突然であるが、ブログ上でもっと趣味的なことに特化したコンテンツを増やしたくなった。

‘短文’を書くことは僕の趣味なので…

テーマに振り幅が効くようにタイトルは『〇〇道』とし講釈を垂れようじゃないか。
今時なら同じ‘垂れる’のであればYouTubeを使えば良さそうなものだが、いつの日も少数派の中に生きて来た自分にはまず此処でやる方が居心地が良い。
気が向いたら動画に繋げるもいいだろう。断言は懸命にあらず。


第一回目は大好きなヘッドホンにしてみることにした。コレクションが散らかっているのでまずは‘贈答品’と言う括りでリストアップして書いてみようと思う。

それでは



『ヘッドホン道 其の一 ~贈答品編~』



1.ゼンハイザー/HD555

『仮面ライダー‘555’』にちなんでプレゼントして頂いた物ではあるが、これが実に秀逸。
オープン型故に用途は完全室内用。それまで我が家で驕り昂ぶっていた同社のHD800の座を結果として奪ってしまった。
HD800の音はある種独特で、他のどのヘッドホンにもスピーカーにもない‘HD800の音’であった。これはこれでなかなかにして芸術的な鳴り方をするので、今まで聴いてきた音源を片っ端からこれで聴き直したくなる魅力に満ちていた。
だが、音源の忠実性という意味ではいささかオーバーに空間を広げる傾向があり、音楽制作には不向きなところが出てきてしまう。要するにHD800基準で音作りをしてしまうと他の機器で再生した時のギャップに悩まされることがあったのだ。
そこでこのHD555だが、こちらは鳴り方に全く癖がない。密閉型に比べると多少低域の膨らみがなくはないが、かえってそれが心地よさを生んでいる。純リスニング機としても‘隠れた名機’と言えよう。CD音源からレコード音源までデジタル、アナログ問わずとにかく嫌な音は一切出さない。それでいてモニター機としても十分対応可能な情報量は再生してくれる。ここ三枚のアルバム制作もこのHD555を基本に音を仕上げていった。価格こそ昨今のヘッドホン市場からすれば安価な部類に入るが、決して‘値段ではないのだ’と実感できる代表的な機種だ。
王座交代の理由のもう一つはその着け心地にもあった。締め付け感皆無で重量も適正、ケーブルは片出しで着脱不可だがしなやかで絡みもない。HD800がヘビー級な上、両出しであることに比べるとこの差は快適である。
プレゼントして下さった方にはこの場を借りて改めてお礼を申し上げたい。

「善い玩具をありがとうございます!」





2.ゼンハイザー/HD414

こちらはかなりの年代物で設計自体は1960年代半ばのものである。自分が所有している個体もおそらく60年代後半の物かと推測する。これも誕生日にプレゼントで頂いた物だ。僕の周りには自分の趣味を理解してくれている人が溢れている。こんな人生を幸運と呼ぶのだろう。
HD414には実は二つ種類が存在する。「オリジナル」と「復刻版」があるのだ。見分け方はいくつかあるが、バンドが灰色の物がオリジナルで黒が復刻版と見分けると良いだろう。また耳当てのスポンジについては発売当時は青や赤のものを主流とし幾つかバリエーションが存在していた。
この二つは音質も大きく違うのでもし購入を考えている方がいれば、目的に合わせて選択するのがいい。復刻版は抵抗値の改善がされており再生機を選ばないのが利点である一方、オリジナルと比べるやはり少々近代的な印象は否めなかった。僕も試しただけで購入には至らず。そこはどうしてもオリジナルの方が良い‘気’がするのだ。
どんな音かを一言で説明するならば、

「何を聴いても古い音」

古い音の概念には個人差があるので参考程度に留めておいてもらいたいが、レンジの狭さがその印象を生んでいるのだろう。
そもそもこのHD414の開発目的は、スタジオミュージシャンがスタジオでモニターするために作られた。なので爆音の中でも聴き取りやすい様に中域中心のチューニングがなされたのだろう(推測)。側圧が妙に強いのも様々のパートの演奏姿勢に対応する為かもしれない。スタジオワーク用を物語る設計がもう一つある。HD414のスピーカーユニットは着脱式で引っ張ればバンドからすり抜ける仕組みになっている。そう、これはスタジオでバタバタ動き回る内に謝ってケーブルを踏んだまま立ち上がったりした時に断線させないための工夫なのだ。(もしドライバーが故障しても交換するだけで修理不要)
以上のことからもこのヘッドホンがあくまで‘道具’であるというゼンハイザーの意図を感じて頂けるであろう。しかし、例え道具であっても最低限の音質を維持する考えは1960年代であっても健在だ。同時期のパッシブ型のヘッドホンでこのレベルの音質に達している物に僕は出会った事がない。バランス出力型がレギュラー出荷スタイルの為、手に入れてもリケーブルせざるを得ないがそれをしてでも現代の音楽シーンでも使ってみたくなる魅力がこのHD414にはある。
オススメはボーカル録り。適度に音が逃げるのでピッチやリップノイズにシビアになり過ぎずに歌えるところが気に入っている。髪型も崩れにくい。
なお大抵がボロボロになってしまっている耳当てスポンジだが、これは復刻版用のゼンハイザーの純正で対応可能。僕は現在、別メーカーの少し小型のスポンジをつけている。


