どんなに苦しくても描きつづける、まがった指から生まれた輝く色彩
ルノワールは大変勤勉な画家で、腕を傷めたときでさえ絵を描くのをやめようとしなかった。
ある雨の日、ルノワールは自転車から転倒して右腕を骨折したが、左手で絵を描き続けた。
40日後にギプスが取れ、骨折が完治しているのが確認された。
利き腕を骨折したときに反対の手で絵を描くというのもすごいが、ルノワールのすごさが発揮されるのはこの後だ。
骨折が治ってほっとしたのもつかのま、数週間後、ルノワールは右腕に鋭い痛みが走る。
骨折は治ったのに、右腕がリウマチにかかってしまっていたのだ。
このときから死ぬまで、ルノワールはリウマチと闘いながら絵を描きつづけたのである。
ルノワールのリウマチは、主治医が治療と痛み止めのために処方してくれる。
薬では進行が止まらず、病気はますます悪化していった。
1907年、ルノワールはカーニュに家をもったがこの地の温暖な気候をもってしても、リウマチの進行を止めることはできなかった。
とくに、1919年に死去するまでの最後の10年間、ルノワールは徐々に足も不自由になって歩くこともできなくなり、車いすの生活を送った。
両手とも変形し、指が内側に曲がったままになってしまう。
そんな悲惨な状態になっても、
ルノワールは変形した手に筆をもち絵を描きつづけた。
皮膚が薄くなって、筆をもつだけでただれてしまう。
そのために手にガーゼを巻いて、指の間に絵筆を挟んで描いた。
まさに画家の執念であり、このカーニュ時代は、彼の芸術のもっとも重要な時期とさえいわれている。
リウマチと闘い続けたルノワールは、78歳のとき、肺炎で死去した。
