第17話 巧、復活

前話『人間の心』に続き演出に就いて頂いた田村直己監督についても書いておかなくてはなりません。田村監督ははっきり言ってライダークルーの中では異色の存在でした。
田崎監督、長石監督、石田監督はライダーや特撮ドラマにおいてはベテランであり平成ライダー立ち上げスタッフでもありましたが、田村監督は当時テレビ朝日でトレンディドラマの演出を主に担当されていました。その関係からか少しばかり'ノリ'が違う。誤解を恐れず表現するとするならば、いわゆる'業界'ぽいノリで笑
撮影前の段取りでカット割りを決めて行く作業の時には指パッチンで指示を出し、俳優とのコミニュケーションもいい意味で軽い感じにこなされます。
この'田村ノリ'に少々難航をしめしていたのはアクションスタッフだったと記憶しております。仮面ライダーの撮影はドラマブロックとアクションブロックで演出家が分かれています。アクションブロックでは宮崎剛アクション監督がカット割りを作り撮り進めて行くため、通常その時はドラマブロックを担当する監督はアクション監督にお任せをするのですが、ライダー大好き田村監督はアクションブロックでもテンションが上がってしまっていたようで笑。少々のディスカッションが行われていたようです。
でも巧の復活回とあり「絶対カッコよく撮るから、任してねー!」と言って下さいました。
その成果があの名シーンを生むことになるのです。



さて、本編の話。

冒頭、巧はベッドインしています。撮影で布団に入るシーンは危険なんです…激務の最中に布団など用意されてしまった時の身体の反応は想像に難しくはないでしょう。本番は大丈夫なのですがセッティング中に意識が遠のいて行くのです笑
現場でどうにもならない睡魔に襲われた時、僕はひとっ走りしてくるようにしています。心拍数を上げて、筋肉を使うと一時的に眠気は飛びますので。眠気覚ましのタブレットは通常の使用法では僕には効きませんでしたねぇ。5分でいいから一瞬しっかり寝れたりすると覚醒できるので'仮眠のチケット'が欲しいですわ。




相変わらずだんまりを決め込む巧に真理はまたびっくりするような言葉をかけてきます。


「その程度の仲だったの?!私たち」


からの


「マジでおしまいかもしれないね、私たち」




……。




ん~、なんつうかなぁ
色々決断早いよ。

まず仲の深さに関しては一方的に押し付けるものでもないし、真理の今までの接し方を見るにそちらこそ'その程度'と思われるような感じでしたで笑

そして、おしまい決めるのも早い。
たくちゃんと言う人間をもっとよく見てあげて~涙


草加さんの「ファイズとしてはおしまいだ」は、的を射った発言ですね。戦えない者は戦士ではないという見解でしょう。


しかしみんなあまのじゃくですよ、巧も真理も。本心をわざと伝わらないような振る舞いに変えて労いの言葉とするきらいがありますからね。人はそれぞれと云うことでしょうか。




細かいところを見ていきましょう。
森下さんが聞き込みに来たアパートの住人の部屋で流れていたワイドショーらしき番組。あれは「鈴村監督のファッションチェーーック!」ですね笑
ああいった細かいVTR作成はいつ撮っていたのか僕らも知りません。鈴村レポーターの活躍は第1話の冷汁屋のテレビでも観ることが出来ます。色メガネキャラはなんとなく'ソレ'っぽいですね笑。

僕も先日35歳(撮影当時18歳)になりましたが、2003年も今やひと昔前なんだなと思える風景がありました。森下さんが高架の下でなにやら悶々とするシーンですが、上を行くのは東海道線の115系電車です。オレンジと緑の国鉄型車両が東京~熱海間の運用を終了するのが2006年3月でしたから、この時はまだ普通に走っていたのですよ!
すでに置き換え車両のE231系も混ざっての運行形態だった中、たまたまであるにせよフィルムに収められたのが115系だったことは鉄道ファンである私にとっては幸運な記録です。ファイズ時代にはまだ昭和の名残があったのです。




シリーズでこの後定番化するバッティングセンターでのロケもこの第17話が初登場でした。
泉くんは野球部だったこともありバッティングは流石に安定してましたね!僕はと言うと野球はルールすら怪しいくらいで…バットの握りから腰の入れ方など終始木場勇治にコーチングを受けていました笑
この回ではありませんが、僕の下手さに見兼ねた石田監督が、手元の吹き替えを泉くんがするように言い出したことがあり…爆
服を交換して打ってもらいました(*゚▽゚*)

役者失格だなあ~汗

泉くんありがとう。



そんな巧(半田か)ではありますが、終盤カッコいいです!

廃化した亡骸を見つけ遂に吹っ切れます。

そして、あの台詞




「俺はもう迷わない…迷ってるうちに人が死ぬなら。
戦うことが罪なら、俺が背負ってやる!」




くぅ~~!!いいですねぇーいいですねぇー(*´Д`*)
現実じゃなかなか言えない言葉です。しかし言わなきゃいけなくなるシチュエーションには遭遇したくないものです。


この様な、普通に生活していては言う機会もないであろう台詞を自分のものとして残せる事はヒーロー物の特権ですね!

井上先生の言葉は本当に素敵です。



巧の復活劇なだけにアクションも派手にやらかします。
車を踏みつけ、最後には一台丸まま爆破!
あれ、CGじゃありませんからね。

今なき東映撮影所内の駐車場で行われたナパームを使った爆破シーン。近隣は住宅密集地の為、撮影にあたりあらかじめ爆破時刻を場外に向けて案内放送をします。

「◯◯時、東映撮影所内オープン駐車場にて爆破撮影を行います。大変大きな音がしますがご了承下さいませ」的な。

これは近隣のご理解を得る目的ともに、事故や事件と勘違いされないようにするためだそうです。
かつてあったんでしょうね、通報されたことが笑



昨今のCG技術は本当に素晴らしく美しいものですが、生で撮る技法の失敗は許されない緊張感や成功した時の達成感はやみつきになる魅力があります。どちらが良い悪いではなく、使い分けをすることでこれからの映画がより豊かなものに変わって行くことを役者として望みます。




次回は恵子ちゃんの回。個人的好きな回なので書くのが一層楽しみになりそうです。






東映チャンネル
↓↓↓
https://www.toeich.jp/program/1TT000003235/201907






半田より。