‘ベストセラーには理由がある’





3.ベイヤーダイナミック/DTX 501p

TEAC担当者の方から現在TEAC傘下であるベイヤーダイナミックのアイテムを頂いた。こちらも誕生日プレゼントとして。
しばらく寝かした上で一昨年から使用し、最初は若干の癖が気になったりもしたが、その携帯性の良さと遮音性から持ち出し率ナンバーワンのヘッドホンになった。
専用の収納ケースも付属するが、裸でガンガン使っていても一向に壊れる気配もなく頑張ってくれている。耐久性はヘッドホンの価値を定める重要なポイントだ。
耳たぶを包み込まず、乗せるようにして装着するいわゆるオンイヤーの密閉型で音漏れも極小。価格は安価ゾーンにありながらトータルとしての魅力は高い。
音質だが、密閉型らしく芯があり力強い鳴り方故、近年物のポップスには特に相性が良いように思う。これも痛い音は出さない上、屋外での使用を前提としたチューニングがなされているのか、環境ノイズの中でもしっかりベースを感じる事が出来る。またボーカルが気持ち前に競り立つようなところがあるのも個人的に好みだ。聴く音楽のほとんどがボーカルモノである僕にとってこれはいつも選定基準に置いている。
また数ある折りたたみ式のオンイヤー型ヘッドホンの中で歩行中のズレが一番少なかったのもこのDTX 501pであった。イヤホンにも言えることだが、外出用機器の‘使用感’はとても大切で軽視するとそのアイテムの使用頻度に響く。いくら音質が良かれ、つけ心地が悪ければ自ずとと遠ざけてしまうのがこれまでの経験で見えてきた。

「ズレない」「蒸れない」「壊れない」。

これが持ち出し用ヘッドホンの最重要ファクターだ。





・ゼンハイザー/HD800

HD555の項目で登場したが、こちらも実は贈答品。なんと送り主はTBSと錦野旦さんからだ。
経緯を書いておくと、僕がTBS『東京フレンドパーク』に出演した際に景品としてリクエストさせてもらったのが当時発売間もなかったHD800であった。
錦野旦さんとは同チーム(もうひと方は水木一郎アニキ!)で共闘し最後のダーツルーレットになり錦野旦さんの矢が僕のHD800を貫いた!
錦野さんはご自身の液晶テレビをこの為に逃されてしまった…
気っ風のいい錦野さんはなんのためらいもなくそのヘッドホンを僕に譲って下さった。せめてもの感謝として自宅に届いたHD800で錦野さんの『心に火をつけて』を最初に鳴らせて頂いた。

ではなぜ景品にHD800をリクエストしたかと言うと、早い話が自分で買うには値が張りすぎるがどうしても手に入れたかったからである。
初めてHD800を試聴したときにはたまげた。その日はデノンの5万クラスのヘッドホンを買うと決意して店を訪れたのだが、レジに行く途中に試聴機に目が止まりほんの興味本位で試してみた結果…
その音を聞いた直後、僕は手に持っていたデノンの商品カードを棚に戻していた。方針変更である。デノンに不足を感じていた訳ではないが、単純に次元の違う音がHD800から出ていたのだ。
普通ヘッドホンの良し悪しはあくまで二次元内(この場合はLRを指すが)でどれだけ豊かな帯域を出し切るかのはずが、このヘッドホンには二次元を超えた別の‘空間’が加わっていた。ある種の錯覚とも言おうか出力先は二箇所にも関わらず前方から、特にこめかみの先あたりからの音を感じる感覚はまさに異次元のものであった。しかし先にも書いたが、これは音の‘正確性’という観点から見ると少し色付けがあると言えよう。故にエンタメ性があるのだが。

ステレオが予算的、環境的に組めないのならば選択肢としてHD800はひとつの‘希望’となるはずだ。ただしその場合、ヘッドホンアンプとの併用をお勧めする。
現在は更なる上位機種が発売されている為、片落ち価格で購入可能。






このように何故か自分が腹を決めて購入したヘッドホンより、頂き物の方が活躍するジンクスがある我が『ヘッドホン道』。



どこにあるか知れぬ需要のコラムだが、ストックには困らないので各ジャンルぽつりぽつりと書いて行こうと思う。






半田より。