代に変化していくと考えます。

このように考えると、日経のランキングで経営革新度No.1と大々的に宣伝された三鷹市は、さぞかし情報開放もすごいだろうと思うかもしれませんが、実態は全く異なります。以下は、記者会見配布資料について、まとめてみます。

昨年9月議会の出来事です。8/29に行われた9月議会前の市長記者会見の際に配られた配付資料を、議会事務局を通じて資料請求をしたことがありました。請求日が9/5、その後4日たった9/9に手元に資料が来ました。記者会見から10日以上もたって資料を目にしたことになります。

先ほどの述べた情報開放の発想からだと、そもそも記者会見配布資料はホームページにUPされていて当然であり、3ヶ月後の12月議会の一般質問で、この点を取り上げて質問しました。

市側は、「記者会見資料は、わざわざ市にお運びいただいた記者の方々のプライオリテイーを優先して考えて~事後においてもホームページでの公開は行わない。」残念ながら、市民の知る権利より記者のプライオリティが優先のようです。この時点で、三鷹市が情報開放に消極的な姿勢であることがよくわかります。

次の7、8ページをご覧下さい。これは9月議会前の市長記者会見の配布資料ですが、該当ページには補正予算の保育園の部分が詳細に載っています。8/29時点で、記者さんはこの情報を知っていて、議員には当該資料はありません。記者が新聞記事にしなければ、保育園の補正予算について、その時点で市民の皆さんも知らないわけです。

9/7に議案上程だったのですが、補正予算のうち保育園に関する部分は、次の通りです。
「~1点目は、私立保育園整備事業費4,375万円です。これは、待機児解消に向け、民間事業者による認可保育園の開設を支援するもので、井の頭一丁目に定員60人規模の、また、下連雀一丁目に定員69人規模の保育園整備を予定しています。なお、事業実施に当たっては、国の安心こども基金を財源とした東京都の補助金などを活用いたします。2点目は、大沢台保育園改修事業費670万8,000円です。これは、同保育園の定員を拡充し、保育年齢を5歳児まで引き上げることとし、平成24年4月からの運用開始に向けて施設改修を行うものです。」

いかがでしょうか?記者会見配布資料とは雲泥の差があることが、如実にわかると思います。

さらに、それから数日経った9/13に総務委員会が開かれ、補正予算審議となるわけですが、この時点になって、審査参考資料として出てきた資料がこちらです。4、5ページをご覧下さい。

もうお気づきですね。やっと、記者会見配布資料レベルの資料が出てきたというわけです。つまり、8/29時点で記者が知り得た情報を、議員は9/13になって初めて知ることができたことになるのです。半月も経ってからでないと、新聞記者に渡った情報を知ることができない市議会議員とは一体なんなのでしょうか?この現象からも、三鷹市行政が三鷹市議会にどう扱っているのか?如実にわかります。

さらに、重要なことがあります。議案上程があったあと、議会運営委員会が開かれます。この場で、各議案につき、本会議場ですぐに即決とするか、それとも一度委員会でみっちりと審査してから本会議場で採決するかを決めます。議案審査の分かれ目ですね。

この補正予算は総務委員会付託となったのでまだ良かったのですが、もし委員会付託とならずに即決という扱いになったら、どういうことが考えられるでしょうか?

記者が知り得た情報すら、議員は知ることがなく、つまり客観的には審議不十分といわれても仕方が無い状況が発生することになってしまうのです。これは大変な問題になってしまうのではないか?…記者が知っていて、議員が知らない情報が存在する可能性がありえる中で採決がなされるというのは、明らかに欠陥といえるのではないでしょうか。議会には議決責任があるのです。

記者会見配付資料と同レベルの資料が、委員会に付託されないと出てこないという現実はやっぱりおかしいのです。本来は議案書を配付する段階でやはり記者会見資料を添付をするなりして、つまり、情報開放を進めて、その後に議案上程の説明にいくべきと考えます。これらの問題点を指摘し、やはり記者会見の配付資料を公開をすべきだろうと指摘しました。

次は副市長答弁でした。「議会の内部での問題も含んでいるんじゃないか~正副議長の申し入れのときとか、誠心誠意資料をもって説明~市側の対応でという問題ではない。」。

正副議長に誠心誠意資料をもって説明とありますが、もしそうならばその資料が出てこないのはおかしいですね。仮にそうだとしても、どの程度の資料なのでしょうか。議案上程の際の理由説明より記者会見資料が詳しいことに対する答えになっていないですね。残念な想いでした。最近、質問に対する答えになっていない答弁が目立つような気がします。議会改革で反論権ブームですが、反論以前に、聞かれたことにつききちんと答えることくらいはして欲しいですね。

半田は納得できず、なおも食い下がりました。たかだか記者会見配布資料じゃないか?なんでそんなに頑なに事前公開を拒むんだろう?…
そこで、12月議会の直前のことを紹介しながら質問を続けました。

12月議会の前、11/22に市長の定例記者会見がありました。翌23日祝日ですので、その翌日の24日に、9月議会と異なり、今度は議会事務局を通さずに情報公開請求をしました。

