金鳥さんのゴキブリムエンダーのラジオCM『なな子と光三郎』が6週出揃い完結致しました。


コマーシャル出演は経験していても、コマーシャル音楽を担当させて頂いたのは自身初の事でありました。
不慣れな作業から担当者の方にはいくらかご迷惑もおかけしたかもしれません。
ですが、音楽屋としてはキャリアに乏しい僕を推薦して下さった事が間違いであってはならないと思い、精一杯取り組ませて頂いたつもりです。

折しも、この話が浮上した時期に緊急事態宣言が発令されてしまい、共同打ち合わせもリモートで数回。後は担当者の方と電話でやりとりを少々。
結局現在に至るまで、先方さんの誰とも顔を突き合わすことなく仕事が終わったことになります。

これが果たして良いか悪いかの判断は未だ難しい話です。
物作りはまず信頼関係にあり。依頼主の熱を肌で感じて、それを持ち帰り作業に充てたいのが本音でした。
共同作業でぶつかりや食い違いが起こらない事はまず有り得ません。ですからぶつかった時には思いやりが必要となってくるのですが、この時に信頼関係の構築が不十分であるとベストなコミュニケーションが取れないこともあります。
しかし、今後はこう言った仕事の進め方がスタンダードにならないとも限りません。事実この方法が‘安全に仕事を完結させた’という結果を生んだわけですから。



さて、音楽制作の内容についても記しておきましょう。
今回も例に漏れず半田流の‘半アナログ録音’方式で作って行きました。
これも先方さんには迷惑な要素だったかもしれませんが、初めにお断りを入れて了解を頂いておりました。

歌モノ制作と一番の違いは、尺縛り(曲の長さ)があること。秒単位の指定を厳守した上でさらに曲調、使用楽器の選定も指示に従って作って行きます。
サウンドテーマが僕の得意とするジャンルであったことが幸いしましたが、これをオールジャンルで熟すのが通常のCM音楽、劇伴作家であることを考えると改めて敷居の高さを感じる世界です。


なな子と光三郎のイメージは1960年代の若者風で、ならば音楽は‘エレキ歌謡’だ!ということになったそうです。

この解釈に僕は非常に心を打たれました。

昨今に見る歌謡曲をモチーフとした‘再生産歌謡系’の多くは何故か皆、ムード歌謡に行きがちです。ムード歌謡自体を駄目だと言っているのではなく、昭和=‘あの手’の歌謡曲…という安易なロジックを広めるべきでは無いという思いです。
昭和は長く、音楽も年単位で流行りが変わっているところをちゃんと汲み取る工夫した方が、より本人たちも楽しめる筈なのですがね。

そう、今回はエレキ。それも‘国産のエレキサウンド’を再現を依頼されました。
これがベンチャーズの様な…という持ちかけられ方をされていたら、気持ちも盛り上がらなかったかもしれません。
僕はベンチャーズにはそれ程…いや、全くと言っていいほどこだわりがないので笑。

しかしベンチャーズそのものを好まずとも、ベンチャーズが残した功績には恩恵を受けている実感があります。

まずエレキギターメーカー言えば、僕にとってモズライト社のギターがナンバーワンです。自分が最も必要としている音が出せるギター。それがモズライトです。
このギターが生まれた背景にベンチャーズがあることを考えると、やはり感謝の気持ちが生まれます。

そして「エレキ歌謡」や「リズム歌謡」と言われるジャンルの誕生。このゾーンはなかなかディープな世界で、研究し甲斐があり大変に面白いのです!
従来純粋な歌謡歌手であった方々が次々とエレキのリズムに挑戦されたこのジャンルも、ベンチャーズブーム無くしては生まれてこなかった物でしょう。

以上のような点を踏まえると、僕は明らかに『ベンチャーズに影響されて生まれた文化』のフアンなのです。
つまり国産のエレキサウンドの発注はまさにドンピシャ!

挑戦してみたかったけど、ステージがない…というジャンルでした。
それをこのような名誉あるお仕事として作品を生み、残せたことに心より感謝です。🙇‍♂️🙇‍♂️


多少、ケツを叩かれながら作るっていいなあ!


機会があればまた挑戦させて頂きたいものです。

その際は【使用上の注意をよく読んで‘半田’を正しくお使い下さい】笑


〔金鳥ラジオCM・なな子と光三郎〕