第三話 おれの名前・前編

仮面ライダーシリーズはどの年の作品も複数の監督によってローテーションが組まれ、各二話持ちで撮影を進めていきます。一、二話の田崎監督にかわり三、四話は大ベテラン監督である長石多可男さんでした。現場に現れた監督の出で立ちは少々気難しそうにも見え、まだ駆け出しだった僕には幾分の緊張感が走ったことを思い出します。しかし、始まってみればなんのその!話し方や演出方法は実に柔和で優しいのです。しかし…名前をなかなか覚えてくれない笑。何度か「須賀くん(前作、仮面ライダー龍騎の主演)」と呼ばれる内に「あ、須賀くん=半田を呼んでいるんだな?」と理解するようになりました。
三話と言えばここからレギュラーメンバーに加わることになる菊池啓太郎こと溝呂木賢さんと、長田結花こと我謝レイラニさん(当時は加藤美佳名義)の登場です。溝呂木さんとの初顔合わせは九州から東京へ戻る船内での事だったと記憶しております。あ!違う!銀座東映本社で行われた本作のオーディションの時に隣にいたのが溝呂木さんでした!その件があったため船内でご紹介されたときお互いに「あ、あの時の?笑」となったのでした。船内では二人部屋で同室だったためいくつかの会話をしました。以下のような。

半田「自分、ボブサップが好きっす!でもホントはホースト派っす!格闘家観ますか?」 

溝呂木「…格闘技は…バスケは好きですよ」

半田「バスケ!NBAにもガタイいい選手はたくさんいますからね!自分はNBAならシャキール・オニールが好きっす!理由は背が高いから!アハハ♪ 一年間宜しくっす!」

溝呂木「……。」

てな感じで最初から相性もバッチリでスタートした'チーム菊池クリーニング'なのでありました♪
長田役の加藤さんとは制作発表会見以来しばらく現場では合わない日々が続きました。加藤さんとのエピソードはまた後述致します。

三話になると巧も若干ではありますが、ファイズギアを使いこなし始めます。取説を密かに呼んでいたのか?デジカメパンチや銃モードでオルフェノクに応戦。座りながら銃で攻撃とは今から思うと実に巧らしい戦い方をこの時期から実践しています。
実はこの三、四話はロケ地が混在しています。九州設定ですが撮影は東京というシーンが多く含まれており、その中でもコインランドリーのシーンは撮影所から歩いて行ける距離で撮られたもの。あの下りは個人的に好きなお芝居でした。巧の「こそ泥か?!」って言う台詞が良いんですよね〜。久しぶりに聞きました。こそ泥笑。あれだけヒーローの下着が露わになる作品も稀なものかと。
台詞と言えばもう一つ印象的だったものが、真理とラーメン屋に入った時に巧が「自分のこと人に話すのあまり好きじゃないんだ」と告げるシーン。この辺りがその後のストーリーの伏線となっていたんですね。当時は演じている本人ですら、そこを読み取れず単に巧のそういった性格が現れているだけの台詞として処理していました。ちなみに半田自身の性格は巧と真逆で、自分の話が大半な人ですね笑。

一、二話がオルフェノク側の苦悩をメインに描いていたものに対し、三話ではチーム菊池クリーニングのパーソナルが描かれました。初期の啓太郎は色々ヤバイ人でしたね笑。真理は一見まともに見えますが親父さんがどうやら普通じゃない。巧はというともう既に独自の美学や言い回しなどその後の'巧像'に遜色のない姿が完成されています。

振り返ると発見があるものですね。



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つづく。






半田より。