情報公開請求は市民固有の権利です。私も三鷹市民です。終了した会見の配付資料だから、当然、すぐ出てきて当たり前だろうと思ったが、実は一般質問の日の11/30になっても連絡すらなかったのです。

そこで、会見が済んでいる、コピーをするだけの話だと思うが、なぜこれだけ、長期間、資料が出てくるのが時間かかるのか?につき、再度質問をしてみました。次の答弁は、清原慶子三鷹市長でした。

以下は清原慶子三鷹市長の答弁です。

「9月議会のときには議会事務局を通して資料要請があった。今回は情報公開請求があった。同じ資料なのに、情報公開請求を頂いた~私としては、しっかり考えさせて頂く。」

半田はびっくりしました。市民の権利である情報公開請求をしたら、考えると言い切ったのです。思わず、次のように食い下がりました。「というのは、公開もできない可能性もあるということですか?」

引き続き清原慶子三鷹市長の答弁です。

「検討する。議会事務局に調査係もいる。市議会議員から要請があれば、資料を提供しているつもりだ。なぜあえて情報公開請求を頂いたのか?と思い、私としては、これは検討してしっかりしなければいけないなと思っている。」

大変問題のある答弁だと思いました。何が問題なのか?を以下書きます。詳細は本会議録画中継をご覧ください。

三鷹市情報公開条例5条に、「何人も~市政情報の公開の請求をすることができる。」と規定されています。「何人も」と請求者を特定していないところに特徴があり、議員が情報公開請求したら公表するか否かを検討するというのは、請求主体による差別以外何者でもなく、「何人も」という条文が死文化していることを指すのではないでしょうか。

また、同条例は、第6条において、「公開請求があったときは、速やかに(相当の理由がある場合にあっては、当該請求があった日から起算して15日以内に)当該請求に係る市政情報の公開をするかどうかの決定(以下「公開決定等」という。)をしなければならない。」と規定しています。実際に、情報公開決定され、資料が届いたのは12/2でした。11/24に情報公開請求した物が、12/2に公開というのは、「速やかに」とは到底言えません。また、既に新聞記者に手渡している、つまり情報が一部の方に開示されている事実ことから、「相当の理由がある」と言えないのは明らかです。権力者による恣意性を感じるのは私だけでしょうか?

さらに行政手続法を紹介します。情報の提供につき9条で「行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない。」とあります。
つまり、行政手続法は、行政の恣意を排除するために作られた法律であることは明らかなのです。以上より、三鷹市長が「しっかり考えさせていただきます」とは、市民の知る権利を制限する重大な発言であり、問題であると考えます。

実は、渋谷区では、議員による情報公開請求に対し、渋谷区長が情報を出さなかったことから提訴に至っている事実がありました。
今回渋谷区では改善がなされたようですね。三鷹市は情報が提供されただけ渋谷区よりマシだったのかもしれませんが、それにしても権力者とはこういうものなのか?ということをまざまざと見せつけられたわけです。たかだか記者会見配布資料ですよ?

そんな中、三鷹市は、日経新聞社の調査で第1位の評価を得たと大々的に報じました。市の広報新年号です。
透明度(情報公開や住民への説明責任の観点)もカウントとのことですが…。

ここまでお読みくださった皆さんは、三鷹市の情報公開の実態は、もうお分かりですよね。こういう新聞社のランキング評価がいかに曖昧かがよくわかるでしょう。残念なのは、こういう表面的な事象がどんどん走ってしまうという現象があることです。その結果、三鷹市は何かと良いイメージを持たれがちです。
しかし、実態は今まで書いてきたように、残念な状況です。記者会見配布資料すら情報を開示するのに遅々とした自治体のどこが先進的なんでしょうか?

素通りして行く情報に左右されることなく、どっしりと真実を伝えて行く必要がありますね。この件以降、私は三鷹市に関連する、こういった日経のランキングものは一切信用しないことにしました。

情報というものは、一部の人間だけの所有物ではありません。みんなのものなのです。外交だの軍事だのとなると一定の配慮は必要かもしれませんが、自治体レベルで機密性を帯びる情報なんて、ほとんどないと思います。ましてや、今回のエントリーで問題にした市長定例記者会見配布資料は、「既に」記者に公開されているわけで、機密性は全くありません。

治者と被治者との自同性は民主主義の本質です。自同性というからには、同じ情報を共有することは当たり前のことなのです。記者に出した情報を半月も経ってからでないと市議会に提出されないという状況、また二元代表制の一翼である議会を構成する議員が、市民としての固有の権利である情報公開請求をしても、記者会見配布資料を出すかどうか「しっかりと考えさせて頂く」と言い切る首長のいる三鷹市は、果たして先進的な協働を進めている自治体と本当に言い切れるでしょうか?

これからは、請求されて初めて情報を出すという情報公開の概念から脱却して、同じ情報を共有すべく積極的に市政情報を開放する」いわば、情報開放の時代になっていくでしょう。半田は、情報開放の考え方を推し進めて参ります。