「パンドラの箱」で有名なパンドラは、その姿を沢山の画家によって描かれてきたけれど、私はこのパンドラがとても好きです。
アルマ・タデマ 「パンドラ」1881
紙 水彩 26×24.3㎝
ちなみにパンドラの箱とは大体こんなお話です。
パンドラの箱の神話
プロメテウスが神々に黙って人間に火を与えてやったことでゼウスが激怒し、それによってゼウスは、恐れ多くも神を侮った人間に対して罰を与えてやろうと決意します。
そこでゼウスは、まず鍛冶屋の神ヘファイストスの手を借りて、絶世の美女を作り出します。
そしてアテネは女を飾る腰紐と王冠を、アポロンは音楽的才能を、季節の女神たちは花飾りを、アフロディーテは嬌態と欲望を、ヘルメスは嘘と恥を知らない心を彼女に植えつけました。
こうして男性が決して抗うことの出来ない魅力を持った創造物を、ゼウスはプロメテウスの弟、エピメテウスに贈りつけます。
そして神々の思惑通りにパンドラの魅力の虜になったエピメテウスは、兄が止めるのもきかずにパンドラを妻にしてしまいます。
なんともまあ回りくどい復讐のようですが(笑)、ここが肝心、エピメテウスの家には何と、人間に害を及ぼすいくつもの災いを閉じ込めておいた箱があったのです。
エピメテウスも少しいやな予感がしたのか、妻に「この箱だけは絶対に手を触れるな」と注意しました。
けれど、欲望とは禁じられれば膨らんでいくもの。
パンドラはついに好奇心を抑えきれなくなって、その箱を開けてしまいます。
ところが、パンドラがその箱を開けた途端、人間を苦しめるありとあらゆる疾病や災いが次から次へと飛び出てきます。
驚いたパンドラは慌てて蓋を閉めましたが、人類を苦痛と破滅に追いやる災いは、ほとんどが箱から出た後でした。
たったひとつ、箱に残っているものがありましたが、それは「希望」。
このため人間は、苦しい現実の中でも勇気を持って生きていくことができるのです。
そしてこのようなパンドラの軽率な行動のために、男たちは一生苦痛や災いの不安の中で生きることになったのですが、パンドラの魅力があまりにも強いために、男たちは喜んでその中に身をおくのでした。
とまあ、こういった妖婦的な「パンドラ」像のために、パンドラの絵は肉感的でセクシーなイメージの強いものが多い気がするのですが、私はこの絵に関しては少し受け取るイメージが違う気がするのです。
何だかこの絵は、パンドラが子供のように無邪気で無心になって壺(パンドラの箱は、壺で描かれることも多い)を覗き込んでいるように見える。
そんな純粋な好奇心がとても可愛らしい。
全くセクシーな要素がないといえばそんなことはないと思うのだけど、そのセクシーさが、海や海の娘といったような形で、暗示的なところにとどまっているのが良い。
肉感的でセクシーなもので抗えなさを表現されてしまうと、どうしたって女性は、男性よりもその絵から受け取れるイメージの強度が劣ってしまうところがあると思うのですが、このパンドラは子供のような可愛らしさを備えていることによって、私のような立場でも簡単に抗えなさを想像できる感じがとても好きなのです。

紙 水彩 26×24.3㎝
ちなみにパンドラの箱とは大体こんなお話です。

プロメテウスが神々に黙って人間に火を与えてやったことでゼウスが激怒し、それによってゼウスは、恐れ多くも神を侮った人間に対して罰を与えてやろうと決意します。
そこでゼウスは、まず鍛冶屋の神ヘファイストスの手を借りて、絶世の美女を作り出します。
そしてアテネは女を飾る腰紐と王冠を、アポロンは音楽的才能を、季節の女神たちは花飾りを、アフロディーテは嬌態と欲望を、ヘルメスは嘘と恥を知らない心を彼女に植えつけました。
こうして男性が決して抗うことの出来ない魅力を持った創造物を、ゼウスはプロメテウスの弟、エピメテウスに贈りつけます。
そして神々の思惑通りにパンドラの魅力の虜になったエピメテウスは、兄が止めるのもきかずにパンドラを妻にしてしまいます。
なんともまあ回りくどい復讐のようですが(笑)、ここが肝心、エピメテウスの家には何と、人間に害を及ぼすいくつもの災いを閉じ込めておいた箱があったのです。
エピメテウスも少しいやな予感がしたのか、妻に「この箱だけは絶対に手を触れるな」と注意しました。
けれど、欲望とは禁じられれば膨らんでいくもの。
パンドラはついに好奇心を抑えきれなくなって、その箱を開けてしまいます。
ところが、パンドラがその箱を開けた途端、人間を苦しめるありとあらゆる疾病や災いが次から次へと飛び出てきます。
驚いたパンドラは慌てて蓋を閉めましたが、人類を苦痛と破滅に追いやる災いは、ほとんどが箱から出た後でした。
たったひとつ、箱に残っているものがありましたが、それは「希望」。
このため人間は、苦しい現実の中でも勇気を持って生きていくことができるのです。
そしてこのようなパンドラの軽率な行動のために、男たちは一生苦痛や災いの不安の中で生きることになったのですが、パンドラの魅力があまりにも強いために、男たちは喜んでその中に身をおくのでした。
とまあ、こういった妖婦的な「パンドラ」像のために、パンドラの絵は肉感的でセクシーなイメージの強いものが多い気がするのですが、私はこの絵に関しては少し受け取るイメージが違う気がするのです。
何だかこの絵は、パンドラが子供のように無邪気で無心になって壺(パンドラの箱は、壺で描かれることも多い)を覗き込んでいるように見える。
そんな純粋な好奇心がとても可愛らしい。
全くセクシーな要素がないといえばそんなことはないと思うのだけど、そのセクシーさが、海や海の娘といったような形で、暗示的なところにとどまっているのが良い。
肉感的でセクシーなもので抗えなさを表現されてしまうと、どうしたって女性は、男性よりもその絵から受け取れるイメージの強度が劣ってしまうところがあると思うのですが、このパンドラは子供のような可愛らしさを備えていることによって、私のような立場でも簡単に抗えなさを想像できる感じがとても好きなのです。