幼稚園のころのクリスマスは、近所の和菓子屋さんが作ったクリスマスケーキと、鳥の骨付きもも肉の焼いたのにリボンを結んだものが食卓に並ぶ。これが毎年のお決まりでした。
カステラの生地を丸く焼いたものにアンズジャムを塗って重ね。それをバタークリームでコーティングして、サンタとトナカイのアイシング、ウェハースのログハウス、砂糖でかためたチェリー、ヒイラギとベルの飾りが乗っけてある・・・これが和菓子屋さんのクリスマスケーキです。
カステラがパサついていたり、バタークリームが固くなっていたり、サンタさんやトナカイが欠けていたり、チェリーの砂糖がガリガリだったり、ウエハースのログハウスがへしゃげていたりと、いろんなことがありましたが、毎年のクリスマスを祝うのにかかせない1品でした。
クリスマスの他にも、家族みんなの誕生日ごとに和菓子屋さんのバースデーケーキが並ぶ。
それが当たり前の幸せだったころ、私達はまだケーキ屋さんの存在を知りませんでした。
小学校に入った後で最寄り駅前にケーキ屋さんがあるのを知り、はじめてそこで買ったケーキを食べた時は衝撃でした。
ふわふわの良い香りがするカステラ(スポンジケーキとしらなかった)に、やわらかくてトロッとしたクリーム(生クリームを知らなかった)が塗られいて、イチゴがいくつものっていて、砂糖でかためていないフルーツがケーキに乗っているのが不思議だった。
それ以降、誕生日もクリスマスも、我が家にはケーキ屋さんのケーキがならぶのがお決まりとなった。
和菓子屋さんでは、お饅頭や大福は買ってもらうがケーキは買わなくなり、そのうちお饅頭や大福よりも、シュークリームがお茶うけにでる機会が増え、そんな感じで月日は過ぎ気がついたら和菓子屋さんは閉店していた。
もう二度と食べる事は出来ない、和菓子屋さんのクリスマスケーキを今でも時々思い出す。
一度有名なパティシエのお店に、事情を話して和菓子屋さんのクリスマスケーキを特注できないかと聞いた事がある。
答えは「詳細をお聞きすれば再現は可能でしょうが、それは私のケーキではないので作れない」だった。
それはそうだと納得したので「ではバタークリームを使ったパティシエ渾身のケーキを特注できますか?」と聞き、作ってもらったのだが、もう美味し過ぎて「これがパティシエの作るバタークリームのケーキなんだ」と驚き&感動したことがある。
しかし、これほどのケーキであっても和菓子屋さんのクリスマスケーキを欲する心を埋めることはできず。
その味を求める食欲と、脳内で味を再生するほどの欲求を満たすこともできなかった。
味を比べるなら間違いなく、パティシエのバタークリームケーキのほうが美味しい。
たがパサついたカステラに、固くなったバタークリーム、どこか欠けたサンタやトナカイにへしゃげたウエハースのログハウスと、どれほど恋焦がれても一切美化されることのない、これらの全てを満たすことはパティシエのケーキではできない。
人が真に求めるものがあるとしたら、それ以外で満たされることはなく、そこ以外で輝くこともない。
そんな事を雨の石垣島で思うのでした。
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