30年ほど前にご縁のあった、伊賀の陶工、七代目 福森雅武さん作の 土鍋です。

まだ結婚も決まってない二十歳頃から(笑)、わたしは焼き物が大好きで 地元の器屋さんや 時には四国から出てお氣に入りの店に足を伸ばして買い揃え
結婚するときは 陶器以外に塗りものの椀、盆、茶托、箸まで特に買い足す必要がなかったほどでした。
30年近く前から 食器棚の大半は変わっていません。
身分相応をモットーのひとつにしているので、特別高価なものはほとんどありません。
給料日後に、少しずつコツコツ集めてきました。
そして何十年たってもずっと変わらず大好きだと思えるものに囲まれて暮らしてこられたことを、常々幸せに思っています。

なかでも、この大きな土鍋は 大切な家族のような存在で
冬は一週間に何度も登場するのはもちろんですが、年中通して 大活躍です。



大きさの比較に、わたしの茶碗を置いてみました。
この膨らんだ蓋が いい仕事をしてくれます。


白洲正子さんの本で憧れていたのですが、まさか地元の店で福森さんの土鍋に出会うとは思っていませんでした。
当時店主も、初めてやっとひとつ来てくれたのです、と手離すことが惜しい様子で話されていましたが
わたしの名前に入っている『穂』が力強くのびのびと描かれたこの出会いに 運命的なものまで感じ、感激にうち震えながら(笑)、大事に抱えて帰った遠い日をよく覚えています。

土楽窯は ほかにゆきひらと 豆皿、レンゲと 土瓶蒸しの器がなぜかひとつ(美しかったので)、何度か通った倉敷で同じ頃迎えて、同じ時を歩いてきました。


週末、BSプレミアムで録画していた 『土楽さんの日々~伊賀陶工に宿る土・食・花~』を拝見して、様々な感慨を持ちました。

この土鍋に出会った後、一度伊賀のお宅を訪ねようとしたことがあります。
30年前でした。
しかしアポイントを取る術もなく、直売所のようなものがある様子も見られなかったため
遠巻きに お宅を拝んで帰ってきたのでした。

番組では 主が病で入院中の留守宅など、ご家族の絆も強くみてとれ、八代目をつぐ娘さんをはじめ、四姉妹のご長女の初盆には 透明な哀しみが画面から伝わるようでした。

お客様のおもてなし、山を歩き草木、花、炎と会話する陶工の姿。

美しい伊賀の自然に溶け込んで 土と生きる日々

昔遠巻きに憧れたお宅に少しだけお邪魔させていただいたかのような、ぜいたくな番組でした。

30年近く、土鍋も家族の大切な一員です。