第5話 3人と3人・前編
今回のレビューは巧のバイト先であった喫茶店で書きました。優しいマスターのいた'あの'お店。
東京は神保町にある「ラドリオ」がそこです。上京して間もない僕でしたが、実は中学生の頃から純喫茶マニアであったため東京旅行(もう芸能に入る夢を持っていたので、来るべき上京の下見のためにと、両親に夏の旅行は必ず東京にするよう頼んでおりました)の際には必ず神保町界隈を一人で訪れていました。ですのでロケ地としてここが使われた時にも「あ〜、以前から来てるよ、この辺りは。ハッハッハ」と得意げに撮影をしたことを覚えています。
思えばこの頃から巧の'自己犠牲'癖が垣間見れるシーンです。店の金を盗んだ罪を何故あなたが被る必要がある?!と思っていたのですが、この先描かれていくことになる巧像と照らし合わせていくと納得がいく行動パターンです。
ロケ地と言えばこの第5話は非常に半田ニズムが強い回でありました。神保町もそうですが、後半の変身シーンは新宿の西口中央公園です。この日もロケ地に着くなりテンションは最高潮!何故なら僕は新宿中央公園でドラマの撮影をすることを夢見ていたからです。
そのわけは「太陽にほえろ!」マニアでもある僕からすれば毎回のように撮影で使われていた、新宿のビル街や中央公園はまさに'聖地'。こんなにも早い目標達成に心踊らずにはいられませんでした。その煽りを食らったのが溝呂木さん笑。着くなり事細かに解説(1968年の開園当時から残っている柵やコンクリート、石垣の説明や改修ポイントなど)をする僕に白目を向きながら付き合って下さいました。
そんな溝呂木さん演じる啓太郎ですが、このシーンでは非常にレアな台詞が使われています。巧にベルトを渡す時の呼び方に今一度注目してみて下さい。「たっくん!」ではなく「巧!」と呼んでいるではありませんか!小さなことですが、後にも先にも啓太郎が巧を呼び捨てにしたのはこの時だけと記憶しております。
この5、6話を撮って下さった石田秀範監督についても書いておきましょう。スラッとした体型に絶対に外さぬサングラス、口調も端的かつ強目な言葉使い…少々取っつきにくい雰囲気を'わざと'醸し出されるているかのようなスタンス。芳賀さんと「ちょっと個性強いな…やりにくいかもしれん…」などと話したことを思い出します。しかし始まってみれば決して乱暴な所などは無く、むしろ極めてジェントル!なにより僕の名前もしっかり覚えて頂いている!(長石監督はしばらく最後まで怪しかった笑)
時折見せる不敵な笑みと、大胆な演出方法は演じ手の僕らも楽しませて頂きました。この回ではありませんが一度初めての'長回し'を経験させて頂いたのも石田監督の回でした。本編撮影期間中は常に緊張感を伴う振る舞いをされておりましたが、一年が経ち全て撮影を終えた後に話した石田監督はまるで別人のように柔和な表情をして下さいました。その後ご結婚もされて更にマイルド石田に変身した、という噂話も伺っております笑。


巧の台詞。
「人に裏切られるのが怖いんじゃない。俺が人を裏切るのが怖いんだ…」


巧くんよ、あんたが人を裏切る可能性があるとすれば、それは…
命を粗末にしがちなところだ。

自己犠牲が必ずしも人を幸せにするわけじゃないよ。あんたの命が大切だって人も此処にいるんだぜ。


半田より。






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つづく。