ジュエリーの様式について。後編です。
後半はジュエリーの動きがより活発になって、独自の文化というものができてきているような、そんなムードを感じます。
エンパイア様式/スティル・アンピール Empire style/style Empire
19世紀初頭から1820年頃。
ナポレオンが権力の座に登って1815年に処刑された少し後までフランスで展開された、
新古典主義の最終局面。
<特徴>
より厳格に古典を踏襲。
古代ローマの栄光を復活させるべく軍事的なモティーフを加える。
<ジュエリーの動き>
ティアラの復活、大型のパリュールの登場、カメオ、インタリオの復活。
ロマン主義/ロマンティズム Romanticism
19世紀初頭に厳格な新古典主義への反動として起こり、1820年代以降隆盛となったムーヴメント。
<特徴>
個人的感情の表出を賞賛。
主観的で想像的、情感を刺激するテーマや表現が主となる。
<ジュエリーの動き>
文字遊び、花言葉の寓意をデザイン化したもの、髪の毛を使ったメモリアル(記念)、モーニング・ジュエリーの登場。
歴史主義/ヒストリズム Historicism
ロマン主義の動きの中で過去への憧れやさお評価の機運が高まり、様々な様式に「ネオ」あるいは「リヴァイヴァル」の名をつけて表現の源泉とする立場。
復古主義(リヴァイヴァリズム)ともいう。
考古学様式/アーケオロジカル・スタイル Archaeological style
19世紀中頃、主にエトルリアの発掘品に触発されたジュエリーの様式。
フルトゥナート・ピオカステラーニ(1793-1865)のジュエリーがその典型。
ロココ・リヴァイバル Rococo revival
1820年代中頃からのロココ様式のリヴァイヴァル。
ゴシック・リヴァイヴァル gothic revival
1830年代から50年代頃のイギリス、フランスで復活された中世の様式。
フランソワ=デジレ・フロマン=ムーリス(1831-95)のジュエリーがその典型。
ルネサンス・リヴァイヴァル Renaissance revival
19世紀高貴のカルロ・ジュリアーノ(1831-95)のジュエリーがその典型。
エジプシャン・リヴァイヴァル Egyptian revival
特にエジプト美術を模倣した1860年代のジュエリーをいう。
エジプト趣味は1800年頃と1920年ころにもリヴァイヴァルしている。
ネオ・グリーク Neo-Greek
19世紀中頃の新古典主義のなかでもギリシャ美術に準拠した一派の様式をいう。
<ジュエリーの動き>
古代ギリシャの装飾モティーフを用いたり、動物のとうぞうを両端に付けたオープン・エンドのバングルが復活。
折衷主義/エクレクティシズム Eclecticism
過去の様々な様式に基づく装飾要素を複数組み合わせてデザインする製作態度をいう。
ジャポニズム Japonisme
1856年パリの版画家ブラックモンが発見した北斎漫画が端緒と言われるが、19世紀後半から1910年代にかけてヨーロッパの美術界に及ぼした日本美術のさまざまな影響を指す。
<ジュエリーの動き>
日本の七宝をそっくり再現したパリのアレクシス・ファリーズ(1811-98)のものがその典型。
アーツ・アンド・クラフツ・リヴァイヴァル Arts and Crafts Revival
イギリスの美術評論家ジョン・ラスキンの弟子を任じるデザイナー、ウィリアム・モリスが1861年頃から提唱した芸術運動。
機械化の量産を否定し、中世のギルドにおける一人の職人による完全な手作業の復活を理想とする。
<ジュエリーの動き>
イギリスのC.R.アシュビー(1863-1942)のものがその典型。
アール・ヌーヴォー様式 Art Noubeau Style
1895年頃から1910年頃までフランスとベルギーを中心に起こった美術様式および運動。
ユーゲントシュティール(ドイツ)、ゼツェッション(オーストリア)、スティーレ・リヴェルティ(イタリア)、モデルニスタ(づペイン)などの名称でヨーロッパ全土に展開。
ジュエリーではルネ・ラリック(1860-1945)のものがその典型。
<特徴>
自然、日本美術を源泉とする。
流れるような曲線と、非対称の構成が特徴。
ガーランド様式 garland Style
アール・ヌーヴォーに組しない主流の宝石店によって20世紀初頭に展開されたジュエリーの様式。
プラチナを導入したカルティエの繊細なジュエリーに対してH.ナーデルホッファーが著書のなかで使用した名称。パリの主要なジュエラーやファベルジェにも共通したスタイルで、基本は花綱飾りを中心とするルイ16世(マリー・アントワネット)リヴァイヴァル様式。
イギリスのエドワード7世(1901-1910)の治世とも重なることから、エドワーディアン・ジュエリーとも呼ばれる。
<特徴>
対称性と繊細な透かし細工、素材はプラチナとダイヤモンド、真珠のオール・ホワイト。
アール・デコ様式 Art Deco Style
1920年代にフランスで主流となり1930年代にかけて展開された美術様式。
1925年のパリ万博に因む名称だが、使われるようになったのは1960年代になってから。
<特徴>
アール・ヌーヴォーの行き過ぎへの反動として、抽象的で幾何学的なフォルム、簡潔な線、対称性に主眼が置かれた。
<ジュエリーの動き>
線と面を中心とした端正なデザインに透明やしろと黒の色彩に加え、東洋の影響によるカラフルな自然モティーフのデザインが平行して存在した。
参考 『ヨーロッパの宝飾芸術』
こうして様式や運動を時代の順に並べてみるとわかることですが、近代~現代の間にはたくさんのリヴァイヴァルが存在しています。
さらには様々な国の文化にも興味が移っているのがよくわかります。
これは、この時代、存在している殆どの様式が「様式」として認知されて集められた、というようなことを意味しているように思います。
これによってあらゆるものが出揃ってしまったあと、これからはどうやって新しいものを創造していけばよいのか、少なからず戸惑いを感じているのが私たちの時代なのではないでしょうか。
後半はジュエリーの動きがより活発になって、独自の文化というものができてきているような、そんなムードを感じます。

