ラジオ体操と人間魚雷 | 走って転んで泣いた様な話

走って転んで泣いた様な話

アモーレのない日々の話

こんばんわ。


毎回掃除組の新人ホストです。


てか掃除が本職だった。


新規のお客さん(患者さん)が増えられて。


でも自分は所詮新人なのでほぼヘルプですし、喋り始めると手が止まる悪い癖が。


だってぇ。なんか一所懸命に聞いてないと悪い気がして。


そうすると勝手に手が止まる。


こんなことをしてクレームをもらったばかりなのに何で反省しないんだろね。


でもみんな忙しそうな中で唯一そうでもないかみたいに思える人がいても良かないか。


全然今考えたんだがおでんにタラの白子を入れたら美味しいかなぁ。


挑戦したいが金がないんだ。


おでんに春菊ってダメかなぁ。


お金が無い時ほど浮かんで来るものね。



アンジャッシュのコントになるおじいちゃんがいつも会う時に敬礼をするので何で?って聞いたら軍人だからって言ってて。


どこの軍だったのと聞くと陸。


そうなんだ。


のあとに海って。


どっちやねん。


しばらくよくわからなかった。


会話の中でもつかめなくて。


でもおじいさんの一言で全てを理解した。


人間魚雷。


乗らなくて済んだの?


うん。


あの乗ったら生きては帰れない奴だよね。


空の特攻、海の人間魚雷。いくつだったの?


18。


でも仲間たちは何人も見てきたんだよね。


帰ってこないこともわかっていて。

確か狭かったって聞いたことある。


二人乗りだった


1人もキツいが2人もまたキツいなぁ。



でもそれが命令だから。


よくぞご無事で。


もうそれ以上の言葉が出せなかった。


おじいさんも泣いていた。


ダメだよ、日本の軍人さんは強いんだから泣いちゃいけないんだよ。


私の理由の分からぬ言葉におじいさんもその気になっていた。


鼻をすすりながら部屋の他の床を掃除する。


おじいさんの隣のベッドを掃除してたらラジオ体操の音楽が聞こえてきた。


のぞくとおじいさんが体操をしていて、私も一緒にやった。


あんた、もう行ったんじゃないのか?


ううん、隣のベッドの下を拭いてた。


そうか。


そのおじいさんのベッドがある所はあのワーカーさんから構わないで下さいと言われた患者さんがいた所だ。


これを見られたらまた言われるんだろうか。


でも自分はそんなのいやだ。


廊下の掃除をしている時におじいさんの家族が面会に来ていた。


おじいさんによく似た鼻の高いお孫さんもいた。


おじいさんの命があったからあのお孫さんね命がある。


そして逆に残すことが出来なかった命もたくさんある。


つくづく人の命を軽視する愚かな時代で

二度と繰り返すことは許されない歴史だ。