国王の妻である、王妃の理想像とは何でしょうか。
そう聞いてぱっとイメージするのは、崇高にして美しく、若くて健康である、といったような「女性」としての理想像とほぼ変わらないようなものではないでしょうか。
でも、本物の王妃の理想像とは、「聖母マリアに近い存在であること」だったようです。

5世紀ころから、王妃の肖像画はしばしば聖母マリアのように赤ん坊を抱いたかたちで描かれたり、中世になってからは王妃が結婚した日、戴冠した日、埋葬された日が、聖母マリアにちなんだ教会の祝日として定められるようになります。
けれどこれら王妃のイメージは、時代が進んでいくにつれて、だんだんに人間味を増していくようになります。
例えば処女王エリザベス1世は、聖母マリアのかわりに、聖母マリアを自分に重ねあわせることで、自分自身を賞賛させました。
今までは聖母マリアの肖像画のシンボルであった月、不死鳥、白イタチ、真珠ですが、これらがエリザベス1世の肖像画に使われるようになったことからも、それがよくわかります。
言ってしまえば、エリザベスは処女であることを売りにしたわけですが、これは実際どうだったのかなどは関係のない話で、「処女に近い」という建前が非常に重要だったのです。
実際当時、それを信じていた人はあまりいなかったようで、エリザベス1世の身辺からは彼女が結婚しない理由について、
・独り身でいるのは、一人の男に欲望を限定する必要がないから
・性欲が抑えられないから
・性器に奇形があって性交も妊娠もできないから
などという噂が飛び交っていました。
本当のところ、エリザベス女王が結婚しなかったのは、おそらく実母や継母たちが、父ヘンリー8世から悲劇的な運命を背負わされたということが原因だと言われています。
このような時代を経た後、王妃という像には次第に個性や人間味などが許されるようになっていきます。
けれども、何百年と続いてきた聖母マリアのイメージは、その後も無意識の中に息づいていきました。
では何故、王妃には聖母というイメージが必要だったのでしょうか。
王妃は国王の妻だから、国民の母である、という理由もあると思いますが、もう一つ重要なのは、純潔のイメージです。
国王は公式の寵姫をもったり、公式でない愛妾をもったりしている傍らで、王妃の貞操はこれでもかと監視されていました。
けれどもそれは、女性蔑視のためではありません。
王には自分の地位や財産を受継ぐ正統の後継者が必要だったからで、血液型などで父親が誰かがわからなかった時代は(血液型で父親が鑑定できるようになったのは1920年代後半)、どうしても王妃の純潔のイメージが必要だったのです。
跡継ぎが血筋できまっている世の中であれば、王位継承のためにいちいち戦争が起こったりするのを避けることができるからです。
(ちなみに神話とは、その血統の正当性を証明するために作られたものなのです)
王妃の不貞によって起こる災いはそれだけではありません。
政治的に王妃の一族などが邪魔だった場合、王妃の属する集団と反対の勢力が、王妃を告発することによって、王妃とその一族をもろとも闇に葬ることができました。
そして王妃が産んだ全ての子供たちの血統が疑われることになるのです。
反対勢力にとって、こんなに美味しいことはありませんよね。
このように、王妃の純潔には様々の重大なことがかかっていたのでした。
だから王妃の理想で一番大切なことはただ一つ、純潔なのです。
そう聞いてぱっとイメージするのは、崇高にして美しく、若くて健康である、といったような「女性」としての理想像とほぼ変わらないようなものではないでしょうか。
でも、本物の王妃の理想像とは、「聖母マリアに近い存在であること」だったようです。

5世紀ころから、王妃の肖像画はしばしば聖母マリアのように赤ん坊を抱いたかたちで描かれたり、中世になってからは王妃が結婚した日、戴冠した日、埋葬された日が、聖母マリアにちなんだ教会の祝日として定められるようになります。
けれどこれら王妃のイメージは、時代が進んでいくにつれて、だんだんに人間味を増していくようになります。
例えば処女王エリザベス1世は、聖母マリアのかわりに、聖母マリアを自分に重ねあわせることで、自分自身を賞賛させました。
今までは聖母マリアの肖像画のシンボルであった月、不死鳥、白イタチ、真珠ですが、これらがエリザベス1世の肖像画に使われるようになったことからも、それがよくわかります。
言ってしまえば、エリザベスは処女であることを売りにしたわけですが、これは実際どうだったのかなどは関係のない話で、「処女に近い」という建前が非常に重要だったのです。
実際当時、それを信じていた人はあまりいなかったようで、エリザベス1世の身辺からは彼女が結婚しない理由について、
・独り身でいるのは、一人の男に欲望を限定する必要がないから
・性欲が抑えられないから
・性器に奇形があって性交も妊娠もできないから
などという噂が飛び交っていました。
本当のところ、エリザベス女王が結婚しなかったのは、おそらく実母や継母たちが、父ヘンリー8世から悲劇的な運命を背負わされたということが原因だと言われています。
このような時代を経た後、王妃という像には次第に個性や人間味などが許されるようになっていきます。
けれども、何百年と続いてきた聖母マリアのイメージは、その後も無意識の中に息づいていきました。
では何故、王妃には聖母というイメージが必要だったのでしょうか。
王妃は国王の妻だから、国民の母である、という理由もあると思いますが、もう一つ重要なのは、純潔のイメージです。
国王は公式の寵姫をもったり、公式でない愛妾をもったりしている傍らで、王妃の貞操はこれでもかと監視されていました。
けれどもそれは、女性蔑視のためではありません。
王には自分の地位や財産を受継ぐ正統の後継者が必要だったからで、血液型などで父親が誰かがわからなかった時代は(血液型で父親が鑑定できるようになったのは1920年代後半)、どうしても王妃の純潔のイメージが必要だったのです。
跡継ぎが血筋できまっている世の中であれば、王位継承のためにいちいち戦争が起こったりするのを避けることができるからです。
(ちなみに神話とは、その血統の正当性を証明するために作られたものなのです)
王妃の不貞によって起こる災いはそれだけではありません。
政治的に王妃の一族などが邪魔だった場合、王妃の属する集団と反対の勢力が、王妃を告発することによって、王妃とその一族をもろとも闇に葬ることができました。
そして王妃が産んだ全ての子供たちの血統が疑われることになるのです。
反対勢力にとって、こんなに美味しいことはありませんよね。
このように、王妃の純潔には様々の重大なことがかかっていたのでした。
だから王妃の理想で一番大切なことはただ一つ、純潔なのです。