19世紀初頭から1820年頃。
ナポレオンが権力の座に登って1815年に処刑された少し後までフランスで展開された、
新古典主義の最終局面。
<特徴>
より厳格に古典を踏襲。
古代ローマの栄光を復活させるべく軍事的なモティーフを加える。
<ジュエリーの動き>
ティアラの復活、大型のパリュールの登場、カメオ、インタリオの復活。

19世紀初頭に厳格な新古典主義への反動として起こり、1820年代以降隆盛となったムーヴメント。
<特徴>
個人的感情の表出を賞賛。
主観的で想像的、情感を刺激するテーマや表現が主となる。
<ジュエリーの動き>
文字遊び、花言葉の寓意をデザイン化したもの、髪の毛を使ったメモリアル(記念)、モーニング・ジュエリーの登場。

ロマン主義の動きの中で過去への憧れやさお評価の機運が高まり、様々な様式に「ネオ」あるいは「リヴァイヴァル」の名をつけて表現の源泉とする立場。
復古主義(リヴァイヴァリズム)ともいう。

19世紀中頃、主にエトルリアの発掘品に触発されたジュエリーの様式。
フルトゥナート・ピオカステラーニ(1793-1865)のジュエリーがその典型。

1820年代中頃からのロココ様式のリヴァイヴァル。

1830年代から50年代頃のイギリス、フランスで復活された中世の様式。
フランソワ=デジレ・フロマン=ムーリス(1831-95)のジュエリーがその典型。

19世紀高貴のカルロ・ジュリアーノ(1831-95)のジュエリーがその典型。

特にエジプト美術を模倣した1860年代のジュエリーをいう。
エジプト趣味は1800年頃と1920年ころにもリヴァイヴァルしている。

19世紀中頃の新古典主義のなかでもギリシャ美術に準拠した一派の様式をいう。
<ジュエリーの動き>
古代ギリシャの装飾モティーフを用いたり、動物のとうぞうを両端に付けたオープン・エンドのバングルが復活。

過去の様々な様式に基づく装飾要素を複数組み合わせてデザインする製作態度をいう。

1856年パリの版画家ブラックモンが発見した北斎漫画が端緒と言われるが、19世紀後半から1910年代にかけてヨーロッパの美術界に及ぼした日本美術のさまざまな影響を指す。
<ジュエリーの動き>
日本の七宝をそっくり再現したパリのアレクシス・ファリーズ(1811-98)のものがその典型。

イギリスの美術評論家ジョン・ラスキンの弟子を任じるデザイナー、ウィリアム・モリスが1861年頃から提唱した芸術運動。
機械化の量産を否定し、中世のギルドにおける一人の職人による完全な手作業の復活を理想とする。
<ジュエリーの動き>
イギリスのC.R.アシュビー(1863-1942)のものがその典型。

1895年頃から1910年頃までフランスとベルギーを中心に起こった美術様式および運動。
ユーゲントシュティール(ドイツ)、ゼツェッション(オーストリア)、スティーレ・リヴェルティ(イタリア)、モデルニスタ(づペイン)などの名称でヨーロッパ全土に展開。
ジュエリーではルネ・ラリック(1860-1945)のものがその典型。
<特徴>
自然、日本美術を源泉とする。
流れるような曲線と、非対称の構成が特徴。

アール・ヌーヴォーに組しない主流の宝石店によって20世紀初頭に展開されたジュエリーの様式。
プラチナを導入したカルティエの繊細なジュエリーに対してH.ナーデルホッファーが著書のなかで使用した名称。パリの主要なジュエラーやファベルジェにも共通したスタイルで、基本は花綱飾りを中心とするルイ16世(マリー・アントワネット)リヴァイヴァル様式。
イギリスのエドワード7世(1901-1910)の治世とも重なることから、エドワーディアン・ジュエリーとも呼ばれる。
<特徴>
対称性と繊細な透かし細工、素材はプラチナとダイヤモンド、真珠のオール・ホワイト。

1920年代にフランスで主流となり1930年代にかけて展開された美術様式。
1925年のパリ万博に因む名称だが、使われるようになったのは1960年代になってから。
<特徴>
アール・ヌーヴォーの行き過ぎへの反動として、抽象的で幾何学的なフォルム、簡潔な線、対称性に主眼が置かれた。
<ジュエリーの動き>
線と面を中心とした端正なデザインに透明やしろと黒の色彩に加え、東洋の影響によるカラフルな自然モティーフのデザインが平行して存在した。
参考 『ヨーロッパの宝飾芸術』
こうして様式や運動を時代の順に並べてみるとわかることですが、近代~現代の間にはたくさんのリヴァイヴァルが存在しています。
さらには様々な国の文化にも興味が移っているのがよくわかります。
これは、この時代、存在している殆どの様式が「様式」として認知されて集められた、というようなことを意味しているように思います。
これによってあらゆるものが出揃ってしまったあと、これからはどうやって新しいものを創造していけばよいのか、少なからず戸惑いを感じているのが私たちの時代なのではないでしょうか。